西澤 晋 の 映画日記

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2010年 06月 07日

二十四時間の情事(1959) ☆☆☆☆

f0009381_1235451.jpg監督:アラン・レネ
原作:マルグリット・デュラス
脚本:マルグリット・デュラス
撮影:サッシャ・ヴィエルニ/高橋通子
音楽:ジョヴァンニ・フスコ/ジョルジュ・ドルリュー

出演:エマニュエル・リヴァ/岡田英次

       *        *        *

引き出しの奥に入れてそっと隠しておいた記憶。忘れているわけではないのだが、日常生活の中ではそれを忘れたように振舞っている。そのまま忘れてしまうこともあるだろう。しかし、新しい出会いあったとき、それは捨てられるために思い出される。でもそれが捨てられないことだってある。その場合は今のある可能性を捨てることになる。

ほとばしる熱いパトスで、思い出を裏切るなら・・ってすごい歌詞だなあってつくづく思った。

この映画の前作と脚本はマルグリット・デュラス。私は彼女が描いた原作の映画jは『愛人/ラマン』『かくも長き不在』、そしてこの『二十四時間の情事』しかみてないのだが、たぶんこれが一番いいのではないか。ストーリーもそうだが、アラン・レネの怪しい演習もこの映画に関しては成功していると思う。原題は『ヒロシマ・モナムール』。この作品は1959 年度カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞と1960年度ニューヨーク映画批評家協会賞外国語映画賞を受賞している。

女は女優で、ロレーヌ川沿いにあるヌヴェールという街で生まれ、戦争が終わるとパリにでて女優になり、今(戦後14年がたっている)、原爆をテーマに反戦映画を撮りにきている。男は原爆で家族のすべてを失った建築技師。どういういきさつでこの二人が知り合い、情事にいったのかは語られていない。さほど重要な要素ではないのだろう。さらに男と女の名も紹介されていない。しかし最後のシーンで、男の名前は「広島」、女の名前は「ヌヴェール」と言っている。それぞれの街を象徴化、人物にそのキャラクターを投影して描かれているということなのだろう。

以下、本ブログでは男を「広島」、女の「ヌヴェール」という名前として書いてみることにする。

映画の冒頭、抱き合った男女の部分を移しながら、「私、広島で何もかも見たわ」というヌヴェール(エマニュエル・リヴァ)の声がはいる。「君は何も見ちゃいない」という広島(岡田英次)。画面には原爆の資料映像やら原爆博物館の展示品やら、それをみてまわる人たちが映し出される。そんな画面をながされるなか、ヌヴェールは「広島の総てを知ってる」と繰り返し広島は「君は何も見ちゃいない」と繰り返す。やがて朝になり、ホテルから出て別れる時に、ヌヴェールの「知る」には「感情移入」がないことを指摘する。

翌日にはフランスにたつヌヴェールにしてみれば。朝の別れが最後だったつもりなのだが、広島が彼女を探し当ててしまう。ヌヴェールは誘われるままに広島の家を訪れる。妻は雲仙に行き留守だ。それまでお互いが結婚している事実は語られていなかったようだが、ここでそれが語られる。しかし抱き合う二人。ヌヴェールが故郷の町のことを少し筒語り始める。
場所移動があり、大田川沿いにある『どーむ』という名のカフェバー。そこでヌヴェールは彼女のひめたる過去を少しづつ語り始める。ドイツ占領下の故郷で、当時19歳の彼女は23歳のドイツ兵の若者と恋におち、人目を忍んでお互いの体を求め合った。二人は終戦が近づいてくる中、彼女は故郷を捨てそのドイツ兵と駆け落ちする決心をしていた。しかし待ち合わせの場所にいってみるとそこには撃たれて死にかけている彼がいた。一晩彼に寄り添っていたがそのドイツ兵は死に、ヌヴェールは売国奴と非難され、リンチにあい、髪をきられて丸坊主にされた。フランス国民として、娘の裏切りを許せなかったヌヴェールの父は彼女を地下室に閉じこめた。彼女は地下室で二十の誕生日を迎えた。髪も伸びたある日、母が彼女を夜のうちパリへ発たせてくれた。

(彼女の故郷の町ヌヴェールでのドイツ人兵士とのやりとりは望遠レンズで撮られており、画面が美しい。それに大して現代の広島の画面は標準で、しかも被写体に近いところから撮られている。このあたりの使い分けもさりげなく気を使っているようだ。

大事なことでも人は忘れていく。しかし、もし忘れることがなかったとしても、未来を生きるためには忘れたことにして生きてかないといけないことが多い。それはヌヴェールの戦争の痛みも、広島の痛みも一緒である。この映画は、ヌヴェールが広島の戦争の痛みに触れることで、自ら封印していた過去に再会する話なのだろう。

by ssm2438 | 2010-06-07 12:35


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