西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 30日

男はつらいよ17/寅次郎夕焼け小焼け/太地喜和子(1976) ☆☆☆

f0009381_11484028.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:渥美清 (車寅次郎
太地喜和子 (芸者・ぼたん)
宇野重吉 (日本画家・池ノ内青観)

       *        *        *

幸せに泣ける一本だ!

寅さん映画では珍しくキネ旬ベストテンのその年の邦画部門2位、第31回毎日映画コンクール日本映画優秀賞に選ばれた作品。寅さん映画というのはマンネリ感があるのであまりキネマ旬報の投票にもいれようかなって気になりづらい映画であり、キネ旬のランクもあまり正当な評価としてはとらえづらい映画なのだけど、当時の映画評論家先生たちは、この映画だけは2位ほおりこんできている。それだけ、インパクトのあった作品なのだろう。
そういう私も、昔見たこ時はこんなに泣けなかったのだが、今回見直してみたら最後のハッピーエンドがすっごく泣けてた。歳とると涙もろくていかんな(笑)。

この映画の魅力は太地喜和子演じる芸者・ぼたんのきっぷの良さだろう。座敷の席ではぱあああああああっとひまわりのように明るい。でもその反面実はある男に200万円を騙し取られて、その200マンをなんと取り戻したいとその男に掛け合ってるが相手にもされないし、法的にも無理そうだという悔しさももっている。それでも、みんなといるときはそんなこと忘れたかのように別人格の明るい太陽にように振舞える。このあっけらかんとした性格がとてもすばらしいんだ。
シリーズ中、寅さんがプロポーズ出来た二人のマドンナのうちの一人でもある。ちなみにもうひとりは浅丘ルリ子演じるリリーさん。リリーさんの時はやっぱりはにかみながらだったが、このぼたんの時は普通に自然に勢いでぽろりと言えてしまう。気持ち的には「冗談なんだけど、ほんとでもかまわない」というそんな感じ。それはあいてのぼたんもそうで、きっと冗談だろうけど本気でもかまわない・・というテンションなんだろう。おそらくシリーズの中でもっとも波長があったマドンナさんだっただろう。

もうひとりの重要人物は宇野重吉演じる日本画家の大家・池ノ内青観。こいつの冒頭でのマイペースモードにははなはだ頭にくる。こんな糞ジジイ、誰かが説教してやらんといかん!って思うよ。そのストレスのタメがかなり長くて飛ばしたくなったのだけど、その後は寅さんに説教されるとう展開。寅さんというのは、貧乏人で有名人でも権威があってもなくても誰にでも平等に話が出来る人。それゆえに回りの人は、寅さんを強調するために貧乏んには貧乏人の対応を、えらい先生にはえらい先生への対応をするように描かれている。少々記号的過ぎるのだが、寅さんワールドなのでこれでいいののだろう。
池ノ内青観が昔好きだった女性に会い、そして別れるシーンなど、じい~~~~~っときてしまう。山田洋次の演出のすごいところは、感動させるシーンを、そのシーンで感動させるのではないところなのだろう。そのシーンはほとんどさりげなく撮っているのに感動するのである。これがハリウッドの映画だったら、感動させるシーンはそのシーンで感動させるのである。しかし山田洋次の場合は、そこまでの段階で、すでに感動にいたらる要素をさりげなく注入しておいて、そこにきたらその感動を解放してあげる蛇口をあけてやる。そうしたら一気に感動があふれ出しくるのである。でも、そこで行われるのは蛇口をあけるだけなので実になんでもない芝居だったりする。あたたたたたたたたた・・・<お前はすでに感動している>演出と呼ぼう。
恐るべし、山田洋次。

<あらすじ>
場末の酒場で金も持たずに飲んでいるウサンくさい老人に対して、店のおねーちゃんがカリカリきてるところを寅次郎(渥美清)はその金を立て替えてやり、《とらや》に連れて来る。ところが翌朝、この老人は食事にも色々注文をつけたり、風呂を湧かせといったり、回りの人を怒らせる。さすがに寅次郎も「人のうちに泊めてもらっているのに、それは横暴だろう」と老人を諭すと「すっかり旅館だと思っていた、お世話になったお礼に・・」と、画用紙にサラサラと絵を描き、「これを神田の大雅堂に持っていけば金になる」といって寅に渡した。その絵は7万円になって戻ってきた。この老人は日本画壇の第一人者・池ノ内青観(宇野重吉)だった。
それから数日後、兵庫県・竜野寅次郎が行商の旅をしていると青観に会う。竜野は青観の生まれ故郷だった。市の役人は、青観と親しく話す寅次郎をすっかり青観の弟子と勘違いして、二人を料亭もてなす。その席で寅次郎はぼたん(太地喜和子)という芸者と知り合う。青観は初恋の人を訪ねて帰らぬ遠い青春時代の感傷にひたっていた。代理の寅次郎は市の観光課長の案内で、昼は市内見物、夜はぼたんを連れてキャバレーやバーの豪遊り。すっかりぼたんと意気投合してしまった寅次郎は竜野を発つまえに「おれと所帯をもとう」と言ってしまう。
そのぼたんが数日して《とらや》を訪れる。ぼたんは、苦労して貯めた200万円をある男の会社に投資するが会社は倒産。しかしその男は東京で大きな中華料理点やキャバレーを経営している。タコ社長をぼたんについていかせるが、名義は妻や弟名義で、法律上は彼は無一文者という立場。一銭も払おうとしない。
烈火の如く怒った寅次郎はさくらに「もし明日、ここに刑事がきたら、兄とは8年前に縁をきりました」と言いのこして飛び出していく。ぼたんは「あたし幸せやわ。200万なんかもうどうでもええわ」と感動する。
一方、出て行った寅次郎は、自分がどこに言ったらいいのか知らないことに気づく。戻ってみたがばつが悪くて《とらや》には入れない。
しかたなく青観の家にいき、ぼたんのための絵を一枚かいてやってはくれないかと頼むのだが・・・。


世間的にはもっとも評価のたかい寅さん映画の一本なのだが、私のツボからはちょっと離れていたかな。泣かしてもらったので悪くはないし、えらい評論家の先生方も評価しているのだがらいい映画なのだけど、マドンナのぼたんが私の趣味ではなかったというところがちょっと・・・。きだてのいい女性なのだが、生産性があまりない人なので、私の憧れの対象にはならなかったのだ。
もうひとつ、金貸し悪徳業者という、ちょっときなくさい部分も映画にはあり、それがあんまり寅さんの世界ではみたくなかったかなと思ったり・・、最後、青観に絵を描いてもらいにいくのも、「これは青観を巻き込む話ではないだろう」と思ったりして・・、たしかにそれしか方法はなかったのかもしれないが、便宜性を優先させた選択だったなと、寅さんらしからぬ印象をもったりと・・完全に同調できない部分もあったのでした。
3.5☆くらいにしておきたいのが本音である。

by SSM2438 | 2011-03-30 17:07 | 男はつらいよ(1969)


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