2011年 05月 26日
監督:野村芳太郎 原作:松本清張 脚本:橋本忍 撮影:川又昂 音楽:芥川也寸志 出演: 加藤剛 (浜島幸雄) 岩下志麻 (小磯泰子) 小川真由美 (浜島啓子) * * * 『鬼畜』と『影の車』は、見たくないところをぐりぐりねじ込んでくる。 『鬼畜』はわが子を捨てに行く、あるいは殺してしまう・・という、人間感情的にどうしてもみていてつらい部分があるが、この『影の車』も、同じような受け入れがたい部分を切り裂いてくる。それは「おかあさん」というのは、子供にとって犯してはいけない存在。聖域である。これとセックスする男なんて、感情的に許せるわけがない。 しかし、子供も大人になり、性欲を持ち、人間なのだからセックスはするのだ・・という概念が備わってくれば、おのずと許せてきてしまう。なので離婚する家庭は子供がせめて高校を卒業するまで・・ってことにこだわるのだろう。 この映画では、そういった子供の聖域のなかに、男がづかづかと土足であがりこみ、自分が寝ている部屋のとなりで母とセックスをしているのである。こんな男を許せるわけがない。本来は、それは男なら(それが子供であっても)理解できる感情なので、そんなことは決してしないものだが、この映画の加藤剛それをやってしまっている。ゆえに、見るのがつらい映画だ。 別な言い方をすれば、松本清張自身が、自分のなかの心と向き合い、精神的な神聖なもの、犯さざるげきもの、それを失った時にとてつもなく悲しいもの・・、そういうものを、自分のなかできちんと確認できているからこそ書けるのだと思う。精神のストリップ力がスゴイ人だとつくづく思った。 しかーし、生理的にこの映画はみるのがしんどい。ドラマを人事して見られる人には普通の映画かもしれないが、真剣に自分と向き合って見る人にはけっこうつらい映画だ。 しかし、岩下志麻はきれいだ。1941年生まれなので、この映画の撮影している時は28~29歳だろう。ひざ上10センチのスカート姿がとても刺激的だ。 <あらすじ> 浜島幸雄は、幼いころ、母の愛人である男を殺した。その男は優しかったが、夜になると幸雄の母を抱いていた。子供にご機嫌をとるために、その男は幸雄を釣りに誘った。嶮しい岸壁で、命綱を腰に巻き、釣りをしているその男のさおに大物がかかったらしく、海へとひっぱられるその力に命綱と腕力で戦っていた。その時、彼はナタで彼の命綱を切った。男は前のめりに岩に頭をぶつけ、気を失ったまま海へを落ちて死んだ。後にその男が発見され、彼の棺おけをのせた一行が浜島の実家の前を通っていく。泣き崩れる母。 そんな過去の出来事を、今度は浜島幸雄(加藤剛)が幼馴染の小磯泰子(岩下志麻)と知り合い、その子供の聖域を土足で踏みにじることになる。 ある週末、その日は新設する旅館のおひろめがあるとかで、家をあける言い訳をつくった浜島は泰子の家に泊まった。そしてその夜も、子供が寝静まると泰子を抱いた。朝方目を覚ました浜島がトイレに立ち、出てくるとそこには斧をもった子供がいた。恐怖にとらわれた浜島はその子の首をしめて殺してしまう(実は一命を取り留めた)。 警察の取調べに対して浜島は、子供の殺意を感じ、恐ろしくなって首を絞めた・・と供述するが、刑事は信じようとしない。「6歳の子供がそんな殺意をもつわけがない」と一蹴する刑事に、浜島は搾り出すように応える「あるんだ・・・」。
by ssm2438
| 2011-05-26 08:51
| 松本清張(1909)
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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