2009年 04月 22日
監督:エイドリアン・ライン 脚本:トーマス・ヘドリー・Jr ジョー・エスターハス 撮影:ドン・ピーターマン 音楽:ジョルジオ・モロダー 主題歌:アイリーン・キャラ 出演:ジェニファー・ビールス マイケル・ヌーリー * * * エイドリアン・ラインのフィルム作りはとってもセンセイショナル。とにかくビジュアルがすばらしい。画面で☆ふたつおまけ。・・しかしその画面がオシャレすぎてストーリーを喰ってしまうのである。 近年の『ロリータ』『運命の女』などは、ストーリーあっての話にもかかわらず、画面がオシャレすぎてなんだか場違いな組み合わせにも見えてしまう。彼の映像にはいれ込んだストーリーは余に合わないのだ。決してドラマが撮れないというわけではない。『ロリータ』にしても以前のキューブリックのそれよりは遥かに悔しさがしみ込んで来た。『運命の女』もストーリーは描かれていることはとっても良かった。ただ、映像が余にお洒落過ぎるのだ。 あの映画はもっと下手にとらないと臨場感がわいてこない。『ジェイコブス・ラダー』なんて映像がお洒落すぎて、ここは怖がっていいのかどうなのか悩んでしまう。これがばっちい色大好きのタク・フジモト(『羊たちの沈黙』『シックスth・センス』)だったらどれだけ無気味な映画になってたことだろう。 映画というのはそこで上映されてるフィルムが 架空のものと判っていても、それを「現実にあるもの」として認識する約束事から成り立つのだが、エイドリアン・ラインの画面 はオシャレすぎてCMフィルム的と脳みそが解釈してしまい、ドラマを「現実にあるもの」として人々の脳みそが理解しなのである。 そんなエイドリアン・ラインの力量 が発揮されるのはストーリーが重くない話、ノリで見られる話。この『フラッシュダンス』のようなスタイルの映画こそがエイドリアン・ラインには一番向いているような気がする。そしてこのあと発表された『ナインハ-フ』。これもエイドリアン・ラインの映像美映画としては最高に良かった。 エイドリアン・ラインの画面といえば、露出の調整によるシルエットの映像といっていいだろう。光源を奥に置き、空間にスモークをたき、光線をビジュアル的に認識させつつ、カメラが逆光で被写体を撮る。光源を用いなくとも、奥に明るい空間を配置しそちらの露出をあわせることで、手前のキャラをシルエットに落としてしまう。はじける水には光が滲む。水とかガラスとか、こういったものは透明感を感じさせ、画面 をオシャレにクールに洗練された画面へと変ぼうさせるのだ。そしてそれをオシャレに望遠できりとる。 この光と影&水と透明小道具が画面 を圧倒的にオシャレに見せてしまう。 『フラッシュダンス』ではそういったオシャレな画面 に、ノリのいい音楽が加わりひたすらかっこいいミュージックBGVのようにもみえる。これこそがエイドリアン・ラインの魅力なのだと思う。 彼の作品にこむずかしいストーリーは不要なのだ。 というわけで、映画的/ストーリー的に深みがなかろうとも『フラッシュダンス』と『ナインハ-フ』はエイドリアン・ラインの最高傑作だといっていい。今もてはやされたCGでの姑息なテクではなく、そこにあるものをカメラで撮る、画面 の切り撮り方、露出の合わせ方、光の滲ませ方、ライティングの設定、レンズの選択、その撮り方が上手いだけでこれだけオシャレな画面 が出来るのだという見本なのだ。カメラをやっている方ならその意味が判ると思うのだが、彼の映像はアナログ写 真的映像美映画の金字塔として語り継ぐに値する。
by ssm2438
| 2009-04-22 03:09
| エイドリアン・ライン(1941)
|
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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