西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 18日

男はつらいよ30/花も嵐も寅次郎/田中裕子(1982) ☆☆☆☆

f0009381_11593746.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:
渥美清 (車寅次郎)
田中裕子 (小川螢子)
沢田研二 (三郎青年)

       *        *        *

個人的には寅さんシリーズベスト1である。
きっと反対意見は多いだろう(苦笑)。

見た目はハンサムだが、自分に自信がなく対女性関係はまるで駄目な男が、寅さんのプッシュもあってめでたく好きな女性と結婚するというお話。
そのハンサムだが自信のない男を沢田研二が演じ、彼が恋する女性を田中裕子が演じている。実生活でもこの映画がきかけとなって付き合い始め(当時沢田研二は既婚)、7年後に周囲の反対を甘んじて受けながら結婚することになる。

とにかく田中裕子がめっちゃかわいい。『夜叉』のときの田中裕子もかわいいが、この映画の田中裕子もそれに勝るともおとらないくらいかわいい。おまけに「螢子」という名前がいい。今回は和服ではない現代風の女性。白いセーターにジーパン、黒い髪を長く伸ばして遠くから見るとむちゃくちゃエレガント。しかし近づいてみるとこれが恐ろしいほどのあどけなさがあり、なおかつそこに大人の色気があるという魔性を感じるかわいさです。この人のかもし出すあの空気感はすばらしい。日本映画の至宝のひとつですね。

3人の出会いはこのようにして始まる。
東京の同じデパートの同僚・小川螢子(田中裕子)と一緒に九州を旅行中のゆかり(児島美ゆき)は、大分の温泉町・湯平でハンサムな男を発見、その男(沢田研二)の入っていった旅館にその日は泊まることにする。実はその旅館、寅次郎(渥美清)のなじみの場所であり、寅次郎もその旅館に泊まることにする。夜は宿の主人と晩酌を楽しんでいた寅次郎。そこにさっきの二枚目青年が現れる。彼は三郎といい、昔ここで女中をしていた女の息子だという。生前三郎のははこの旅館の思い出をかたっていたため、納骨のまえに母のゆかりの旅館に足を運んできたのだ。その話に感動した寅次郎は彼女の知り合いの人をあつめ、坊さんを呼び供養をしてあげることにする。そこにたまたまひっぱりだされたゆかりと螢子。
そんなことがこの物語の始まりだった。

初登場のシーンではメガネをかけてあまり顔がみえない田中裕子だが、そのかもし出す雰囲気はとても素敵。めだたせないように演出されていてもやっぱり彼女を見てしまう。ぜいたく温泉につかるシーンもあるがヌードはみせてくれない。残念。一緒にはいっている児島美ゆきも『ハレンチ学園』などで有名でありヌードも疲労しているので、めずらしく二人で温泉につかるシーンくらいはいれたのだろう。
美保純のときもそんなもんだし。ま、彼女の場合はとりあえず後姿のヌードはみせてくれたけど。このシリーズではこのくらいのサービスが限界だろう。

翌日旅館を出るゆかりと螢子は寅次郎と一緒に駅までいくことになる。それこに納骨をすませた三郎がいっしょになり、しばし大分のサファリパークなどの観光地めぐりで楽しい時間をすごす。先に航路で東京にかえる二人を見おくる寅次郎と三郎。螢子は寅次郎との楽しい時間に去りがたい思いを残すが、三郎もまた螢子に一目ぼれしてしまい、別れぎわに「ぼくとつきおうてください」とぶっきらぼうに言ってしまう。戸惑う螢子はそのままホバークラフトにのり去っていってしまう。
「そんないきなりじゃだめだ」と恋の手ほどきをする寅次郎。あいもかわらず他人の恋愛には強気発言連発なのである。

今回《とらや》で家族団らんにひたるのはマドンナではなく沢田研二。いつも死んだ母とふたりでの食事だったので、《とらや》のにぎやかな団らんに幸せを感じる。彼はやがて帰り際に、螢子との出会いをなんとかセッティングしてくれないかとお願いする。
そんなわけで、珍しく自分から螢子の職場に電話をかけた寅次郎は、螢子とちょっとおしゃれなバーで飲むことに。再開をよろこぶ螢子。飲み屋の席での田中裕子もまためっちゃかわいい。この人の動きをみているだけで魅了されてしまう。しがし話が三郎のことになるとちょっと・・・・、「だって・・・二枚目過ぎない?」という螢子。

今回の寅次郎はアドバイザーとう立場なので決して降られることのない安全地帯の恋愛(←あえて恋愛と書く)なのである。三郎は螢子のこごが好きすぎてなにも言えない。そんな三郎が嫌いではないが、一緒にいてもチンパンジー(三郎は動物園の飼育係)の話しかしない三郎を見ているとどうしていいのかわらない螢子。そんな螢子は三郎よりも自分と一緒のときのほうが楽しく見える。それが寅次郎にとってはとても優越感を感じる幸せな時間でもある。
世間でもよく発生する状況である。付き合っている同世代の男女だが、いまひとつギクシャクして一緒にいてきもちよくない。そんな彼女にとっては、あまりがつがつしていない年上の男のほうがいっしょにいて居心地のいい。そんな男の心裏がとても素敵な映画なのだ。

そんな決して振られることのな安全地帯の恋愛スタンス、それがこの映画の寅次郎の立ち居地なのだ。しかし、それでも最後は沢田研二と田中裕子はひっつくのが物語の定め。絶対に切られないはずの立ち居地なのに切られる寅次郎。今回、ふたりがひっついたという話をきいて再び旅にでる寅次郎の姿には涙がでた。たぶんそれまでの話のなかでは一番ダメージでかかったんじゃないだろうか。他の話ではマドンナのほうから好意的に想われていても、結局最後はチキンで自分で降りてしまうパターンがほとんどだが、今回の話では自分のほうがナンバーワンだと思っていたのに、実はそうじゃなかったという圧倒的な優越感からの喪失感なのだ。

この映画はライト感覚な映画ではあるが、恋愛映画の超スタンダードであり、男心を繊細に謳った傑作だと思う。すばらしい!!!

by SSM2438 | 2011-03-18 23:28 | 男はつらいよ(1969)


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