2011年 01月 16日
監督:デヴィッド・フィンチャー 原作:ベン・メズリック 脚本:アーロン・ソーキン 撮影:ジェフ・クローネンウェス 音楽:トレント・レズナー/アッティカス・ロス 出演: ジェシー・アイゼンバーグ (マーク・ザッカーバーグ) アンドリュー・ガーフィールド (エドゥアルド・サベリン) ジャスティン・ティンバーレイク (ショーン・パーカー) * * * 良くも悪くもアーロン・ソーキン節、炸裂! あいかわらず台詞が多い。これって『ザ・ホワイトハウス』のころからで、やたらと台詞がおおい。通常のドラマの1・5倍~2倍はあるんじゃないだろうか。しかし、それまではそんなことはなく、『ア・フュー・グッドメン』や『アメリカン・プレジデント』の映画を撮っていたころはそれほでもなかった。それがテレビに舞台をうつして『ザ・ホワイトハウス』をやり始めてからはやたらと台詞が増えたのである。英字字幕でもみてみるのだが、日本語字幕とくらべて長い。日本語字幕だとどうしても時間内に把握できない部分もあり若干短くするものだけど、かなりシンプルな台詞になっていることもよくあった。今回の映画でも、英語の台詞をそのまま訳するとおそらく日本語字幕は読めなくなるくらいの量だろう。 これはアーロン・ソーキンがシナリオライター基本の人だからだろう。シナリオ主義の人はこの手のドラマになりやすく、オリヴァー・ストーンなども、ソーキン同様に詰め込みたい人だ。とにかく映像になったときのこを信用しない。というか、自分自身が映像でかたるイメージが出来ないのでそういう作りには決してなれない。この手のタイプの人がシナリオを書くと、お話はしっかりしてくるのだけど、物語全体に余裕がなくなってしまう。自分が語りたい情報だけを提示するのが精一杯で、観客に考える時間を与えたり、リラックスさせたり、哀愁や感動に浸らせたりする時間をあたえるという概念がない。『ニューシネマ・パラダイス』や『フィールド・オブ・ドリームス』のような怒涛の涙はけっしてこの手の脚本家からは生まれない。 そこは、監督さんがもうちょっと考えて作ってあげればいいのだけど、今回のデヴィッド・フィンチャーは完全にアーロン・ソーキンの『ザ・ホワイトハウス』のペースにのみこまれていたようだ。 物語は、《フェイスブック》の創立者であるマーク・ザッカーバーグの、そのネットワークの立ち上げからの物語を、その後仲間だった人たちから訴訟の公聴会のやり取りのなかで描いていくというもの。映画のポスターには「天才・裏切者・危ない奴・億万長者」の文字が並んでいる。しかし本人は「裏切者」だとは思っていないだろう。映画も、実在の、それも現役のCEOを映画の題材に取り上げているのであり、主人公を否定的に描くわけにはいかないだろう。おそらく、この映画を観ても、本人はそれほどはらも立たないと思うし、むしろ自分の生き方を誇りに思うのではないかと私は感じた。 映画のなかで本人も「ボクは悪人じゃない」と言っている、彼は悪人としては描かれていない。さらに彼はだれも怨んではいないとも思う。恨むというのはあくまで、誰かに期待してそれが裏切られた時に起こる感情であり、彼はそもそも誰にも期待しない人間なのだ。 この自信家で思いやりのかけらもなさそうなザッカーバーグ描き方のなかで、さりげなく小出しにされる彼の人間味を感じさせる部分の描き方がまた渋い。ザッカーバーグが期待する(自分を認めてほしい)相手は最初にわかれたガールフレンドだけなのだが、もう一人、ヒアリングでザッカーバーグを弁護する側の新米女性弁護士、彼女だけはきちんとザッカーバーグを認めてあげている。しかし、ヒアリングの後彼女から優しい言葉をかけてもらえるが、自分を捨てた彼女のページにメッセージを送り、入室を許可されることをまつザッカーバーグが実に切実で良い。 ちなみに、「裏切りも」に値する箇所は、《ザ・フェイスブック》を立ち上げる前のとこだろう。 彼女に振られた腹いせに、大学の寮の女の子データを全部ハッキングして手に入れ、二人の女の子をくらべてどちらがベッピンさんかを選択する、その連続により誰が一番美人かを決めるようなサイト《フェイスマッシュ》をつくってしまう。そのときプログラムを作ったのがエドゥアルド・サベリン、のちに《フェイスブック》の共同経営者となる学生だった。 そのサイトは一晩にして人気が出るが、同時に女子学生からはバッシングにあい、サーバーもダウンしてしまいあっという間に終わってしまう。しかしその利便性を見抜いた双子のウィンクルボス兄弟は、自分たちが企画した学内男女のインターネット上の出会いの場“ハーバードコネクション”の設立に協力してほしいとザッカーバーグに協力を要請する。その依頼をうけたザッカーバーグだが、独自の発想をもってしまい、そのチームからスピンアウト、先のプログラマーだったエドゥアルド・サベリンとともに《ザ・フェイスブック》と開設してしまう。 もとものはウィンクルボス兄弟の発想を基にしたネットワーク作りだったために、のちにこの二人に訴えられてしまう。しかしヒアリングの席では、「僕はなにも盗んでいない。もしボクがそれを盗んだものなら、彼らにそれが作れるはずだ。でも作れない」と言い切る。 こういうザッカーバーグのアウトロー的なカッコ良さをソーキンは彼の言葉で描いてくれる。 さらに、ザッカーバーグは、終始お金をもとめて仕事をしたことはない。結果としてそうなっただけで、だからこそこの映画の中で彼がカッコいいのだろう。 そしてソーキンの描き方がさえているのは、エドゥアルド・サベリンのキャラクターだ。ザッカーバーグが常に自分に自信を持ち揺らがないキャラクターに対して、このネットのプログラマーで、のちの《フェイスブック》のCFO(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)エドゥアルド・サベリンは人間的な揺らぎをもたせて描かれている。彼のなかに、普通の人間が持っているたよりなげな部分を描くことで、ザッカーバーグのキャラクターはさらに協調している。結果として彼は、あとから入ってきたショーン・パーカーにより会社を終われることになり、これまたザッカーバーグは創立者のサベリンからも訴訟を起こされる。
by ssm2438
| 2011-01-16 16:08
|
アバウト
主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
ファン
検索
以前の記事
2016年 05月 2013年 12月 2013年 10月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 タグ
☆☆☆(365)
☆☆☆☆(199) 一見の価値あり!(84) ☆☆☆☆☆(84) 貴重なヌードあり!(82) シナリオ勝負映画(82) 撮影的に高品質な映画(81) この女優必見!(80) 楽しいぞ!この映画(80) ダメだこりゃ映画(79) 女優が色っぽい映画(78) 女優が愛らしい映画(76) 自然描写が美しい映画(53) 一見の価値もなし!(53) ダイナミック望遠映画(37) ディープメンタル映画(22) 言葉が素敵な映画(22) リアリズムの映画(20) ぼろ泣き映画(16) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(13) カテゴリ
ジョン・フォード(1894) フランク・キャプラ(1897) A・ヒッチコック(1899) V・デ・シーカ(1901) ウィリアム・ワイラー(1902) ビリー・ワイルダー(1906) フレッド・ジンネマン(1907) 松本清張(1909) 黒澤 明(1910) M・アントニオーニ(1912) ルネ・クレマン(1913) I ・ベルイマン(1918) F・フェリーニ(1920) G・チュフライ(1921) W・A・フレイカー(1923) シドニー・ルメット(1924) 増村保造(1924) H・ウェクスラー(1926) S・キューブリック(1928) J・フランケンハイマー(1930) N・アルメンドロス(1930) ロベール・アンリコ(1931) ゴードン・ウィリス(1931) マイク・ニコルズ(1931) F・トリュフォー(1932) A・タルコフスキー(1932) D・マカヴェイエフ(1932) テオ・アンゲロプロス(1935) ウディ・アレン(1935) R・レッドフォード(1936) リドリー・スコット(1937) 木村大作(1939) ジョン・バダム(1939) W・フリードキン(1939) J・L・ブルックス(1940) エイドリアン・ライン(1941) ノーラ・エフロン(1941) K・キェシロフスキー(1941) ペニー・マーシャル(1943) ピーター・ウィアー(1944) C・デシャネル(1944) ラッセ・ハルストレム(1946) S・スタローン(1946) アイバン・ライトマン(1946) S・スピルバーグ(1946) パトリス・ルコント(1947) E・ズウィック(1952) ゴジラ(1954) G・トルナトーレ(1956) ブラッド・バード(1957) 男はつらいよ(1969) ライフログ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||