西澤 晋 の 映画日記

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2011年 04月 30日

殺しのベストセラー(1987) ☆☆☆☆

f0009381_0132987.jpg監督:ジョン・フリン
脚本:ラリー・コーエン
撮影:フレッド・マーフィ
音楽:ジェイ・ファーガソン

出演:ジェームズ・ウッズ
    ブライアン・デネヒー

     *     *     *

日本未公開の映画なのですが、おまけにタイトルもダサいし(こんなタイトルだと絶対誰もみないと思う)、しかしこの映画、けっこう私のツボだったのです。こういうのはいいですね。誰もが好きになる映画じゃなくて、自分だから好きになれる映画ってのは。
で、この映画の注目のポイントは3つ。

1、脚本が異能ライターのラリー・コーエンである。
2、ジェームス・ウッズの愛すべき狂演。
3、バイオレンスアクションの巨匠、ジョン・フリンの復活。

ラリー・コーエンといえば、知る人ぞ知る『悪魔の赤ちゃん』‥‥70年代に流行ったモンスターパニックものもラリー・コーエンにかかれば愛すべき赤ちゃんがモンスターになってしまう。いかにB級お下劣モンスター映画作り手でも、出来れば生まれ立ての新生児を殺りくをくり返すモンスターとは描きたくないはず。でもラリー・コーエンは“これだけは避けたいなあ”って思う心情のところをあえて行ってしまう。そんな殺りく赤ちゃんモンスターでも両親を求める刹那さを描いてしまうラリー・コーエン。
こいつの描くペーソス、刹那さは、なんかいいんだ。そのペーソスはラリー・コーエンのB級スピリットにあってもとってもいい味付けをしてくれてる。


ブライアン・デネヒー演じるデニス・ミッチャムは警官でありながら、その体験談をいかして小説をかいている。そんなデニスにクリーブ(ジェームス・ウッズ)と名乗る殺し屋から依頼がある「おれのことを書いてくれ」 。
クリープは地元の有力者/暗黒街の大ボスに雇われていたのだが、今では仲たがいしらしく、「自分のことを書くことで彼を破滅させることができる」という。半信半疑のデニスだがクリ-ブに彼が殺した人たちの殺人現場を案内される。自分の殺人の記録をしゃあしゃあと警官であるデニスに説明していくクリ-ブ、どんなに説明されてもそれで殺人があったとは立証できないと反ばくするデニス。実に奇妙な会話である。そうこうしてると、大ボスからの使いのものが二人を殺そうとする。こと細かく説明を受けている間にことの『真実』を理解しはじめる。

小説を書くためにはその「殺し屋」を形成するにいたったその人格形成の場所、家族をみたいと言う。 しぶしぶクリ-ブは彼の家族にあわせる。なんの変哲もない家族がそこにあった。帰りの飛行機の中、クリ-ブはデニスに共同手筆の記念としてクリ-ブからデニスへと刻印された高級腕時計をわたそうとする。断るデニス。「殺し屋からは受け取れないとうのか? オレには人間らしいことをする権利はないというのか?」というクリーブだが、無視するデニス。ここが切なくていいんだ。スーパー凄腕の殺し屋なんだけど、人並みに愛されたいと思っている。それを望んでいる。まるであの悪魔の赤ちゃんの新生児のモンスターみたいに‥‥。どっか劣等感があって、認められないことに寂しさを覚えて、でも求めてしまう。リスペクトされたいと思ってしまう。とっても愛されたいんだよね。

やがてロスにもどったデニスは彼女の愛人(妻は何年か前に癌でなくしてそのごは娘と二人暮し、ときどきこの女のところにきてるらしい)に原稿を読ませて感想をもとめたりしてる。「これで◯◯(ボスの名前)も終わりね」といったあと、「クリーブのこと、好きなのね」とぼそり。答えないデニス。

自分がその小説のなかでど のように書かれているのか知りたくて仕方がないクリ-ブはその夜彼女の部屋にしのびこむ。とそこには別の男を送りだすその女の姿。親友が裏切られてるように無性に腹立たしくなるクリ-ブ。「自分はどように書かれている? コピーはないのか?」その女を恐怖させるクリ-ブ。
立場上なれ合いの許されないはずの二人が、言葉に出来ない友情を抱いてるのがまた切ない。

やがて大ボスはデニスの子供を人質に取り、小説を出版させない工作をする。
人質にされた彼女の運命はいかに‥‥?
そこに乗り込むクリーブの運命やいかに‥‥??


こんなに愛すべき非道な、劣等感のある、ヒステリックな、普通 の人の、冷酷な殺し屋はいないよ。
めちゃめちゃ切ない。刹那さランキングは<ごんぎつね級>といってもいい。

ストーリー自体がかなりナンセンスなとっかかりなんで、タイトルもダサイ。どうなんだろう??って疑問に思うんだけど、見てみると一見あり得無さそうなストーリーが実にまともに仕上がっている。これはひとえにジョン・フリンの力によるところがおおきいと思う。バイオレンス描写 もクールで素敵。
いままでいろんな殺し屋と呼ばれたキャラクターが数々の映画に登場してきたけど、このクリーブ以上のキャラクターはいないね。私のなかではベスト中のベスト殺し屋、お気に入り殺し屋ランキング1位 はぶっちぎりで『殺しのベストセラー』クリーブですよ。これやっぱりジェームス・ウッズでしかなし得なかったキャラだと思う。
いいわ。。

by ssm2438 | 2011-04-30 23:02


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