西澤 晋 の 映画日記

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2009年 10月 01日

無伴奏「シャコンヌ」(1994) ☆☆☆

無伴奏「シャコンヌ」(1994) ☆☆☆_f0009381_6164051.jpg監督:シャルリー・ヴァン・ダム
脚本:シャルリー・ヴァン・ダム
    ジャン=フランソワ・ゴイエ
撮影:ウォルター・ヴァン・デン・エンデ
音楽:ギドン・クレーメル

出演:リシャール・ベリ
    イネス・デ・メディロス
    フランソワ・ベルレアン

        *        *        *

『オーケストラの少女』の感動再び!と思い、当時劇場に足を運んだ映画。『オーケストラの少女』では階段のオーケストラでしたか、この『無伴奏「シャコンヌ」』ではメトロの地下道での演奏するとか。当時、スクリーンでそんな記事をいつけてなんか来るかも来るかもって思い、みた映画。やっぱり真剣の音楽家を映像化されるとなんだかんだと感動させられてしまうのは・・・なぜでしょう。バイオリンをやる方は是非。

<ありえないところにそれを出現させる>というのはドラマ作りのひとつの技なのだけど、これはメトロの地下道にバイオリン弾きを登場させました。

第一線で活躍してきたバイオリニストのアルマン(リシャール・ベリ)は、芸術家としての自分に疑問を感じ、親友バイオリニストが自殺したことをきっかけに舞台から退いた。彼はメトロの地下道を次なるコンサートホールに選び、自分の欲求のまま演奏し続ける。彼の脳裏に去来するオペラ歌手だった昔の恋人との思い出。

たとえ昔有名なバイオリニストだったとしてもメトロの地下道、人々は音楽をきく情緒であるはずがない。みんなそれぞれの仕事をもっているのだから彼がどんなにバイオリンを弾いても誰も振り向きもしない。しかし、一人の人が彼のバイオリンに耳を傾けると、また一人、また一人と立ち止まって聞いていく人が増えていく。
おおおお、なかなかいい感じ、いい感じっておもってしまう。
そのうち、音楽好きのメトロ職員ダロー(ジョン・ドブラニン)との出会い、アルマンの昔の姿を知る音楽家シャルル(フランソワ・ベルレアン)との再会、そして心を閉ざしがちだった切符売りのリディア(イネス・ディ・メディロス)も、アルマンの奏でる音色によって癒されていく。

ある日、メトロで停電が起きる。動揺する通行人の間に彼のバイオリンが鳴り響く。そしてささくれ立った通行人の心にやすらぎをあたえていく。おもわず『SOSタイタニック』(1958)を思い出してしまった。

沈むタイタニック号の甲板は人にうめつくされていて、誰もが救命ボートに乗りこみたいと押し合いへし合いのなか、音楽隊のひとたちがひたすら演奏をかなでている。
「こんな状況じゃ、誰もきいとりゃあせん」とそのなかの一人が演奏をやめてしまうが、
「だから弾くんだよ」って別の一人が言う。ああ、そうだって楽団が一人一人が自分たちの存在意義を再認識した瞬間。そしてまた弾き始める。あのシーンは映画史上にのこる名シーンだね。キャメロンの『タイタニック』だとあの一番美味しいシーンがかなりないがしろにされていたのが腹が立つ。私にとって『タイタニック』っていったらあの楽団のシーンなのに。。。

無伴奏「シャコンヌ」(1994) ☆☆☆_f0009381_62583.jpg翌日アルマンは初めてチェロ奏者と共演、周囲の人々も演奏に参加し音楽の饗宴となる。もっとも華やいだ時間だっただろう。しかしメトロで工事が始まるとアルマンは立ち退きを要求され、警官にバイオリンを壊されてしまう。リディアも仕事を辞め彼のもとから去ったいく。絶望するアルマン。シャルルは、彼に自分のバイオリンを差し出す。彼はメトロに生きるすべての人々のためバッハの『シャコンヌ』を奏でる。そしてバイオリンを弾きながら船にのって地下水どうをすすんでいくのであった。

by ssm2438 | 2009-10-01 06:28


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