2010年 10月 27日
監督:エドワード・ズウィック 脚本:スーザン・シリディ、ビル・ウィットリフ 撮影:ジョン・トール 音楽:ジェームズ・ホーナー 出演 ブラッド・ピット (次男・トリスタン) アンソニー・ホプキンス (父・ウィリアム) エイダン・クイン (長男・アルフレッド) ジュリア・オーモンド (スザンナ) * * * 大河ドラマ嫌いの私でもこれは惚れた。大雄大なモンタナの大自然バックに描かれる怒涛の人間ドラマ。叙情的感動巨編! 魂をゆすぶる映画とこはこのことだと思ってしまう。ブラッド・ピットが馬にのってあらわれるだけで、感動してしまう。監督は『きのうの夜は・・・』、『ラストサムライ』、『ブラッド・ダイヤモンド』のエドワード・ズウィック。大好きな監督さんのひとりです。そのエドワード・ズウィックのなかでもこの『レジェンド・オブ・フォール』が最高だろう。 しかし、この人の演出というのは、全部みせてしまう映画、観客が想像する部分をもたせない映画。一方的に情報提出型のスタイルなので、その部分がともするとつまんなく見えることもある。この映画もそういう撮り方ではあるのだけど、見ているものを飽きさせない怒涛のドラマを象徴的にみせている。 物語はブラッド・ピット扮するトリスタンが、生まれてから死ぬまでを描いた作品なので、全部描くとすると膨大な時間が必要になる。しかし映画の時間は2時間10分。作り手はそのなかにドリスタンのドラマを凝縮しなければいかない。エドワード・ズウィックは、総てのシーンを丁寧にとるのではなく、もっとも象徴的に描けるシーンをとことん印象的に、情緒的に、ドラマチックに撮り上げている。そのようなシーンの選択と、ドラマチックな見せ方がとても素晴らしい。 その画面をフィルムにやきつけたのはジョン・トール。この人のとる大自然はいつも素晴らしい。『シン・レッド・ライン』でみせた戦場の舞台となる自然の美しさ。『ウインズ』で見せたヨットレースの豪快な海の輝き。この人のダイナミックは自然描写は素晴らしい。 この映画は、エドワード・ズウィックのゆるぎない演出と、ブラッド・ピットの魅力と、ジュリア・オーモンド存在と、馬と熊とモンタナの大地が一体化し、そこにジェームス・ホーナーの音楽がかさなり、それをジョン・トールが一本のフィルムにまとめた奇跡のコラボレーション。ひたすら酔える。 <あらすじ> アメリカがインディアンを押しのけてその勢力を拡大していた20世紀初め、その戦いに疑問と後悔をもった騎兵隊大佐のウィリアム・ラドロー(アンソニー・ホプキンス)は脱退、忌まわしい侵略の記憶から逃れるため、モンタナに牧場をひらき、定住して3人の息子たちの成長を見守っていた。中でもインディアン・イズムにもっとも傾倒した次男トリスタン(ブラッド・ピット)に、ことのほか愛情を注いだ。ウィリアムの妻イザベルは、過酷な自然環境に耐えられず彼と別居して街に住んでいた。時は流れ、ハーバード大で学んでいた末っ子サミュエル(ヘンリー・トーマス)が、婚約者スザンナ(ジュリア・オーモンド)を連れて帰郷した。そんなスザンナの美しさには長男のアルフレッド(エイダン・クイン)も、そしてトリスタンも魅了された。 やがて第一次大戦が勃発し、ドイツの侵略に対して祖国イギリスが戦っている状況にあり、長男アルフレッドと末っ子のサミュエルはカナダから義勇兵として出兵するといいだす。国家のためにの名目で国の為に戦いインディアンを殺戮した経験をもつ父はそれには強く反対した。その夜トリスタンは、サミュエルの出征に反対するスザンナに「行くなと言え」と言うが、それも無理なこと、「サミュエルを守って」とトリスタンにすがりつくしかないスザンナ。こうしてトリスタンも「サミュエルをかならず守る」と約束して出征していく。 ヨーロッパ戦線でサミュエルはトリスタンの目の前で敵兵に撃たれ死亡、弟を守りきれなかったトリスタンは、サミュエルの体から心臓を取り出し、足を負傷して帰国を余儀なくされたアルフレッドにその心臓を預け故郷にもちかえらせる。復讐の念にもえるトリスタンは、夜になるとドイツ兵を襲いのどを切り裂き、殺した兵士の数だけ頭の皮を剥い持ち帰る。血みどろの様相に見方の兵士たちも息を呑んだ。 悲しみにくれるスザンナに長男アフルレッドが愛を告白する。しかし、彼女の心の中にはトリスタンがいた。半年が過ぎたある日ふらりと帰ってくる。サミュエルの墓標の前で一人泣いているトリスタンに、スザンナが寄り添ってくる。その夜、2人は結ばれ、同じく彼女を愛していた長男のアルフレッドは家を出て、街で事業に乗り出して成功する。 モンタナの牧場でスザンナと幸せに暮らしていたトリスタンだが、弟を救えなかった罪の意識にくわえ、その弟の婚約者であったスザンナと幸せになることに耐えられなくなり、「永遠に待つわ」というスザンナを残して放浪の旅に出た。数年したある日、旅先から「もう待つな、俺たちの愛は終わった」という手紙をうけてとり絶望するスザンナ。 十年近くが経ち、心を浄化させたトリスタンは馬のひづめの音とともにモンタナに帰ってきた(このシーンだけでも感動してしまう)。父は半身付随になり、スザンナはアルフレッドと結婚していた。今では議員になって豪邸に住んでいるアルフレッド邸をおとずれるとスザンナがいた。 「なんで帰ってくるのよ、帰ってくるんだったら待ってるのに、言ったきりならそれっきり帰ってこないでよ・・・(また愛してしまう)」という押さえ切れない想いが湧き上がるスザンナ。それが2度目の絶望なら3度目の絶望はそのトリスタンが、ネイティヴ・アメリカンとの混血で、使用人の娘であるイザベル(カリーナ・ロンバード)と結婚したという話を聞かされたときだ。スザンナが次にトリスタンに会ったとき、トリスタンは妻であるイザベルとサミュエルと名づけた息子と一緒にいる時だった。自分がほしかった幸せがそこにあった。 その頃、トリスタンは禁酒法に逆らうように酒の販売の商売を行っていたが、ある日、警察の待ち伏せに遇い、威嚇射撃の流れ弾でイザベルが命を落とす。発砲した警察官を怒りのあまり殴り倒してしまい、30日間の禁固刑が科せられるトリスタン。そんなトリスタンの面会におとずれるスザンナ。 「私は夢をみるの。あの子たちの母が私であるような・・・。彼女(イザベル)の死も願ったわ。それだけじゃない、サミュエルの死も・・」 ・・・こんな言葉が書けるなんてすごい。映画史上にのこる名シーンだと思う。 その夜、スザンナは自殺した。トリスタンは、銃を撃った警官とそのボスたちに復讐を遂げた。スザンナの遺体はモンタナに運ばれ、再会したアルフレッドはトリスタンに、「私は神と人間のルールに従ってきた。お前は何事にも従わなかった。しかし皆はお前を愛した」と言う。トリスタンは、兄に子供を預かってくれるよう頼み旅立っていく。 この映画で“自然の化身”としてのトリスタンを演じたブラッド・ピットは、ロバート・レッドフォードの『リバー・ランズ・スルー・イット』でも“自然の化身”を演じているが、この二つのブラッド・ピットは実に素晴らしい。この“自然の権化”を愛してしまう不幸になっていくジュリア・オーモンドが実に不憫でまたいい。実にいい映画だ。
by ssm2438
| 2010-10-27 11:14
| E・ズウィック(1952)
|
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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