西澤 晋 の 映画日記

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2009年 05月 23日

マニフェスト(1988) ☆☆☆

f0009381_2342410.jpg監督:ドゥシャン・マカヴェイエフ
原案:エミール・ゾラ
脚本:ドゥシャン・マカヴェイエフ
撮影:トミスラフ・ピンター
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ

出演:カミーラ・ショーベリ
    アルフレッド・モリナ
    サイモン・キャロウ
    エリック・ストルツ
    リンゼイ・ダンカン
    クリス・ヘイウッド
    ガブリエル・アンウォー

        *        *        *

ドゥシャン・マカヴェイエフの映画は、ブラックユーモアの映画なんだけど、絵作りはほんとにレベルが高い。先の『モンテネグロ』はいまいちだったけど、この『マニフェスト』の画面は素晴らしいの一言。映画ファンならいちどはマカヴェイエフの作品はみておいてほしいものだ。
ストーリーはさほど重要ではなく、そのシーンそのシーンをいろどる辛らつさがこの映画のもっとも刺激的な部分だろう。

1920年代の中央ヨーロッパの某国。スヴェトラーナ(カミーラ・ショーベリ)は、故郷ヴァルトハイムの新しい支配者となった王を倒すため舞い戻る。そこをお忍びで訪れる皇帝の暗殺を密かに画策しているのだ。しかし彼女の恋人であり同志でもある教師ルデイは既に逮捕され、人体実験/人格改造/拷問をするサナトリウム送りとなり、ロムブロソフ博士の苛酷な実験を受けていた。拘束具につつまれた彼はネズミかごの回転車を模した“永久回転台”によって洗脳されてしまっているのだ。
そこでスヴェトラーナは母親の家に戻るが、幼い頃彼女を辱めた使用人頭エミールに再びいかがわしい関係をもとめられ、馬小屋で抱かれてしまう。

マカヴェイエフって、女を描かせるととにかくいろっぽい。『コカコーラ・キッド』グレタ・スカッキもすごく色っぽいが、このカミーラ・ショーベリのエッチにたるシーンもじつに色っぽい。この演出法だけでも見る価値はある。

その後いろいろあって、スヴェトラーナはパンに拳銃を隠して、サナトリウムのルディに届けるが、彼はすでに洗脳されており、ひたすらネズミ車の中を回っているだけ。
王が無事なのを知ったスヴェトラーナは、都合よく彼女の家(実は彼女の家は地域の地主なのだ)で行なわれる王の歓迎パーティーで暗殺を決行しようとする。エミールの息子に銃を調達するよう命ずるが、そこに嫉妬に狂ったエミールが登場、暖炉に頭をぶつけて死んでしまった。ああ、マヌケ。そこに彼女を密かに愛する郵便配達人のクリストファーが現われ死体処理を引受けてくれるが、誤って自分まで橋から落ちてしまった。さらにマヌケ。

このへんのマヌケ事情はどうも、あまりストーリー展開上理解しづらい。お話の構成上ほんとに必要だったのか、ただのイベントだったのか、いまいち理解できてない。ただ、人それぞれモチベーションが異なり、それぞれの価値観で動いている人たちが、複雑に絡み合いながら、お話を奇想天外にころがしていき、最後は、ルディとともにサナトリウムに監禁されていたリリーという女が脱走し、独裁者を撃つことになる・・というお話。

話の展開はドウでもいい映画です。そのシーンそのシーンに、ドゥシャン・マカヴェイエフの皮肉めいた、悪意のある「させない展開」(=登場人物がそうしたいのに、マカヴェイエフがそうさせない)がこの映画のみどころだろう。面白い映画だとは思わないが、見せ方の技と絵作りの上手さが魅力的なマカヴェイエフ。
捨てきれない監督さんだ。

by ssm2438 | 2009-05-23 22:22 | D・マカヴェイエフ(1932)


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