西澤 晋 の 映画日記

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2010年 06月 20日

ミュンヘン(2005) ☆☆☆☆

f0009381_2256444.jpg監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー/エリック・ロス
撮影:ヤヌス・カミンスキー
音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演:
エリック・バナ (暗殺チームリーダーのアヴナー)
ダニエル・クレイグ (車輌担当のスティーヴ)
キアラン・ハインズ (後処理担当のカール)
マチュー・カソヴィッツ (爆弾担当のロバート)
ハンス・ジシュラー (文書偽造担当のハンス)
マチュー・アマルリック (上方屋のルイ)
ミシェル・ロンズデール (ルイのパパ)

       *        *        *

普通の人間性をもった人たちの殺人シークエンス。

この事件がおきたのは私が10歳の時で、1972年のミュンヘンオリンピックの最中。なにやら陰惨な事件がおきたらしいということだけは子供ながらに知っていたが、少なくとも私の記憶でそれでも普通に行われた五輪で、日本のバレーボールのチームが男子は金メダル、女子は銀メダルを取り、体操では月面宙返りなる技が世間をにぎわせ、水泳ではアメリカのマーク・スピッツがやたらと金メダルと獲得していた・・というだけだった。
実際にこの事件の内容を知ったのはそれから15年くらいたってからのことである。
それも、そのきっかけになったのはジョン・フランケンハイマー『ブラック・サンデー』を見たときで、同じ時期にレンタルビデオ屋の棚には『黒い9月』というタイトルの映画もならんでいた。実際こちらの映画はみたことがないのだが、『ブラックサンデー』のなかで『黒い9月』という言葉が出てきており、当時『ブラック・サンデー』が公開中止になったのもそんな背景があったのか・・と理解した。

この映画は、暗殺部隊の元メンバーの告白を基にしたノンフィクション『標的(ターゲット)は11人/モサド暗殺チームの記録』の映画化。モサドの殺し屋も普通の人間だってところ。その普通性と、殺しを実行していく異常性がつねに共存しながら物語が描かれていくところが良いよ。これが『ゴルゴ13』作者から与えられた無敵の精神を武器に戦えるファンタジックな殺し屋だったらそこら辺によくある話なのだけど、モサドの実行員ですらその人間性を普通にもってるあたりが実に良い。普通モサドメンバーだったら感情のないマシンのような諜報員って印象をそれまで持っていたが、こういう描き方をされると実に新鮮だった。
スピルバーグの演出も、人を殺すとい非人道的な行為がおこなわれると同時に、それを実行していくものの人間性を露骨に描写し、このコントラストが実に効果的に描かれている。

主人公がやっともどった家庭で妻をセックスをする、その間に挿入される、人質にされたイスラエルのオリンピック代表選手とコーチや役員たちの殺されるシーンにはやりきれない痛みを感じる。彼らの痛みや憎しみをを感じるなら復讐はあってしかるべきだと感じてしまうも人間性だし、それを延々つづけていても何も解決にはならないと理解できてしまうのも人間性。たぶん人はどちらも否定することは出来ないように生れているのだろう。

ちなみに撮影はヤヌス・カミンスキー。スピリバーグの映画では比較的近いカメラがおおく、その点に関してはイマイチなのだけど、この人の色の質感はとても好きである。

<あらすじ>
ミュンヘン・オリンピック開催中におきた、パレスチナ・ゲリラ “黒い九月”によるイスラエル選手と役員の人質惨殺事件に激怒したイスラエル機密情報機関モサドは、暗殺チームを編成してその報復を企てる。そのチームリーダーに任命されたのは、まだモサドに入って何の実績もないアヴナー(エリック・バナ)だった。彼は結婚しており、妻は妊娠中で、あと2ヶ月もすれば子供が生れるという、そんな時期のことだった。

妻にも事情を話せないまま、ヨーロッパに渡るアヴナー。そして車輌専門のスティーヴ(ダニエル・クレイグ)、後処理専門のカール(キアラン・ハインズ)、爆弾専門のロバート(マチュー・カソヴィッツ)、文書偽造専門のハンス(ハンス・ジシュラー)という4人のスペシャリストと共に、アラブのテロリスト指導部11人を一人一人暗殺していく。ターゲットを探し出すのはルイ(マチュー・アマルリック)という情報屋だった。
2人の暗殺が終了した時点で、アヴナーは妻の出産に立ち会うため仲間に内緒で一時帰国。家族の危険を考え、妻にニューヨークへの移住を切り出す。
確実にリストの男たちを殺していくメンバーだったが、POLも各地で爆破テロやハイジャックを起こし、一般人をまきこんだ犠牲者はあとをたたない。ある晩、ついにカールが女殺し屋に殺害される。その女殺し屋もルイが探し出してくれた。そのときは無料での情報提供だった。つまり、自分たちが流した情報ではないというアピールであり、同時にルイはアヴナーに封筒を渡す。中にはアヴナーの写真が入っていた。つまり、何者かがルイたちにアヴナーの所在を探すことを依頼したのだ。既に狙うだけの立場から狙われる立場になっているのだ。
それでも殺しを依頼された女殺し屋を殺したアヴナーたちだったが、まもなくメンバーのハンスも殺害され、ロバートは、自ら作った爆弾の誤爆により命を失う。標的を7人殺害した時点で、アヴナーは任務を解かれて妻子の待つニューヨークへ移る。しかし常に誰かに追われる恐怖を抱えながら生きていく人生から逃れることは出来ないのだった。

by ssm2438 | 2010-06-20 22:55 | S・スピルバーグ(1946)


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