西澤 晋 の 映画日記

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2008年 11月 07日

天国と地獄(1963) ☆☆☆☆

f0009381_615345.jpg監督:黒澤明
原作:エド・マクベイン、『キングの身代金』
脚本:小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明
撮影:中井朝一、斎藤孝雄
音楽:佐藤勝

出演:
三船敏郎 (権藤金吾)
香川京子 (権藤の妻・伶子)
佐田豊 (運転手・青木)
仲代達矢 (戸倉警部)
石山健二郎 (ボーズン=田口部長刑事)
山崎努 (犯人・竹内)

        *        *        *

黒澤映画のなかではめずらしく面白い。というか物語としては一番面白いのではなかろうか。マクベインの原作の良さがが根底にあるだろうが、それを日本の風土に土着させて一級品のサスペンスに作り上げている。本来サスペンスと言うジャンルはトリックのこねくりだけになってしまうと実につまらない映画になりかねない。アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』のようななってしまうとおもしろくもなんともない。しかしこれが松本清張のドラマみたいに、そこに生きる人間性をうきぼりにしていくドラマの場合は実におもしろい。
この映画で三船敏郎演じる権藤という男は、一見傲慢な人間に見えるが、実は生粋の職人かたぎであり、その努力を積み重ねていった結果が会社上級管理職という地位にあることがだんだんと判って来る。これがバブリーなインターネットのホームページを作る会社とかで、たまたまその需要と重なった時に大もうけして会社をつくったそんな社長さんではないので、彼が作ったその財産というのはやはり価値を認めるに値するものなのだ。それを身代金として持っていかれる。それも犯人は自分の子とまちがえてお抱え運転手の子どもを人質にとり、その子の為に財産を持っていかれるのである。

犯人に渡った後はきっと処分(燃やされるだろう)と予想される革のカバンに、燃えたら赤い煙を出すか科学物質をいれるところがある。「かせ、おれがやる」とばかりに、そのカバンを斬り、薬品をいれ、それを縫い合わせていくのだが、「こんなときに見習い工の腕が役に立つとは思わなかった。まったく、最初から出直しだ」といいつつも、さばさばとその作業をこなしていく権藤がかっこいい! 男たるもの、こうでなくてはいかん!って思ってしまった。

<あらすじ>
某シューズ会社の上級管理職の権藤(三船敏郎)は、その努力と根性で一財産を気付き、丘の上に大邸宅を構えていた。そんな彼の元に「息子を人質に取った、3千万円よこせ、警察に知らせたら息子の命はない」という犯人からのメッセージがとどけられる。しかし、彼の息子は何食わぬ顔で帰宅した。犯人が連れ去ったのはお抱え運転手青木の息子だった。即座に「警察に連絡だ!」といいきる権藤には笑えた。権藤のまえにひれ伏す運転手の青木、苦境に立った権藤は結局金を出すことを決意する・・・。

ここまでは面白い。で、身代金を奪われ、子供が帰ってくる。
しかし、ここまで観るとなんだかもうお話は終わったような気になってしまった。そのあと犯人逮捕までの警察と犯人の間で展開されるサスペンスは、ほんとのただのサスペンスであり、ドラマとしては抜け殻なのでもあまり記憶にない(苦笑)。赤い煙のあとは(白黒だけどそこだけ着色されている)、とっとと犯人がつかまる展開でよかったのに・・。

by ssm2438 | 2008-11-07 06:15 | 黒澤 明(1910)


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