2011年 02月 17日
監督:ジェームズ・L・ブルックス 脚本:ジェームズ・L・ブルックス 撮影:ヤヌス・カミンスキー 音楽:ハンス・ジマー 出演:リース・ウィザースプーン (リサ・ジョンソン) ポール・ラッド (ジョージ・マディソン) オーウェン・ウィルソン (リサの彼氏・マティ) ジャック・ニコルソン (ジョージの父) * * * どのセラピー患者にも効果のある言葉は、「自分の心に正直に・・・」 現代は『HOW DO YOU KNOW』。どうして分かったの? どうして知ったの? みたいなニュアンスか・・。 あいあわらず冴えるジェームズ・L・ブルックスのアクロバティックなシナリオ・サーカス。『スパグリッシュ』以来のジェームズ・L・ブルックス作品。おおお、あいかわらずやってくれます、言葉の魔術師。でも、『スパングリッシュ』のほうが私は好き。でも『スパングリッシュ』よりも『ブロードキャスト・ニュース』のほうが好き。そんなわけで、できばえ的には『恋愛小説家』と同じくらいじゃないでしょうか。 物語はこれまたジェームズ・L・ブルックスのいつものパターン3角関係。 ナショナルチームの全米代表からはずされた31歳のソフトボール・プレーヤー、リサがなんとか普通の恋愛をしようと奮闘する話。その恋人ワシントン・ナショナルズのピッチャー。そこに詐欺の疑いをかけられて会社を首になった(なってないのかもしれない)主人公の男が絡んでくる。 しかし・・・、よくよく考えてみるとブルックスの場合はどの作品をみてもほとんど三角関係が基本になっている。ごちぇえごちゃした人間関係を描くのは好きなんですね(笑)。でも、ブルックスの三角関係はがちがちの恋愛バトルじゃなくて、ちょっとニュアンスの違ったものになっている。恋愛関係ではない三角関係で、その中に恋愛関係が割り込んでくるというのが、正しい表現かもしれない。 ジェームス・L・ブルックスがすごいのは、人と人との恋愛関係じゃなくて、関係と関係の関係を描いているところ。ほとんどのドラマは、AさんとBさんが恋人どうしで、そこにCさんが絡んでくるという構成。これ以外に考えようがないだろうが、ジェームス・L・ブルックスの物語は、(AさんとBさん)の関係に(BさんとCさん)の関係がからんでくる。個人と個人の恋愛模様ではなく、二人のコミュニケーションがひとつの固定体として捉えられており、そこに別のコミュニケーション・スタイルが侵食してくる、あるいは寄り添ってくる・・という超高度に練られたシナリオなのである。 この物語ではメジャーリーガーの恋人ととリース・ウェザースプーンの関係は、かなりふわふわしたものだが、その関係の中にリース・ウェザースプーンと主人公の男の関係割り込んでくる。あるいは、会社(あるいは父)と主人公の関係に主人公と彼のアシスタントの関係が割り込んでくる。 ジェームス・L・ブルックスのシナリオというのは、関係を個性化し、関係同士をからませて、ドラマをつくっているという、今の映画界において類まれなる天才シナリオ・ライターであるといって過言ではない。このスタイルでシナリオを書いてる人は他にいないので、この人のシナリオだけが傑出してみえるのだ。 ああ、バラしてしまった(笑)。。 ただ問題がひとつある。女の趣味は私とは合わない。一番初めのデブラ・ウィンガー(愛と追憶の日々)は好きだけど、ホリー・ハンター(ブロードキャスト・ニュース)もパス・ベガ(スパンングリッシュ)も今回のリース・ウィザースプーンも駄目だ。もうちょっと和みやすい人にしてくれるといいのだけどなあ。特に今回のリース・ウィザースプーンはあのアゴをみてるだけで気持ち悪い(苦笑)。 <あらすじ> 子供の頃からソフトボールの才能に恵まれ、ずっと全米代表チームのキャプテンをつとめていたリサ(リース・ウィザースプーン)も歳には勝てず、ついに代表メンバーからはずされてしまう。恋人のマティ(オーウェン・ウィルソン)はMLBワシントン・ナショナルズのピッチャー。セレブな生活をしていて、性格もわるくなく、ぐれるリサのアフターケアも良くしてくれる。しかし「これは!」とうものがなぜか感じられない。そんなときに友達の紹介で出会った青年実業家のジョージ・マディソン(ポール・ラッド)。しかし彼は仕事上のトラブルで詐欺容疑がかけられており人生の最低の次期を過ごしていた。そんな二人が初デート。しかし話し出せばため息とぐちしかでないような身の上話になりそう。そんな時リサは「今日の食事は一切何もしゃべらないことにしましょう!」と提案。黙々と出された料理をたべる二人。そんなリサにジョージは惹かれていく。 そしてこの映画のブルックス・サーカスは、主人公ジョージのアシスタントだった女性の出産祝いに駆けつけたときの会話。実は彼女はまだ結婚していなくて、その理由はその相手の男が失業中で自信がもてないというものだった。しかし、子供の出産を機にプロポーズする。ジョージはビデオを渡せれ、決定的な瞬間を記録してくれと頼まれる。そしてプロポーズの言葉。これがめっちゃ感動的なのだ。おお、さすがブルックスと思っているとさらに追い討ち。実はジョージがこの録画を失敗していることが判明。その場に落胆の空気がながれる。「今のシーンを再現しましょう、あとで編集すれば大丈夫よ」というリサ。そして全員で、どんな言葉を口にしたか今一度思い出してく。最初はコメディ的な展開でばたばた演出だったのだが、そのシーンの終わり頃にはじわあ~~~んと感動してくるのである。 ジェームス・L・ブルックスの映画にはかならず一度はシナリオ・サーカスがある。『ブロードヤスト・ニュース』の時は、リビアをアメリカの戦闘機が空爆したとうニュースが飛び込んでくる。そのとき自宅待機だったアルバート・ブルックスは以前カダフィーに取材の取材をしたころもありリビアのことにはけっこう詳しい。彼が本番ニュースの最中にニュース番組の現場責任者であるホリー・ハンターに適切な情報を電話で連絡すると、それを彼女がまとめてキャスターのウィリアム・ハートにしゃべらせるというもの。ここの展開もスリリングですばらしいシーンだった。 『スパングリッシュ』のときは、スペイン語しか話せない主人公のフロールが親切でお金のあるアダム・サドラーのハウスキーパーとして雇われ、その休暇にも娘をつれて帯同することになる。アダム・サンドラーはとってもやさしい主人であり、彼女の娘もゲストとしてこころよく迎えてくれるのはいいが、自分はその家の使用人であり、自分はその家では下級の扱い。しかし娘はその家のものと同等にとして捉えられているギクシャク感をアダム・サンドラーに伝えようとするのだが、自分は英スペイン語しか話せない。なので英語が話せる娘に通訳してもらいながらそれをつたえるのだが、内容があまりにデリケートであり、娘には聞かせたくないこと。なのにそれを娘に通訳してもらわないいけない。ここの会話劇もすごかった。 天才とはこういう人のことを言うのだろうと思った。 ・・・・・しかし、さいげない疑問がひとつ、 この物語で彼女がソフトボールのプレーヤーだというコンセプトが必要だったのだろうか? ないとだめなのだろうけど、でもあまり有効利用されてるとは言いがたいかも(苦笑)。
by SSM2438
| 2011-02-17 12:26
| J・L・ブルックス(1940)
|
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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