西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 16日

男はつらいよ32/口笛吹く寅次郎/竹下景子(1983) ☆☆☆☆

男はつらいよ32/口笛吹く寅次郎/竹下景子(1983) ☆☆☆☆_f0009381_1235452.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:
渥美清 (車寅次郎)
竹下景子 (朋子)
中井貴一 (一道)
杉田かおる (ひろみ)
松村達雄  (和尚)

       *        *        *

竹下景子シリーズ第1弾
地元(岡山)が舞台になるのはいい。でもこの話の舞台は高梁市なので、縁もゆかりもないのだけど・・(苦笑)。


このシリーズは全部で10本くらいしか見てないと思うのだけど、私が見た中では一番心にのこってる作品。総合的には寅さんの良さがかなり出ている映画だと思う。しかし、みてないまでも一応のリサーチをしたところのよると、お話的には浅丘ルリ子のリリーさんモノが人気があるらしい。残念ながら浅丘さんはみていないのだ。

ただ、個人的にはマドンナ・ベストワンは竹下景子さんである。なんでも竹下景子はこのシリーズで3回マドンナを演じたとか。でも、浅丘ルリ子みたいに「リリー」を3回演じるのではなく、別々のキャラクターを3回演じたとか。こまったことに全部みてしまった(苦笑)。その3回のうち、一番最初に登場したのがこの『・・・口笛を吹く寅次郎』だとか。この作品がシリーズ32作目ということだが、このシリーズは48作目まで続くことになる。つまりシリーズ後半の17作のうち3作もマドンナをやっているのが竹下景子さんなのだ。たぶん馴染んだんだろうね。あるいは、ほかに適当な人がいなくて、おさまりのよさそうな人を使ったとか・・・。
なにはともかく、竹下景子さんが岡山県を舞台にした作品に出てくれたことは嬉しい限りだ。

寅さんの魅力とはいったいなんなのだろう?と考えてみる。
ほとんどの場合魅力というのは強さである。寅さんの場合もやはり魅力は強さなのだ。でも、腕力の強さではなく、神経の図太さ。別な言い方をすると「心配する能力に欠けている」のである。そんなわけで、失敗を恐れない。そのおおらかさがこの作品の一番の魅力となっているといっていいだろう。
そしてもうひとつ、人情味のある昭和の世界観。近所同士の付き合いが当たり前だった時代の人間の付き合い方。私が子供の頃はやっぱりこの映画にあるような人と人の付き合い方だった。当時の西澤少年にしてみればなんだか煩わしいものでしかなかった。今もそうであるが・・(苦笑)。私の場合は、あまり人付き合いは得意なほうではないので、出来るかぎりほっといてくれ!といいたいほうの人間だ。しかし、この映画のなかでは、その人付き合いのある生活とその親近感が実に肯定的に描かれているのだ。私もふくめて、この感覚が共有できるひとは少なくなってきてると思うが、こういう世界観の中では、寅さんというは機能する人間なのだ。
ただ・・、平成の世界観ではやはり浮いてしまうだろう。やはり寅さんというのは昭和の遺物だったのだなと思う。

<あらすじ>
今回寅次郎(渥美清)がふらりと訪れたのは岡山県の高梁市。そこで住職の和尚とその娘朋子(竹下景子)と出会う。人付き合いのよさで和尚と意気投合した寅次郎は、すすめられるままに昼間から酒をのみすっかり上機嫌。翌日二日酔いで法事に出られない和尚に代わって寅次郎が変わりに出て行くが、こまったことにそつなくこなし、法事の席でも人気者になってしまう。そんなこんなでしばらくその寺に居つくことになってしまった。
実はその高梁市、妹さくらの夫・博の実家があるところだった。そこで三回忌の法事にやってきた、さくらと博に遭遇、さくらは寅次郎が坊さん姿で法事をつとめていることに驚く。

このあたりの心配能力欠乏症の寅さんの大胆さというのは庶民感覚するとうらやましい限りである。なにせほぼ現代人の私などは、法事などの親戚がよりあつまる席が苦手である。古くからの習慣を知っているというだけで、権威と安心をもっている彼らはどうにもあまり相手にしたくない人種なのだ。それを寅さんというのはさらりとうけながし、いつのまにやらその場の雰囲気に馴染んでしまうのである。
この寅さんのすごさは、「相手の人を決して否定しない」という人間の大きさなのだ。その点私は、自分肯定するのに忙しくて、相手のことなど気を回す余裕がない。もっとも、自分を肯定するって事は対照的に相手を否定するということになってしまうので仕方がないのだけど。もちろん、寅さんは自分を肯定していないので、それだけの余裕がもてるのだけどね。

和尚には一道(中井貴一)という息子がいた。彼は仏教大学に通っていたのだが、写真をやりたいと大学をやめ、勘当されて東京の写真スタジオで働いていた。寅次郎は酒屋の娘ひろみ(杉田かおる)と親しくなるが、彼女こそが一道の恋人だった。一方朋子も寅次郎のことがかなり気に入っているらしく、「寅を養子に貰うか」という和尚の言葉にも照れるばかり。その会話を耳にした寅次郎は翌朝東京に逆戻り。帝釈天で仏門の修行にはいることにした。
そこにひろみと一道が訪ねてくる。上京してきたひろみを泊めてほしいとのことだった。結局、二人共二階の寅次郎の部屋に泊まり、寅次郎の説法も功を奏し二人は結ばれる。数日後、朋子がそのお礼に訪ねてきた。朋子の中では寅次郎と結婚してもいいと思っていたのだが、寅次郎はジョークで煙にまいてその恋愛をおわらせてしまう。自分の恋愛になるとチキンな寅次郎であった。

       *        *        *

見直してみた。良い!!!!! この話。
どわああああっと涙がでるわけではないが、すっごく観ていて気持ちが良い映画である。
巧妙な会話も、微妙なメンタリティーも、中井貴一と杉田かおるの恋愛劇も、なんか全部ここちいい。

by ssm2438 | 2011-03-16 21:56 | 男はつらいよ(1969)


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