西澤 晋 の 映画日記

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2008年 12月 01日

007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999) ☆☆☆

f0009381_9562323.jpg監督:マイケル・アプテッド
脚本:ニール・パーヴィス
    ロバート・ウェイド
    ブルース・フィアスティン
撮影:エイドリアン・ビドル
音楽:デヴィッド・アーノルド

出演:ピアース・ブロスナン
    ソフィー・マルソー
    ロバート・カーライル
    デニース・リチャーズ

       *       *       *

どんどんつまんなくなる007シリーズ、ピアース・ブロスナンでも救えない・・と思っていたら久々に見る気にさせるドラマを展開してくれたマイケル・アプテッド。メジャー受けはしないがきちんと人間ドラマをかける人という印象『歌えロレッタのために』とか『愛は霧のかなたに』『訴訟』など、きちんとしてるという印象。
今回の映画では、人間の愛憎がきちんと描けていた。おかげで見ていてたのしかった。

ドラマというのは画面が派手なら面白いか・・といえばそうではない。派手にこしたことはないのだが、たいせつなのは見ている人にどれだけ感情移入をおこさせるか・・が作る側の大事なポイントなのだ。

  ドラマの面白さ X 感情移入度=みている人が感じる面白さ 

だといっていい。なのでどんなに派手なアクションをみせても、感情移入度がゼロなら、見ている側の感じ方は、なんだかにぎやかだったけど、明日には忘れそう・・というもの。10年たっても心に映画にはなりえない。
ピアース・ブルスナンにかわってからというもの、見ているときはにぎやかで一応はらはらしてるけど、見終わった跡になにものこらない映画になっていた。もちろんそれを007シリーズに求めるべきかといわれるとそうでもないかもしれないが、作り手としてはそのような映画づくりは賛成できない。やはり、作るからには10年か20年たっても「あの映画はおもしろかったね~」って言ってもらえるような映画にしたいと思うものだ。

それまでのティモシー・ダルトンに代わってやっとまともなボンドが登場したと思ったピアース・ブロスナン。『テロリストゲーム』を見たときは、この人は絶対ボンド役に最適だ!!と思っていたのだが、実際選ばれるとしってとてもうれしかった。・・しかし、彼が出演した作品はというと、人間性の表現にとぼしい弾丸の着弾がうるさいだけの映画という印象。
相手のボンドガールにも恵まれずどうなることかとおもってたら、今回はソフィー・マルソー。素晴らしい。圧倒的な大人の色気、そのゴージャスさ、エレガントさ、素晴らしいです。適役なのでボンドガールのくくりにいれていいかどうかはちょっと難しいが、とにかく総てがすてきだった。

f0009381_1054357.jpg<あらすじ>
中近東、ヨーロッパとまたがる巨大石油パイプラインの計画に取り組む石油王キングが暗殺される。父の仕事は娘のエレクトラ(ソフィー・マルソー)がひきつぐことになったが、彼女の身を案じてM(ジュディ・リンチ)はボンドを護衛につける。
犯人として浮かび上がったのは、数年前エレクトラを誘拐し身代金を要求した犯人のレナード。その時キングはMI6に救出を求めるがMは身代金の支払いを拒否、しかしエレクトラは見張りの男に体を与えて自力で脱出、レナードの作戦は失敗した経緯があった。
そのレナードはカザフスタンの核ミサイル解体現場から核弾頭を盗み出す。
事件が進行していくなか、エレクトラを疑い始めるボンド。エレクトラこそがレナードと結託して彼女の父を殺した犯人だったのだ。もともと彼があつかっていた油田はエレクトラの母の家系のものが発見したものでありそれを盗んだのが父だった。そして誘拐されても身代金を払わなかった父、彼女にとっては許せない男だったのだ。
エレクトラとレナードは、さらにボスポラス海峡を核汚染することで、石油のパイプラインを自分の会社の独占状態にしようとたくらんでいた。


この物語はそれぞれのキャラクターの精神的な立ち居地の把握が実に複雑で、だからこそみていて面白い。ストックホルムシンドロームと呼ばれる言葉。誘拐されたものが誘拐犯に神聖かしていく現象。エレクトラそのパターにはまっている。純粋無垢だった少女がレナードに誘拐され、犯され、現実を知っていくなかで、彼をリスペクトしていくようになっている。
この物語ではどちらが首謀者なのかわからない。父から油田を取り戻したいエレクトラがかつての誘拐犯だったレナードの力を借りてそれを実行し、その代わりにレナードの野望もかなえてやるろうというスタンスになったのだろう。この二人はこの作戦においてはたぶんどちらがボスでどちらが支配されているという関係ではないようだ。それがこの物語の複雑な精神関係になっている。

そんなレナードも外交的に華やかな立場のエレクトラに多少劣等感をもっているように見えるが、彼女の最初の男になり、彼女のリスペクトを勝ち取っているのは自分だということが、彼の男としてのプライドをささえているようにみえる。
異性同士が信頼し続けるというのはきわめて難しいことだ。二人の関係においてはじめのうちはそれがたやすいが時間がたつとだんだんと薄れてくる。それでも二人が関係を保ち続ける仕組みをもっている。それがセックスというものだろう。レナードにとってエレクトラが自分とセックスをしてくれるというのは、彼の自尊心を保つためには不可欠な要素だったし、エレクトラもそれをどんなにボンドとねたからといって代わるものではない。しかしレナードにとってエレクトラがボンドと寝る事はかなりの嫉妬心をおぼえることなのだろう。いや、嫉妬心というよりも恐怖かもしれない。いつかエレクトラの自分へのリスペクトが消えるかもしれないという・・。

他のボンド映画におけるセックスは場つなぎとかサービスという意味合いが強いが、この映画においてはきわめて重要な役割をしていたような気がする。
ボンド映画のなかではまれにみる傑作だった。

by ssm2438 | 2008-12-01 08:10


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