2009年 10月 25日
監督:ジョン・G・アヴィルドセン 脚本:シルヴェスター・スタローン 撮影:ジェームズ・クレイブ 編集:スコット・コンラッド、リチャード・ハルシー 音楽:ビル・コンティ 出演:シルヴェスター・スタローン タリア・シャイア バート・ヤング バージェス・メレディス カール・ウェザース * * * 青春時代に見た映画というのは、それが世間でどう評価されようが、その人にとっては実にインパクトのある映画になる。理屈ぬきで名作になるのだ。私がこれをみたのは高校1年生のときで、その時代にこの映画をみられたのはとても幸せなことだったと思う。この映画は、私の中の挑む心に活力を与える永遠の応援歌だ。 一ヶ月前にこの映画を再びみて泣けて泣けて、以前はこんなに泣けなかったと思うが、最後のラウンド戦ってるあたりはもうぼろぼろ泣いていた。『ロッキー』ってこんなに泣ける映画だったっけ・・って再認識した。 それまでうだつの上がらない役が多かったシルヴェスタ・スタローン。自身で脚本を書き、自分が主役でナイトこの脚本は映画化させないと言って勝ち取った主役の座。そして大ブレイク。本人自身の夢と希望に満ち溢れつつ、うだつの上がらない世界でぶすぶすに煮えていた時代の悔しさをシナリオに書き込んだのだろう。そしてそれを一気にドラマのなかで解放していく。多分本人もこれほど大ブレイクするかどうかなんてわかってもいないなかっただろうし、もしわかっていたら多分、このドラマの最後は勝っていたんじゃないだろうか。でも、そこでは勝たせることを選ばなかった。謙虚というか、現実をわきまえていたというか、期待しすぎることへの恐怖だったのか・・、とにかく彼には、そこで勝って世界チャンピオンになるロッキーという姿が見えなかったのだと思う。だからああなったのだ。 この映画はシルヴェスタ・スタローンの本人の想いがとても染み込んでいる映画だ。そこがこの映画の素晴らしいところだと思う。これ以降のシリーズの映画は、メディアの望むものを作った結果で、ほとんど染み込むものは無く、ノリノリ演出をかもし出すパターンが確立されていったに過ぎない。これはこれでとても有意義なものだけど・・・。 そして、このドリームを後押しするビル・コンティの永遠の名曲ロッキーのテーマ。この音楽なしには、このドラマは語れないだろう。この脚本と、この音楽が同じ時間に同じ場所に存在したというミラクルも素晴らしい。 <あらすじ> フィラデルフィアはサウスサイドのスラム。昼間はヤクザな借金取立てや、夜は場末の賞金稼ぎボクサー、そんな生活をしていたロッキー(シルヴェスター・スタローン)。ジムに有望な新人が現れると、ロッカーが足りないので、ロッキーはロッカーまで奪われる。4回戦ボーイのロッキーは、ラフファイトで勝利をおさめるが、「お前のようなガムシャラなファイトぶりではゼニにならん」と、ジムをほうり出されてしまう。そんなロッキーに人生最大のチャンスが訪れた。 ボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチのチャンピオン=アポロ(カール・ウェザース)の対戦相手がケガをしたため、代役として場末のボクサーを指名することになる。アポロは「イタリアの種馬」というネーミングがきにいったとロッキーを氏名する。かつてロッキーを見放したジムの老トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)も、協力させてくれと彼の自宅を訪れる。 相手は世界チャンピオン、なとか自分のもつ経験を少しでもロッキーに伝えたいと思うミッキー。そうすることが彼の残された唯一の存在意義であることがひしひしつたわってくる。もう話すことはないとトイレに入りドアをしめるロッキー。すがりつくようにトレーナーを申し出るが、ロッキーはトイレから出てこない。あきらめてドアを出て行くミッキー。だが、帽子をわすれたことに気付き、取りに戻るとトイレから出てきた、ロッキーと鉢合わせ、顔もみたくないと、またトイレに入るロッキー。露骨な拒否反応をしめされとぼとぼと帰っていくミッキー。ミッキーが部屋から出ると、階段をおりていくミッキーの足跡がきこえる。閉じられたドあにむかって、 「俺がほんとに助けてほしいときにはほったかして、今度は俺が景気が良くなると、その夢に便乗するのか。やってやるさ。一人でやってやる。お前の助けなんかいらない! なんだいまさら」とミッキーが出て行ったドラを殴りつけながら毒っけをぶちまける。 カメラはロングショットで階段をおりてくるミッキーをとらえる。その声はそとにまできこえている。完全に拒絶されてとぼとぼかえっていくミッキーの後姿がとても淋しそう。フレームの右端にミッキーが消えかけてたとき、ロッキーがドアをあけて出てきてミッキーをよびとめる。なにやら話している。ロングなので会話は聞こえてこない。そこに穏やかなピアノの旋律がショートバージョンで流れてくる。泣けるんだ。。。 ロッキーの短期間の猛訓練が始まった。フィラデルフィアの美術館の階段をしんどそうなロッキーだが、みるみる動きがすばやくなり、活力があふれ出してくる。そこにロッキーのテーマが後押しする。片手で腕立て伏せもさくさくできてしまう。トレーニング期間の最後になると、あの階段もすばやく駆け上がり、夜明けのフィラデルフィアに向かって拳をふりあげる。 前の晩、眠れないロッキーは明日の試合会場に行って見る。ゴージャスに飾られて明日のメインイベントをまる会場。垂れ幕に派手な衣装をつけたアポロの絵があり、その反対側に自分の垂れ幕がある。しかし、トランクスの色が違うのだ。「俺のは白の地に赤のストライプだ」と言うが、掃除のおじさんは「ああ、そうかね」と返すだけ。 はたと現実を認識するロッキー。相手はばりばりの世界チャンピオン。自分はぽっとでの四回戦ボーイ。たかが1~2ヶ月もう練習したくらいで勝てるわけがない。自宅に帰りエイドリアンにぼそと告げる。 「明日おれはぼこぼこにされるだろう。勝てるわけがない。でも、もし俺が15ラウンド終わったとき、まだリングに立っていられたら、おれはただのチンピラじゃないってことを証明できる」 ・・・こういうところでもぼろぼろ泣けてくる。 もそして試合当日、賭け率は50対1。ロッキーの善戦、手を焼くアポロ。両者の腫れ上ったまぶたが目をふさいで見えない。「切ってくれ」というロッキー。まぶたを切ると血がぶちゅって飛び散る。かろうじて視界を確保したロッキーはボディーを連打し、アポロの肋骨を折る。最終ラウンドでは、肋骨をかばいながらも、チャンピオンの意地でせめるアポロ。ふらふらで倒れるロッキーにもう「寝ていろ」というセコンド連中。それでも立ち上がるロッキー。 このへんから最後まではもう涙ぼろぼろ。。。 試合終了のゴングが鳴り人々がなだれこでくる。もう世間のことも結果も、カメラもマイクもどうでもいいロッキーはひたすら「エイドリア~ン、エイドリア~~ン」と彼女の叫ぶ。 好きな女の名を公衆の面前で大声で連呼できる機会と自信にめぐまれる男が世界中で何人いるだろうか・・。 リングに駆け寄ろうとするエイドリアンの真っ赤な帽子が、誰かのひじにあたってとれてしまう。ちらとまたこれがいいんだ。きっとあの赤い帽子は、エイドリアンにしてみれば、公衆の場に出る時だけのための、今風に言うなら「勝負帽子」なんだろうね。人にはそんなものがある。晴れ舞台に出る時はあのネクタイじゃなきゃだめだとか、試験に臨むときはこのシャーペンじゃなきゃダメだとか・・、それを失うととたんに自信を失ってしまうようななにかってあるのだけど、それがあの赤い帽子。その帽子がぬげちゃったとき、チラッと気にするけど、それでも拾おうともせず前に進むエイドリアンがまたいい。
by ssm2438
| 2009-10-25 11:10
| S・スタローン(1946)
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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