西澤 晋 の 映画日記

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2009年 11月 26日

欲望(1966) ☆☆☆☆

f0009381_1455317.jpg監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ
    トニーノ・グエッラ
    エドワード・ボンド
撮影:カルロ・ディ・パルマ
音楽:ハービー・ハンコック

出演
デヴィッド・ヘミングス (写真家)
ヴァネッサ・レッドグレーヴ (公園の女)
ジェーン・バーキン (モデル志望のヤンキー娘)

        *        *        *

映画を見る人には、<サッカー観戦型><野球観戦型>とがある。
サッカー観戦型>というのは、流れるゲームのなかでひたすら「どうなるんだ、どうなるんだ」とか「いけいけいけいけ」とか「わうわううわうわ」とか、映画から与えられる情報をひたすら受け入れる受動的見方の人。スピルバーグの『ジョーズ』やコッポラの『ゴッドファーザー』が好きな人はこのタイプだろう。
<野球観戦型>というのは、ゲームの展開にあわせて自分の考えを参加させていくタイプ。「このあとは〇〇だからピッチャーは変えたほうがいいな」・・とか、「まだそのまま引っ張ったほうがいいな」とか「ここは代打だろう」とか、「あのときの自分はこんなんことを考えていた、きっとあのピッチャーもそんな感じなのだろうな」とか・・。見ている映画と同時に見ている自分が存在し、それを観戦しながら、自分で自分なりの考えをまとめていくタイプ。アントニオーニの映画はこちらのタイプでないと楽しめないだろう。

1967年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いたこの作品、これは演出志望の人にとってはマストシーな映画だろう。ミケランジェロ・アントニオーニの演出技の宝庫だといっても過言ではない。

● 期待させておいて裏切る。そして別の形で与える。
● 通常空間に異物を侵入させる。異物を無視する人々/それに対応する人々。
● 動いているものと止まっているもののコントラストをつける。
● アップビートの曲をバックにスローで動かす。
● 空間に段差をつける→演出の下手な人はつねに一平面上でイベントを展開する。
● 手前にドアや何かの格子、枠などを配置し、被写体への意識を絞り込む。
● 透明なものの表現。後ろが透き通って見えるが、その表面には映りこみもある。
● 演出の基本は<答え>を与えるのではなく、<答え>を想像させる。

上手い演出家というのは、演出して内容に演出するものである。この映画も、なにが演出されてるのかもはっきりわからないのだが、ついつい画面を見てしまう。なにかが起こることを期待してみている。それが何かは分らないが、きっとそれが見つかれば「あ、これだ!」って納得できるものを探している感じ。そんな何かを潜在意識の中で刺激しているのだろう。


ちなみにこの映画の原題は「BLOW-UP」=写真を「引き伸ばし」すること。
写真家の主人公が公園で何気ないスナップショットを撮っていると、林の中にはいっていく男女をみかける。興味本位で彼らのシーンをカメラに収めるのだが、それに気付いた女は主人公に駆け寄りフィルムを返してという。拒否する主人公。そうこうしていると相手の男はいなくなっており、女もその場をさる。その走り去る女をまたカメラに収める。
そのフィルムを引き伸ばししてみると、女の不自然な目線が気になる。その方向をの一部をまた引き伸ばしすると、茂みの中にから銃で狙っている別の男の手が映っている。さらに女が走り去る写真の奥のほうに何かが映っている。引き伸ばしてみると、女と一緒にいた男が倒れているらしかった。
後にその夜その場にいってみる主人公は、殺された男を公園のその場所で発見する。
その後の展開は『アイズ・ワイド・シャット』のような感じ。自宅/撮影スタジオに帰ってみると、その引き伸ばした写真はすべて消えうせ、他のフィルムも盗まれていた。公園に行っても死体はない。

しかしこの映画、サスペンス性はまったくどうでもよくって、何かを期待して見る人間性を描くこと、刺激することがメインなのだろう。
たとえば哲学書を読む時でも、そこに書かれていることを読みたいわけではなく、自分の思っているがそこに書かれているのを発見したいから読むのだ。カメラもそう。そこに自然と存在する風景を撮りたいのではなく、自分の中にある何か得体のしれない何かの具現化したものを、それに近いものを捜し求めて、それを見つけたの時にフィルムに定着させたいのだ。

人間の好奇心とは、見えるものを見るものではなく、見たいものを探す。そして、見たいように見るも性格のものなのだ。それを題して『欲望』とつけたのこの邦題はけっこういけてるかもしれない。

余談ではあるが、若き日のジェーン・バーキンがなかなか美しく、彼女の貧乳も素敵だ!

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by ssm2438 | 2009-11-26 15:03 | M・アントニオーニ(1912)


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