西澤 晋 の 映画日記

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2009年 05月 03日

卒業(1967) ☆☆☆☆

f0009381_7132659.jpg監督:マイク・ニコルズ
脚本:バック・ヘンリー
    カルダー・ウィリンガム
撮影:ロバート・サーティース
音楽:ポール・サイモン
    デイヴ・グルーシン

出演:ダスティン・ホフマン
    キャサリン・ロス
    アン・バンクロフト

         *        *        *

サイモン&ガーファンクルの唄う「サウンド・オブ・サイレンス」「ミセス・ロビンソン」のメロディに陶酔。すばらしい音楽だ。我々だけなのだろうか、このサウンドとか、『小さな恋のメロディ』のメロディフェアを聞くとノスタルジックな細胞がむくむく目をさましてくる。今の世代の人かこういう音楽をきくとどうなんだろう・・。

この映画、当時はまだ子供で荻昌弘さんの月曜ロードショーでみたような気がする(さすがに遠い昔の記憶なのでもしかしたら水野晴郎さんの水曜ロードショーだったかもしれない)、が当時は音楽だけは良かったのだがお話がそれほど面白いとは思わなかった。まあ、中学生くらいだったのでほとんどきちんと認識することはできなかったのだろう。当時の感覚は、“卒業したらすぐ就職しないといかんだろう・・、こいつ、なんであそんでんだ???”・・だった(苦笑)。そんな『卒業』、ちょっと前にケーブルでやってて、ついつい最後まで見てしまった。40を過ぎてみるとさすがに映画鑑賞力がついてることが判った。いやあ、この映画けっこうすごいかもしれない。

ストーリーの構成として<主人公の大目的が設定されると、そこから一番とおそうなところからスタートする>という法則がある。この物語の主人公ベンジャミン(ダスティン・ホフマン)は最後エレーヌ(キャサリン・ロス)とひっつくのだが、この物語はなんと、エレーヌの母親=ミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)とエッチをする関係になり、それがエレーヌにばれてしまうというドツボ状態から這い上がることになる。これだけでもすごい! なかなかここから這い上がれそうにないけど、この物語は這い上がるし、だいたい彼女と母親とエッチをする展開なんて普通考えつかんだろう。

さらにすごいのが主人公の精神状態。この物語の主人公の精神状態はかなりお子様なのだ。もちろん大学を卒業するのだからそれそうとの大人なのだけど、親に逆らったことがないとか、自分で考えて行動したことがない・・というようないわゆる甘ったれ、精神的にかなり子供なのだ。そうはいっても普通に礼儀正しいし、反社会的な人間ではない。ただ自我というものをきちんと開放したことがない男。それにもとづいて行動すること自体に自信がない、怖い、そういう人間なのだ。
もしかしたら精神年齢12~13歳くらいかもしれない。はっきりいってみていていらいらする。生理的にもまったく好感のもてない主人公。その主人公がいままで親の言いなりになって自分の心をみつめることもなかったし、それすらもあったかどうかもわからない、そんな彼が自我を爆発させ、最後は今まさに結婚しようしている花嫁名を呼び、結婚式に乱入、花嫁を奪い去ってしまうという大顰蹙の暴挙にでてしまう。エレーヌの父親ロビンソンにも顔をあわせられんだろうし、なんせ妻と浮気してたのだから、それに人様の妻を寝取りそ知らぬ顔でその娘を奪っていくという息子をもった親にも顔はもう合わせられないだろう。まさに自分以外は全部<反自分>。
・・・それでもその暴挙が出来るのはイレーヌという女性への憧れ。
好きな女をもとめた自分と彼女以外は全部アンチテーゼ。ここにも『エヴァンゲリオン』と同じ構図があったりする。結局哲学やってるとみなさんあるていど同じところにおちつくものだけど・・。
このタイトルの「卒業」というのはまさに与えられて育った子供時代=嫌われないことが一番大事だった時代からの卒業なのだ。

彼の行動は確かにあまあまだろう。
正直な話、このラストシーンのあとに続くドラマをかんがえてみるとかなり悲惨になりそうだ。そのまま花嫁を連れて逃げたとしても、その生活があと何ヶ月つづくかどうか・・・? それでも自分の心がもとめる方向性をまず考える。それが出来たのはこの主人公にとってすばらしい第一歩なのだろう。
あとは、心のままの方向性をいかに社会と調和をたもちながら実行していくか・・ということ。
人が大人になるというのは、理性を大事にしたり、お金儲けを効率よくやることではなく、いかに自分のエゴを開放していくか。・・その開放する手段としては、自分のエゴを社会のもとめる方向性と同じ方向に向け、社会との軋轢をスムーズにしつつエゴの開放手段を確立していくことが大切になるのだろう。

by ssm2438 | 2009-05-03 07:33 | マイク・ニコルズ(1931)


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