西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 12日

男はつらいよ36/柴又より愛をこめて/栗原小巻(1985) ☆☆

男はつらいよ36/柴又より愛をこめて/栗原小巻(1985) ☆☆_f0009381_17293825.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:
渥美清 (車寅次郎)
美保純 (桂あけみ)
栗原小巻 (真知子)

       *        *        *

この話のマンドンは、実は美保純のほうでしょう。

美保純扮する桂あけみは33作目の『男はつらいよ・夜霧にむせぶ寅次郎』から登場しているキャラで、隣の印刷工場のタコ社長の娘である。いつも新婚の旦那と喧嘩して《とらや》に来てはあくたいついたり、寅さんにあまえては帰っていくといういいキャラである。なんだかんだいいつつ、《とらや》の面子では「見たい!」っていう気になかなかさせてくれないので、その点美保純がいると、それだけで見たいと思ってしまう。良いキャラを補充したなというの感じだ。

そのあけみが今回はついに夫婦喧嘩の結果家出。そのあけみを連れ戻す指名をおびて下田までやってきたのが寅さんであった。
飲み屋でバイトしながらやているあけみをみつける寅次郎。一緒に帰ろうというとダダをこねられ、仕方がないので「帰りたくなるまで一緒に旅でもするか」ということになる。そんな寅次郎の言葉に「あの島にいってみたい」と彼女が指差したのが式根島。伊豆諸島のひとつで、下田と三宅島の間にある新島のちょっと下にある島。島には空港はなく、空路を利用する場合は、隣の新島の空港に降りてそこから船で式根島に渡ることになる。
その式根島へ渡る船の中で知り合ったのが20代後半のグループ。彼らは同級生で、同窓会のために島にもどっているとうのだ。彼らの先生が真知子先生(栗原小巻)で、一緒に同窓会に御呼ばれして先生と仲良くなってしまうというのが今回の展開。

実質的にマドンナが二人いるのでなにかと厄介なつくり。
島につくとあけみはほとんどおいてけぼり状態。寅次郎は真知子先生を囲む会に参加しあけみは一人で夕食を食べることに・・・。さびしい。しかしそんなあけみにも山田洋次は男を用意してある。島の青年があけみにやさしく、島を案内してあげたりする。海岸ぞいの岩場で温泉がでているというところに案内してあげると、勢いのいいあけみは露天風呂につかって一服。後姿のヌードを疲労してくれる。ごちそうさまでした。そんなこんなもあり、島では寅さんに相手にされてなくてもけっこういいムードのあけみであった。

一方同窓会の連中が帰った後の真知子先生はちょっとさびしいモード。そんなときに寅次郎が心の補完をしてくれる。真知子先生のシチュエーションはまさに『二十四の瞳』で、その映画にあこがれて当時、水道もとおってなかったこの島に赴任してきたという。同窓会のとき真知子先生にみんなが自転車を上げるのは実に『二十四の瞳』のおなご先生のシチュエーションを思わせてしまう。こういう小道具があると、ついつい『二十四の瞳』感動までなんとなく引き連れてくるから不思議である。

ここでの寅次郎は「故郷のにおいを運ぶ人」という立ち位置。真知子先生も葛飾あたりの人らしく、帝釈天も《とらや》も、《とらや》の草団子も知っているという。ドラマのとうのは不思議なもので、故郷のにおいを語り始めると実になごむのである。坂元裕二脚本の『東京ラブストーリー』でもカンチが故郷の愛媛県のことをかたるときはとても幸せそうなのだ。異国の地で故郷を語れれる人との出会いというのは、それだけで親近感をもたせてくれる。

しかしそんな二人の時間もあけみが「帰る」と言い出し終了。あけみは島の純朴な青年と仲良くなってきてたのだが、良いムードになりすぎて彼に「島の娘になってくれないか」とプロポーズされてしまったのだ。「ごめん、わたし、こんなんだけど人妻なの」って逃げるように旅館に帰ってくるあけみ。「あたし、あの人傷つけた」と寅次郎の胸でなくあけみ、「だって寅さん、なんにも聞いてくれないじゃない」とつづける。個人的には栗原小巻とのエピソードよりも、この美保純のエピソードのほうがなんか切なかったのだけど。。。

真知子先生も休日を利用して東京にやってくる。実は死んだ彼女の友人が残した娘の誕生日には必ず東京に帰ってきていたのである。その死んだ友人の夫からプロポーズされる。結局この男と結婚することを決意して終わるのだけど・・・、「死んだ友人の娘」というのがもうひとつインパクトにかけたかな。
これが、死んだ姉の娘で、実は真知子も姉の夫をずっと好きだった・・的な展開にしてほしかった。実はみているときはきっとそんな展開で、彼女のなかにもその男のことを求める欲求があるのだと思っていたら、実はただの友達の旦那というだけで、それほど彼のことを想っているわけでもなさそうだった。ちとさびしい。

結局この栗原小巻がらみの話というのは、子供のころにみた『二十四の瞳」にあこがれて式根島に教師として来たけれども、そこでは恋愛もさほどないまま歳をとってしまった。そんなとき真面目だけがとりえの男からプロポーズされて、ロマンチックな憧れはもうおわりにする踏ん切りをつけたという話。

by SSM2438 | 2011-03-12 11:33 | 男はつらいよ(1969)


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