西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 24日

男はつらいよ23/翔んでる寅次郎(1979) ☆☆

f0009381_10345711.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:
渥美清 (車寅次郎)
桃井かおり(入江ひとみ)
布施明 (小柳邦夫)
湯原昌幸 (旅館の若旦那)

       *        *        *

最後の結婚式はけっこうぼろ泣きできるのだが・・・。

ラストの結婚式の語り口はさすがに山田洋次の底力で感動の涙までもっていってくれる。泣ける程度だけいうならかなりこのシリーズのなかでもかなり泣ける映画に仕上がっている。・・・が、この桃井かおりが好きになれるかどうかだろうなあ・・・。

桃井かおりの魅力というのは、あの忍耐力のなさとふてぶてしいさと大胆さと生産性のなさと人生なげてるけだるさと根性のなさと感情のはげしさなのだ。これだけのキャラクターなのでインパクトはつよい役者さんなのだけど、早い話が「忍耐力のない人が感情にまかせて自分のわがままとおしてる」というキャラなので、生理的に好きになれない人もおおいだろう。私も好きではない。ドラマの中のキャラクターとしては個性が強いのでよいのだけど、実際にいると張り倒したくなるだろう。

あと、この映画でいいのは旅館の若旦那の湯原昌幸。おかしい。
物語のはじめで、ガス欠で困っている桃井かおりを自動車にのっけて、人気のない浜につれこみいかがわしい行為をしようとたが逃げられ、その場に寅さんにあい、暴行未遂の弱みにつけこまれ旅館の部屋をただで使わせてあげる小心者を演じているが、このキャラがなかなかたのしくて素敵だ。この映画のなかでは妙にきもちのいいキャラなのである。

<あらすじ>
北海道を旅する寅次郎(渥美清)はひとり旅の娘・入江ひとみ(桃井かおり)と知り合う。彼女はいいところのお嬢さんで、いいところの相手と結婚を控えているが、マリッジブルー状態で現実逃避したくてしかたがないのだ。なんとか寅次郎にときふせられて東京にもどり式をあげるひとみだが、まるで人形のようなあつかわれる自分にたえられなくなりウエディングドレスのまま式場を飛び出してしまう。
行く当てのないひとみがむかった先は《とらや》だった。長旅からかえってきていた寅次郎に抱きつくウエディングドレスの娘をみて仰天する《とらや》の面々。翌日ひとみの母が彼女を連れ戻しにくるが、帰りたくないというひとみを寅次郎はひとまずひとみを《とらや》でであずかることにした。さらにその翌日ひとみの婚約者だった小柳邦夫(布施明)もたずねてくる。邦夫は予想に反して好青年だった。

夢が壊れるのがおそろしく、いままで「好き」という自分の本心を暴露することが恐ろしいという男。いつもの山田洋次キャラがここでも登場する。そんな付き合いのまま結婚式までいたったが、女にしてみれば、相手の男からは愛情が感じられず、しかも結婚も、親の決めたレールの上をはしらされるように進行していくだけという感情をぜんぜん感じることが出来ない状態だったのだろう。そんな状況下ですべてが無意味に思われ脱走した女。それが今回のマドンナの桃井かおり演じるひとみ。
一度崩壊した形式的結婚式のあと、この二人の本質的結婚までのプロセスが描かれていく。

そんなこんなで、《とらや》にとりあえず住み、留学経験から英語を教えて自活しようとするひとみ。ひとみを悪く言う父に反発、家を出て、会社も辞めて、自動車工場でひとり働き始めた邦夫。邦夫の知らない一面を見てひとみは実は見えてなかったのは自分のほうだということが分かり始める。四畳半一間のアパートで自活している邦夫をひとみが訪ねていってからキスするまでの流れはとてもすばらしい。

貧乏くさくカップヌードルをすすっている所に、妹さんに場所をきいたというひとみがたずねてくる。てれくさそうにラーメンをすすりながらぼそという邦夫。「いままで一番大切なことを言ったことがなかった。君が好きだってこと」という言葉に感動し、ゆだねてもいいと思えたひとみは、すこしてれくさそうに「ねえ、キスして」という。キスするふたり。唇をはなしたあとひとみが「ふふ・・・ねぎ・・・、たべちゃった」っていって、再び幸せそうにもういちどキスする。
このシーンは素敵だ。

案の定寅次郎はひとみにほれ始めており、仕事でそれなりの売り上げがあったらしく、ひとみにネックレスなんか買ってきているが・・・、二人がもう一度結婚することが分かるとショボン。いつものように旅に出ようとするが、こまったことにさっき仲人を引き受けたばかりで逃げ出すわけにはいかない。

やがてひとみと邦夫の結婚式が区民会館の一室で、ささやかに行なわれた。ひとみの唯一の肉親として母親も出席、一方勘当されている邦夫の親族もきていないが唯一妹さんだけは顔をだしてくれた。寅次郎一世一代の仲人役は挨拶用紙をなくしててんやわんやだったが、一気の啖呵でガツンな挨拶をかまして場をもりあげる。そして邦夫の妹さんの言葉、ひとみの言葉、邦夫の弾き語りと涙ちょうだいシークエンス。さりげない言葉と芝居なのだが涙はぼろぼろ出てくる。
恐るべし山田洋次演出!

by SSM2438 | 2011-03-24 10:38 | 男はつらいよ(1969)


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