西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 30日

男はつらいよ15/寅次郎相合い傘/浅丘ルリ子(1975) ☆☆☆

f0009381_11474960.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:
渥美清 (車寅次郎)
浅丘ルリ子 (松岡リリー)
船越英二 (兵頭謙次郎)

       *        *        *

リリーさんシリーズ第2弾
ええええ!?、それで繋いじゃうのですか、『エイリアン3』みたいだぞ。


『エイリアン2』でなんとか生き延びて地球に帰還しようとしたリプリーたちが、『エイリアン3』の冒頭では、ある囚人惑星に落下、リプリーとエイリアン以外はみんな死んでしまうというスタート。前話数での努力と希望と結果を一旦亡き物にして再スタートするというちゃぶ台ひっくり返し戦法。実はここで既に使われていたんですね。・・・しかし、この話はこれでいいのだけど、でも、この話を作るならここはひとつもうちょっと我慢してリリーさんの離婚話つくってからこっちに行ってほしかったかな。先の話数の最後のリリーさんが安心を得た幸せをあっさりデリートするなんて・・・。ちと勿体ないぞ。

というわけで、この物語は2年前に幸せな結婚をしたはずのリリーさんが《とらや》にひょっこり現れるところから始まる。話を聞いてみるとなんでも離婚したとか。もう克服したのだろう、リリーもそれほど悲壮感を漂わせてない。
ただ・・・どうしても私は考えてしまった。あの時、借金してすし屋を開店させたのに・・その後は??って、あの旦那さんは大丈夫なのだろうか?とか。その離婚のせいで、すぐに店をしめることになり残ったのは借金だけ・・?って背景を想像してしまったので、その後の展開がどうにもすぐに楽しめなかった。劇中のどこかで、あの旦那も離婚後もそのまんますし屋をやってて、扶養手当も毎月少ないけど送ってきてて、でも悪いからリリーのほうからそれは断ってる・・みたいなエピソードを10分くらいでいいので挟み込めなかったものか・・。
リリーさんの魅力はその背景にある不幸なのだけど、この話ではその不幸のほうがほとんど出てこなくて、キップのよさだけが出てきてしまってた。意図的なことだろうけど、個人的にはこの人が出る話数はどこかで不幸をきっちり描いてほしかったかな。そのために離婚後の後処理をさりげなく臭わせて、いい旦那だったのに壊してしまったという罪悪感をもうちょっと強調しつつ今回の話を展開してくれたら良かったのに。
あとからみると、もっと作りこめた・・という印象が実に強い。

しかし、山田洋次の語り口は絶品。メロン騒動からのリリーさんの気風のよさを表現する展開。最後の「リリーさんがお兄ちゃんと結婚してくれたらいいのになあ」ってさくらが言うところから寅次郎が現れてすべて冗談にして片付けてしまう切なさ、そのあと雨が降り出し、きっとリリーさんはこの雨の中濡れて行ってるんだろうなとおもわせつつも、追わない寅次郎。それを引き出すための中盤での相合傘。そして何よりはリリーのコンサートを夢見語りする寅次郎・・・。この人職人だなあって感心してしまう。

さくらの「お金があったらどうするの?」の問いに、「でっかい劇場借りていっぱいのお客さんのまえでリリーに好きなだけ歌わせたい」っていう寅次郎。開演からのイメージをとうとうと語る寅次郎。この台詞も素晴らしいが、それを効果的に伝える寅さんの世界観で伝える渥美清もすごい。そして大喝采のシーンを語りつつそこでメローな音楽をかぶせてくる。泣けてきてしまう。
こんなシーンでこういう泣かせのオプションをもっていることがスゴイ。これがいくつかある泣かせに導くパターンの一つであり、他にもいろいろなパターンがあるに違いないと感じさせてしまうのである。勢いでそのシーンが出来るのではなく、この山田洋次の映画をみていると、「何度でも違うパターンで出来るぞ! 同じパターンでも出来るぞ!」っていう、職人としての技術力の確実さを感じるのである。

これは『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』の夜間学校の先生が語る便所掃除の名作文でも感じられる。この話をみててついつい『・・・かもめ歌』も見たくなりレンタルしてきてしまった。

恐るべし山田洋次!

<あらすじ>
相変らずのテキヤ稼業で東北をドサ周り中の寅次郎(渥美清)には、兵頭謙次郎(船越英二)という気弱で謙虚な一流会社のエリート社員らしい男がついてまわっていた。ある日突然蒸発したくなったというのだ。失踪してから1週間、家にも電話をかけてないといこの男は、寅次郎と旅をすることで魂の開放感を味わっていた。そんなある日、函館の屋台のラーメン屋で、寅は二年ぶりにリリー(浅丘ルリ子)と再会した、盛り上がってしまいその夜は一部屋に3人で雑魚寝。兵頭謙次郎も二人に感化されて徐々に精気をとりもどしてくる。そんな3人も恋愛間の違いからケンカになってしまい、そこで三人の旅は終了。

柴又に帰って来た寅次郎は憂鬱。しかしリリーがたずねてきてすぐ復活。ケンカをしてもすぐ仲良くなってしまう二人なのである。やがてリリーがルームシェアしている女友達が男を引き入れたことから、気を使ってさくらのうちに泊めてもらうことになり、新しいアパートをみつけるまでは《とらや》に泊まることになる。ケンカとラブラブをくりかえすリリーと寅次郎。しかしアパートが見つかった。いつまでも《とらや》に厄介になるのも心苦しいリリーはり荷物をまとめはじめる。そんなリリーを引き止めてさくらが「リリーさんがお兄ちゃんと一緒になってくれたらいいな」という話をしてしまう。「いいわよ」と真剣に言葉を返すリリー。
しかし、その場に出かけていた寅次郎が帰ってくる。リリーの気持ちを寅次郎に話すさくらだが、「冗談だろう、こいつらみんなカタギなんだからさ、そんなこといったらみんな真にうけちまうよ。な、冗談だろう?」といつもの自分の恋になるとチキンな寅次郎を演じてしまう。その言葉をきいたリリーは「そう、冗談よ」といって荷物をもって出て行ってしまう。
外は突然の雨、「すぐ追って行きなさい」と言うさくらに、「結婚しても俺とじゃうまくいかないさ」と窓のそとの雨をみつめる寅次郎であった。

by ssm2438 | 2011-03-30 21:49 | 男はつらいよ(1969)


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