西澤 晋 の 映画日記

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2008年 11月 09日

無常(1970) ☆☆☆☆☆

f0009381_10165238.jpg監督:実相寺昭雄
脚本:石堂淑朗
撮影:稲垣涌三、中堀正夫、大根田和美
編集:柳川義博
音楽:冬木透

出演:
田村亮 (日野正夫)
司美智子 (姉・日野百合)
岡田英次 (彫刻家・森康高)
田中三津子 (森の後妻・森令子)
佐々木功 (森の息子・森康弘)
岡村春彦 (僧侶・荻野)
花ノ本寿 (百合の夫となる岩下)

        *        *        *

実相寺昭雄の最高傑作であろう。主人公が言い放つ実存主義の暴言が現状維持を「良し」とする古き因習を一刀両断にしていく。主人公と僧侶荻野の怒涛の暴言談義は必見。ただ、実存主義の根幹が見えない人にとってはただのアナーキズムの暴言としか見えないかもしれない。また音楽や効果音の使い方も魅力的で、心が振れたシーンでのヴァイオリンの短い旋律や、“H”をしているしーんでの、子供の声やラジオ体操の音声、フォークソング的な挿入歌など、演出的には実にたのしい。

わわれわ1960年前後にうまれた人にとって、実相寺昭雄は神様であった。『ウルトラマン』のシーボーズ、『ウルトラセブン』のメトロン星人、『怪奇大作戦』の「京都買います」、『シルバー仮面』の真っ黒くろすけのチグリス星人やキルギス星人。今の時代、『ヱヴァンゲリヲン・新劇場版』に興じている人たちも、この映画をみたら庵野秀明がこの映画の雰囲気をどれだけ再現したかったか分るだろう。

実相寺昭雄の映画は広角ぎみレンズが多様されている。しかし、この映画くらいまではまだよかった。手元のアップなどを取るときは弱望遠のレンズだし、手まえに大きくなめて奥のものを撮る時も、つかっているレンズは標準~弱望遠であり、手前はぼけている。これだとまだみられるのである。これが翌年とる『曼陀羅』になると露骨に広角を使ってくるのでもう見るに耐えない。
『無常』と『曼陀羅』の画面的な違いは、『無常』は標準~弱望遠で手前をおおきくなめて撮っているが、『曼陀羅』は広角レンズでとっている。このふたつのレンズの違いは、映画を勉強する人なら理解しておきたいポイントだ。

じっさい実相寺昭雄の絵作りは子供だましのパフォーマンスではあるのだが、それでも、このころの画面は面白かった。絵作りも変な見せ方が非常におおいので、ゲリラ的な映画を撮りたい人には格好の参考資料映画になるだろう。しかし、これはあくまで、映像を勉強している大学生の自主映画を作る時の手法であり、コマーシャル映画としてこの手法が見る人に本当に受け入れられるかと言うと・・それは疑問である。これらの手法はドラマを語りたいための映像、意図したものを観客に伝えるための映像ではないのだ。これらは作っている人のパフォーマンスであり、そのことが見ている人に伝わってしまう。
実際長編映画としてこの後も何本かとられるのだが、その後の映画をみていると正直うざい絵作りだったりする。その後もいろいろ撮られたが、どれも楽しめないし、『ウルトラマン・ティガ』で何本か実相寺昭雄が演出しているが、その回ときたらまったく面白くない。
『無常』のように語られる言葉がはまればいいのだけど、翌年公開された『曼陀羅』のようになってしまうと、正直あきあきしてしまう。技術的なものを見る場合は、これと『曼陀羅』の両方をみて、実相寺昭雄の何がよくって、何がダメなのが、十分理解する必要がある。

<あらすじ>
父の期待をよそに仏像に魅了された日野正夫(田村亮)は、姉の百合(司美智子)と関係をもつようになる。しかし、姉が妊娠し、そのことを両親が感づくと、書生の岩下(花ノ本寿)と姉の情事を父親に見せるように誘導、二人の結婚を成立させる。
その後念願かない彫刻家の森に弟子入りすることが出来るが、森の後妻の令子とも関係をもつ。既に性能力をなくしてしまっている森は、その情事をみてエネルギーにかえ阿弥陀像を彫る。正夫もそんな森を理解し、除き見ている森に見やすいように令子の身体をひらいてみせる。そしていつしか、3人で夜を過ごすようになる。そんな正夫と父と義母との関係をしった森の息子康弘(佐々木功)は僧侶・荻野(岡村春彦)に相談する。
やがて10ヶ月がたち、一度実家にもどった正夫は姉・百合と情事をかさね、それを見てしまった岩下は新幹線に飛び込み自殺する。社会の因習をことごとく破壊し、周りの人に苦しみを与え、自分の愛する百合の身体までもむさぼる正夫が許せない荻野は、彼の行為を非難するが、正夫の怒涛の実存主義理論の前に思想崩壊してしまう。
阿弥陀像が完成すると、成し遂げた感のある森は求められなかったはずの令子を身体を何度も何度も求め、果て、そして他界する。阿弥陀像を寺に収める日、その像を一目見るために訪れた正夫に向かって、父のノミをもった康弘が突進する。

by ssm2438 | 2008-11-09 10:05


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