西澤 晋 の 映画日記

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2011年 05月 06日

ホテル・ニューハンプシャー(1984) ☆☆☆☆

ホテル・ニューハンプシャー(1984) ☆☆☆☆_f0009381_10312213.jpg監督:トニー・リチャードソン
原作:ジョン・アーヴィング
脚本:トニー・リチャードソン
撮影:デヴィッド・ワトキン
音楽:レイモンド・レポート

出演:
ボー・ブリッジス (ウィン・ベリー)
ロブ・ロウ (ジョン・ベリー)
ジョディ・フォスター (フラニー・ベリー)
ナスターシャ・キンスキー (スージー・ザ・ベア)

        *        *        *

不幸との格闘技、それが人生だ!

めちゃくちゃ好きというわけではないが、ジョン・アーヴィングの小説で映画になったものは不思議と全部みている。そのなかで一番好きなのがこれ。アーヴィング原作の映画というのは子宮の臭いがするのだが、これはそれほどしない。一番さらっとしてる。そのさらさら感が好きなのか・・・な?

アーヴィングの映画のもうひとつの特徴はポジティブなスピリットだろう。
私は、アーヴィングの映画は「悲しみのリセット映画」だと思っている。人は誰でも悲しいことのない人生なんておくれるはずもない。何処かしらになにか悲しみがある。それに同対処するのか・・というのがその人のもつドラマになってい来る。
人がなぜ悲しむのだろう・・?って考えると、きっとその人は悲しみたいから悲しんでいるのである。アーヴィングの映画をみるといつもそう感じる。つまりそれは、自分が失ったものがとても大事なものなんだ・・という見意識のアピールだと思う。人間の心というものは、傷ついても、時間をかければ徐々にリセットできてしまうのである。あとになって「今はこんなにリセットできてるのに、なぜ、あの時あんなに悲しんだのだろう?」と考えてみると、先の答え「人はその時悲しみたかったから、悲しんだのだ」って答えにもどってくる。
アーヴィングの映画をみてると、<悲しみたいから悲しんでいる人>と、<どうせ未来になったらリセットできてるのだから、だったら今やってしまおうという人>と、二種類出てくるような気がする。特にこの映画はそのリセット力の強い人たちが出ていると思う。というか、ほとんどみんながそうだ。それがアーヴィングの映画の前向きな姿勢につながってくるのだと思う。

つい最近見た『ドア・イン・ザ・フロア』では、<悲しみたいから悲しんでいる人>と、<どうせ未来になったらリセットできてるのだから、だったら今やってしまおうという人>とを、子供を亡くした母、キム・ベイシンガーと父、ジェフ・ブリッジズで演じ別けてる。こういう映画のほうがドラマ的にはコントラストがついていいのかもしれない。しかしこの『ホテル・ニューハンプシャー』では、悲しみに対してスポーツマン精神で戦っているような雰囲気さえ感じる。

「悲しみよ、来たけりゃいくらでも来い! 
 片っ端から忘れていってやる、さあかかってこい! さあっ!!」

・・・みたいな。
ちなみに、『ドア・イン・ザ・フロア』ではポジティブ父ちゃんをジェフ・ブリッジズが演じていたが、この『ホテル・ニューハンプシャー』ではその兄・ボー・ブリッジズが演じている。どちらもとてもいいキャラだが、この映画の父ちゃんが素晴らしい。大好きなキャラクターだ。彼のポジティブさが、暗くなっても仕方がないようなこの映画を、“人生そんなに悪くないかも・・”って思わせてくれているのだろう。

<あらすじ>
学生時代にアルバイトをしていたホテルでは曲芸をする熊を飼っていたことから、ウィン・ベリー(ボー・ブリッジス)もいつか熊のいるホテルを経営したいと思っていた。彼はメアリー(リサ・べインズ)と結婚し、メアリーの母校である女学校を買いとって改造された「ホテル・ニューハンプシャー」でホテル経営をはじめる。
子供たちは、このホテルで成長していく。同性愛者の長男フランク(ボール・マクレーン)、しっかり者の長女フラニー(ジョディ・フォスター)、姉を愛する次男のジョン(ロブ・ロウ)、成長のとまった文学少女の次女リリー(ジェニー・ダンダス)、そして耳の不自由な三男エッグ(セス・グリーン)。
フラニーの憧れをいだいていたダブ (マシュー・モディン)は、フラニーのことを想うジョンをからかい、いじめる。そんなジョンをかばうフラニーは、タブとその仲間にレイプされてしまう。はじめは順調だったホテル経営も祖父の急死の頃から傾き始める。ウィーンで第二の「ホテル・ニューハンプシャー」をはじめることにするが、メアリーとエッグが途中飛行機事故で死亡。経営が軌道にのると、ホテルをアジトとしていたテロリストたちが近くのオペラ座爆破未遂事件を起こし、その犠牲となってウィンも視力を失った。
リリーが書いた一家の物語「大きくなりたくて」がベスト・セラーになり一家はアメリカに戻る。しかし第2作は散々酷評され、メアリーは自殺してしまう。
多くの愛する者たちを失ったウィンだったが、メアリーとの思い出の地でついに熊のいるホテルを開設する。結婚するフラニー。姉への想いをふっきって、スージー(ナスターシャ・キンスキー)を愛するジョン。彼らの新しい人生が始まろうとしていた。

by ssm2438 | 2011-05-06 10:32


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