2009年 10月 02日
監督:ピーター・ウェーバー 脚本:オリヴィア・ヘトリード 撮影:エドゥアルド・セラ 音楽:アレクサンドル・デプラ 出演 スカーレット・ヨハンソン (グリート) コリン・ファース (ヨハネス・フェルメール) * * * フェルメールの家にとまりこんで奉公をしているグリート(スカーレット・ヨハンソン)が、フェルメールのアトリエの窓を拭こうとして一応その奥様にお伺いをたてるシーンがある。 「窓をお拭きしてもよろしいですか?」 「ええ、いいわよ。どうして・・?(そんなこと尋ねるの?)」 「でも、光が変わります・・」 があああああああああああああああんである。 こんなことまで気を使ってくれる使用人の女の子がいたら抱きしめてしまうよ。この台詞でやられたね。 この映画はフェルメールの『青いターバンの少女』にまつわるエピソードを繊細なドラマとして再現したものだ。撮影監督のエドゥアルド・セラが描き出した映像は当時の色使いそのままというような繊細にして神秘的、素晴らしいの一言に尽きる。人工照明をかなり抑えた撮り方をしたのだろう。息が白い凍えるようなオランダの冬がすばらしい。実際のところ、この映画の原作となった同名小説『真珠の耳飾の少女』はフィクションであるが、この原作をもとにして作られたこの映画はあたかも本当であるかのような緻密なドラマとして仕上がっている。監督のピーター・ウェーバーはこの映画がデビュー作になるらしいが、実に素晴らしい仕事をやってのけた。 しかし、フェルメールといえば窓際光の画家というイメージがあるのだが、この『青いターバンの少女』いは窓が配置されていない。さらによくよく見ると素朴さのなかに青いターバンというインパクトのある色がつかわれており、さらりその少女は真珠の大きな耳飾とつけていて唇が赤い・・なんとも違和感を感じる絵だ。たしかに原作者のトレイシー・シュヴァリエがこの絵にインスピレーションを感じたのもうなづける。しかし、この絵の裏側にこれだけの物語を想像できたというのも素晴らしいことだ。 そしてこの映画がドラマチックになったのは、フェルメールの奥さんの悔しさだろう。彼女のプライドを犠牲したおかげでこの映画出来上がった。一番大切なものの為に2番目を犠牲にするのがドラマ作りの常套手段。しかし、実はその奥さんがそれほどあいされていたのかというとそんなこともなく、たぶん、この絵を描いてしまった以上、グリートを家にはおいておけないだろうな・・ということが最大の犠牲だったと理解するほうが正しいのだろう。 もうひとつ、この絵の裏にはウルトラ・マリンブルーの伝説がある。(以下、ウィキペディアより抜粋) フェルメールの絵に見られる鮮やかな青は、フェルメール・ブルーとも呼ばれる。この青は、天然ウルトラ・マリンブルー」という絵具で、ラピスラズリという非常に貴重な鉱石を原材料としている。ラピスラズリは、17世紀には金よりも貴重であったといわれ、“天空の破片”とも呼ばれた。ラピスラズリを非常に細かく砕き、乳鉢ですりつぶして粉末状にしたものを溶液に溶かし、上澄みを捨てて純化し、それを植物油脂でとくことによってウルトラ・マリンブルーは生成される。ウルトラ・マリンブルーは通常の青い絵具の百倍の値段がついたとされ、通常の画家は聖母マリアのマントなどの限られた部分にしか使わない貴重な絵具であった。しかしフェルメールはこのウルトラマリンブルーをふんだんに使った。彼はなんと、ウルトラ・マリンブルーをドレスの下地に使うという、当時の常識としては考えられない使用法を用いた。フェルメールが亡くなったときに多額の借金があったといわれるが、あるいはこのような高価な画材でさえも躊躇なく使ったそのこだわりが借金の原因の一つだったのかもしれない。 <あらすじ> 1665年、オランダ。少女グリート(スカーレット・ヨハンソン)は、画家のヨハネス・フェルメール (コリン・ファース)の家の住み込みの使用人となる。子だくさんのフェルメール家で、そこのお嬢様の嫌がらせにも耐えながら、朝から晩まで重労働に追われるグリートだが、彼女の映像感覚の鋭さを垣間見たフェルメールは、彼女に絵の具の調合の仕事を任すようになる。主人と使用人としての距離を保ちつつもかの時に特別な何かを感じるようになるフェルメール。しかしフェルメールの妻カタリーナは彼らの関係に嫉妬しはじめる。 フェルメールはグリートをモデルにした絵を描き始めるが、アクセントとしておおきな真珠の耳飾をしてほしいと頼む。その耳飾は妻カタリーナのものだった。拒否するグリート。家計が苦しく婿にはどうしても絵をかいてもらわなければならないフェルメールの義母は、娘の留守中にその真珠の耳飾をグリートに手渡す。フェルメールがグリートの耳にピアスのアナをあける。実に色っぽい。 出来上がったを見タカタリーナは彼女の耳に自分の耳飾があることに嫉妬し「グリートを追い出して」と叫びだす。彼女の悔しさは誰にも理解できるところであり、もはやそれに反対するもはいなかった。 PS:フェルメールの絵は窓際の一点透視の絵であるが、ここにはきちんと<奥行きの圧縮>がなされている。「正しい一点透視はこうなのだ!」というお手本でもある。
by ssm2438
| 2009-10-02 13:10
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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