西澤 晋 の 映画日記

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2009年 04月 15日

パンチライン(1988) ☆☆☆☆

f0009381_1132873.jpg監督:デヴィッド・セルツァー
脚本:デヴィッド・セルツァー
撮影:レイナルド・ヴィラロボス

出演:トム・ハンクス
    サリー・フィールド

     *     *     *

美しかりし女優シリーズはいきなり終了、レニ-・ブルース繋がりでちょっとこの映画を紹介したくなった。
レニー・ブルースといえば、毒舌系のスタンダップ・コメディアンであるが、この映画の最後のスタンダップコメディのコンテストでトム・ハンクスがレニ-・ブルース的スタンダップコメディを披露する。そのシーンがもう一度みたくなって、ネットでこの映画の中古を注文した。
で、久々にみた『パンチライン』いいわ。思わずうるうる来るシーンもちらほら。いい映画だわ。 とにかく孤独の描き方が上手い。コメディといえば[ギャグのシーン]+[悲しき音楽]。これこそは孤独に関する無敵の演出テクであるのが誰もが知ってるところだと思うがこの映画でも実にいい味をだしてくる。

ドラマの冒頭、怪しき店に大きな眼鏡をした30代後半の女性ライラ(サリー・フィールド)がはいってくる。店にはもう独り男がカウンターに座っている。たどたとしく合い言葉をかわすふたり。「ものは確かなの? みせて?」「‥‥ここまでしか見せられないな」「いいわ、買うわ」って商談成立したらしげ。実はこれ、ショーで使うジョ-クのネタを買っているのである。
しかしそのネタはもうみんなが知っていて、会場に客に先をオチ(パンチライン)を言われてしまい、「あらま、あなにももう知ってたのね」と凹むしかない 。
ライラは、学校のどのクラスにも一人は居ただろう笑いを起こすのが上手いキャラだったようだ。その能力こそが自分を他人とは違ったものにする唯一の存在証明だったのだろう。そうしてステージにたつ彼女だか、毎日の子供の世話や旦那の世話でうんざりしきりでギャグもさえない。会場からもなかなか笑いが取れないでスランプぎみ。
そんなライラが店で一目おくコメディアンが医大ドロップアウトしたスティーブン(トム・ハンクス)、彼は観客のひとりひとりをネタに次から次へと笑いを創造していく。

ある日の午後、ジョークのネタをかったその店でスティーブンとばったり出合うライラ。「コメディアンは遊びじゃない」「才能のある奴には優しくしないんだ」「SEXネタで受けるとおもってるのか?3人の子持ちの主婦ならそれをネタにしろ。そのツボにハマれば5分で客をつかめる」「ほんとの学びたいなら毎晩ステージに立て、パーティ、宴会、余興、なんでもいい」。
夕飯の食事の支度があるにもかかわらず、そんなスティーブのバイトとやらについて行ってしまうライラ。
そこは病院だった。患者相手の慰問お笑いトーク。いつもは塞ぎがちの患者達がスティーブのトークに酔いしれれ。幸せそうに笑っている。実にこのシーンはいい。
こういうのはトム・ハンクスの魅力だなあって思ってしまう。
そんなスティーブを憧れで見るライラ。

そんなライラのヒーローだったスティーブンも、あるとき会場にきている父親をみるけるとぼろぼろのステージにななってしまう。医者になんかなりたくもなかったのにその路線にのせられた自分。父への反感と、応えられない自分のふがいなさ(?)。いろんな自虐ネタも観客からは冷めた目線を受けるだけ。軽蔑した冷たい目線で店を立って行く父。
なんだか悲しくてやり切れないスティーブン 。
夜更けのボーリング場で身の上話しなどしてるライラとスティーブン。
「どうせこんな時間だし、つきあえうよ。笑いの秘訣をおしえよう」と夜に店をくりだすスティーブン。そこはどうやらスティーブンの修行の場のひとつらしい。そのステージに立つライラ。なかなかハマらない彼女にスティーブンが客席から間の手を入れる。それを境にどんどんライラトークが冴えていく。
夜明けまじかのタクシーのなかで、ライラにキスをしてしまうスティーブン。

しばらくこもって出てこないライラ。そんなライラの自宅にも電話をかけて呼び出すスティーブン。
スティーブンにとっても、ライラはなにより相性のいい女性であり、努力する自分を認めてくれるもっとも安らぐ場所なのだ。しかしライラは彼女の家族に所属していて、どんなにスティーブンのことを認めていて、相性もいいとわかっていても彼を選ぶことはない。スティーブンにとって自分が選ばれないことは在り得ないことだが、それが在ってしまう現実。雨のなかで『雨に歌えば』するしかない。泣ける…。

優勝者にはテレビ出演が約束されたコンペティションで競い合う事になるそんな二人。
ライラの家庭ネタのトークはみんなに愛される。そんな彼女のパフォーマンスに対してレニースタイルで挑むスティーブン。
実際サリー・フィールドのトークのほうが面 白くみえる。字幕でみるわれわれにとっては、トム・ハンクスのトークはそれほど面白くないのだが、でも何かは感じさせる。これ、英語が判って、向こうの生活環境が判ったらきっとツボをヒットしたトークなんだろうなあって思う。のちのち英字字幕でチェックしないといかんね。でも、それでチェックしても判るとは限らないけど。

仲むつまじく会場をはなれていくサリー・フィールドと旦那を観ていると、フレームに描かれていないトム・ハンクスが果 てしなく、残酷なまでに孤独に思えてくる。
ちなみに、トム・ハンクスはこの映画でLA批評家賞男優賞を獲得している。正しい選択だ!

ストーリーの始めの頃は、どうしようもなさげなライラとその旦那の関係だが、最後はハッピーになっていく。旦那もどんどんいい人として描かれて行く。旦那の言葉にこんな言葉がある。

「おまえのジョークがつまらなくても、この家の者は誰もお前を愛している」

‥‥これがまかり通るなら、努力する人は永遠に勝てない。 ‥‥どうもそういうものらしい。

by ssm2438 | 2009-04-15 11:30


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