2010年 01月 29日
監督:アンドリュー・ニコル 脚本:アンドリュー・ニコル 撮影:スワヴォミール・イジャック 音楽:マイケル・ナイマン 出演: イーサン・ホーク (ヴィンセント) ジュード・ロウ (ジェローム) ユマ・サーマン (アイリーン) ローレン・ディーン (弟アントン) * * * アンドリュー・ニコルのデビュー作にして最高傑作。今のアンドリュー・ニコルの仕事ぶりをみてると、たぶんこれ以上のものはつくれないだろう。舞台はSFでも、色合いはじつにクラシック。めかめかしいSFモニターやコンピュータがでてくるわけでもない、60年代のSF映画を思わせる作りになっているこの映画だが、SFというのはどうでもいい世界観で、それよりもここに描かれているドラマが素晴らしい。 遺伝子が全てを決定する未来社会を舞台に、遺伝子操作をうけないで育った男が宇宙パイロットになるまでを描く怒涛の地道な努力つみかさね映画。ひたすら地道な努力を積み重ねていき、ついには成し遂げてしまう話は、舞台を変えた脱獄もにもみえる。このように、一見不可能は夢を抱き、「もしかしたら夢だけにおわらず、出来るんじゃないかな」って思って、そこにいたるまでの可能性を思い描き、それをひとつひとつ実行に移していく。こういう話は大好きで、心をゆすぶる大傑作として記憶されてしまった。 もうひとつ、『トゥルーマン・ショー』というアンドリュー・ニコルが脚本を書いた映画もあり、この二本をみるとアンドリュー・ニコルの方向性が理解されるだろう。ファンタジックなシチュエーションに逃げるひ弱さは若干感じられるが、注目したい監督の一人だ。 そしてまた、音楽がいいんだ。マイケル・ナイマン。『仕立て屋の恋』や『髪結いの亭主』、『ピアノレッスン』など、ミステリアスで官能的、繊細でドラマチック。この映画のクラシックで繊細な感じに実にマッチしている。音楽にほとんど興味のない私に覚えられた数少ない作曲家だ(苦笑)。 ヒロインのユマ・サーマンは主人公を演じたイーサン・ホークとこの映画が縁で結婚した。彼女は遠目からみるとムードのあるようにみえる美人なのだが、ちかくでみるとぜんぜんそんなには感じないというか、むしろ不細工に見えてしまう不思議な顔の持ち主。目が離れてるのが問題なのかもしれないなあ。あと鼻がろまんちっくじゃないんだよな。イーサン・ホークはこの頃までは実に良かった。へんに無精ひげはやしだしてからはなんかダメだ・・。 <あらすじ> 遺伝子工学の進歩で胎児の間に劣性遺伝子を排除できる社会。そこでは優良遺伝子保有者と、「欠陥」のある遺伝子を持ったまま自然出産により産まれた「不適正者」との間で厳格な社会的差別が存在していた。 主人公のヴィンセント・フリーマン(イーサン・ホーク) は自然出産で生まれ、生まれた時の診断では心臓が弱く30歳までしか生きられないと宣告されていた。一方弟アントン(ローレン・ディーン)は劣性遺伝子を排除されて生まれた。年をとるごとにその差は歴然としてくる。ヴィンセントはどんなに頑張っても弟に遠泳で勝てないのである。 ヴィンセントはある決意を胸に家を出た。宇宙飛行士になるため、宇宙開発を手掛ける企業・ガタカ社の就職試験を受けた。もちろん「不適正者」のため、DNAブローカーにジェローム(ジュード・ロウ)を紹介してもらう。彼は最高級の遺伝子を持つ超エリートの水泳選手だったが自殺未遂を図り、下半身不随になっていた。血液サンプルなどの提示が求められた場合は、ジェロームがそれを提供する。しかし、問題はヴィンセントの身長が規定にみたないことだった。彼は手術をうけ、ふくらはぎの部分で足を切断、骨に足りない長さを追加して、筋肉や神経がつながるのを待った。 訓練生として合格したヴィンセントは努力した。そして抜かりなかった。抗議の後キーボードの間におちたかも しかしロケット打ち上げに反対していたヴィンセントの上司が殺される事件がおきた。捜査に協力した女性局員アイリーン(ユマ・サーマン)はヴィンセントを疑いながらも、彼に魅かれていくことになった。捜査官になったアントンは現場から検出された毛髪がヴィンセントのものだったことに驚く。犯人は別にいた。しかし、真実をしったアイリーンは、悲しみながらもヴィンセントの成功を祈る。 打ち上げ決行の前日、ヴィンセントはアントンと再び遠泳で対決した。しかしその日のヴィンセントは何かが違っていた。いつものように弟と海に向かって泳ぎ始める。先に岸に戻ろうとしてユーターンしたものが負け・・、いつものルールである。二人は彼方に向かって泳ぎ始める。泳ぎ続ける二人。先に根を上げたのはアントンだった、「これ以上泳いだら戻れなくなるぞ」。しかしヴィンセントは戻ろうとはしない。ついにアントンがユーターンした。 へとへとになって丘に上がったヴィンセントが語る、「戻ることは考えなかった」 ヴィンセントはジェロームに別れを告げて探査船に乗り込んでいく。一方ジェロームは、思い出の金メダルをかかえ焼却炉で自らを焼き自殺するのだった。 * * * 「人には自分の人生を選択する瞬間がある」 ダグラス・デイ・スチュワートの映画『リッスン・トゥ・ミー』のなかにこのような台詞がある。それは<人格の設定>ともいえる。 自分はこんな人間かもしれない、・・しかし、自分はこう考えて生きるんだ。こう行動するようにするんだ! 自分の人格を自分の意志で選択する時がある。ヴィンセントのその瞬間は、何度も何度もアントンとの遠泳に負けて家を出る、その前の晩のベットの中だったのだろう。
by ssm2438
| 2010-01-29 00:17
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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