西澤 晋 の 映画日記

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2011年 01月 30日

恐怖のメロディ(1971) ☆☆

f0009381_14505839.jpg監督:クリント・イーストウッド
脚本:ディーン・リーズナー/ジョー・ヘイムズ
撮影:ブルース・サーティース
音楽:ディー・バートン

出演:
クリント・イーストウッド (デイブ)
ジェシカ・ウォルター (イブリン)
ドナ・ミルズ (トビー)
ジョン・ラーチ (マッカラム警部)

       *        *        *

(ドン・シーゲル+ヒッチコック)÷2

昔からタイトルだけ知っていたが、観ないままになっていた映画の一つ。最近世間で評価されているイーストウッドだが、この人の語り口が面白いとも思わないので放置プレーになっていた映画。この映画もさほど見るべきところはないのだが、低予算のなかで、とりあえず「あるもので映画にする」という意味では、出来ている映画だと思う。

この映画であきれたというか、感心したのは、昔の女トビーとよりをもどそうとして、海岸沿いを歩くあたり。こんなところは凝って作っても仕方がない!と割り切ったのだろう、延々ふたりで歩いているシーンを撮っているだけ。この割り切りかたは、低予算映画としてはすばらしい英断だったと思う。しかしそれはあとからそれが低干さん映画だったということを知ったから言えることなのだが、実際は観ているときは「ひどい手抜きだな」と思った。監督料はでても、主役としての主演料がでないような作品ならでの超妥協の産物であり、もとにかくシナリオにある内容を最低限度の時間と労力でシーンでうめようとを考えた時にしか生まれないような演出。
私も演出をはじめたころ、一話アタリの動画枚数を2500枚以内という超極貧アニメをやったことがあるが、説明シーンは覚悟をきめて止めるしかないのである。あとは音楽とカメラワークにまかせる。あのころの切なさを思いだした(苦笑)。

実はこれ、主演をつとめたクリント・イーストウッドの初監督作品。師匠のドン・シーゲルもバーテンダーとして登場している。演出的にはドン・シーゲルの演出手法を模倣しているクリント・イーストウッド。されどヒッチコック的なテイストもあちこちにちりばめられている。当時のイーストウッドは、ヒッチコックの記号的な表現方法をもうちょっとリアルに表現したかったのかもしれない。

話はほとんど『危険な情事』。一夜の情事のつもりで寝た女につきまとわれるストーカー被害もの。もっともこちらのほうが先に作られていたので、『危険な情事』のほうがこのネタを使って別物を作り直したのだろうというほうが正しい。『危険な情事』のグレン・クローズがあれだけ怖い女だったのも、このジェシカ・ウォルターの存在があったからだろう。しかし主役がマイケル・ダグラスのほうが似合ってる(苦笑)。どっちにしても、あんまり真剣に女を好きになっているようには見えないのだけど・・・。

撮影監督は『ダーティーハリー』などで一緒に仕事をしたブルース・サーティース。この人の夜はほんとに暗い。ただ暗い。「暗い」のが嫌いではないが、この人の「暗さ」はあんまりお洒落じゃない。もうちょっとライティングを考えて撮れば良いのにって思う。「暗い』画面の多い人だが、それほど好きな撮影監督ではない。この人の黒さよりもゴードン・ウィリスのほうがはるかに洗練されていると思うが。

<あらすじ>
レコードの合い間に詩を読んだり、ちょっとした哲学を聞かせながら、電話によるリクエストを受けているディスク・ジョッキー、デイブ・ガーランド(クリント・イーストウッド)。そんな彼の放送が始まると、決まった時間に「ミスティ」という曲をかけてとリクエストする女がいた。ある夜、デイブがいきつけのバーに顔を出すとイブリン(ジェシカ・ウォーター)という一人の女がいた。毎晩とどく「ミスティ」のリクエストは彼女からのものだった。ちょうど恋人だったドナが去った後だったデイブは一夜の情事としてはイブリンと夜をともにする。
その後街に戻ってきたトビーは岬の家を女友達と二人で借りていた。なんとかよりを戻そうとするデイブはトビーの家を訪れる。しかし、そのことに嫉妬しはじめたイブリンがストーカーとしてデイブの生活にむりやり入り込んでくる。
「もともと二人の間には何もない」と言うデイブの気持ちなど聞こうともしないイブリンは執拗なまでにデイブにつきまとい、愛をもとめてくる。そして自殺未遂。嫉妬に狂いデイブの自宅をナイフで切り刻んでいるところメイドの人にみつかると、サイコさながらに切りつける。

きゅいんきゅいんきゅいんきゅいん・・

警察に連行された彼女は病院へ送られることになった。そして時がたった。トビーのルームメイトが引っ越すことになり、新しいルームメイトを募集するとアナベルという女性が応えてきた。
ある夜、本番中のデイブにイブリンから電話がかかってきた。病気が治ったのでハワイに行くことに決まったから、その前に「ミスティ」をかけてくれというのだ。しかし、トビーの部屋に入り込んだ新しいルームメイトこそ、イブリンだった・・・。

ヒッチコック的なトリックストーリーをドン・シーゲル演出でまとめ上げた映画ではあるが、撮り方や構図などいきあたりばったりの見せ方なので、はじめてコンテを描いた下手な演出のようなカット割。計画性をまるで感じない。もうひとつ、イーストウッドは女が好きになる男が描けない。イブリンにしても元彼女のドビーにしても、主人公のデイブを好きになる要素がまるでないのである。
今も昔も、クリント・イーストウッドに監督としての才能を感じることはまったくない。「とりあえず作る人」ということが確認できた映画だった。でも、サスペンスフルには出来ているし、ヒッチコック映画をシリアスにつくるというがコンセプトは成し遂げられていると思う。

by ssm2438 | 2011-01-30 14:52


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