西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 31日

男はつらいよ1/倍賞千恵子・光本幸子(1969) ☆☆

f0009381_15192454.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/森崎東
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:
渥美清 (車寅次郎)
倍賞千恵子 (さくら)
前田吟 (諏訪博)
森川信 (おいちゃん・車竜造)
三崎千恵子 (おばちゃん・車つね)
太宰久雄 (タコ社長)
笠智衆 (御前様)
光本幸子 (坪内冬子)
志村喬 (諏訪博の父)

       *        *        *

登場人物みんなA型映画はこの1本から始まった!

この歳になってやっとみました『男はつらいよ』第一作。
うむむむ・・・なるほど、これがオリジナルだったのか・・・。

このシリーズのどれをみても感じるのが「登場人物はみんなA型だなあ」ということ。監督の山田洋次がA型なのだがらそうなるのは当たり前のところ。そのA型気質の理想と現実が如実にそれぞれのキャラクターに振り分けられている。そのなかで寅次郎というのはA型さんが描くひとつの理想なのだろう。O型の理想ではない(私はO型)。おそらくB型・AB型の理想とは全く違う。A型さんだけが思い描く切なる理想なのだろう。《とらや》の人々というのは、気を使いすぎるほと気を使う人たちばかり。そのなかで寅次郎だけが気を使わない。「気を使わない」というより、「気をつかうポイントとタイミングが他の人とことなる」というほうが正しいだろう。なので明らかにA型さんであることは間違いない。
しかしこの1作目ではその気を使わなさが如実にでているので、みていてかなり不愉快。この点はのちのち改善されていき、人に嫌われない程度のリアクションとして演出されるようになる。

この物語の主人公「車寅次郎」というのは、父親、車平造が芸者、菊との間に作った子供。実母の出奔後父親のもとに引き取られたが、16歳の時に父親と大ゲンカをして家を飛び出したという設定。祭礼や縁日における参道や境内や門前町などの露店の商売人(的屋/香具師)として全国を渡り歩いている。
カバンひとつでどこにそんな売る品があるのだ?と思い調べてみたら、なんでも露店やそこで売る品々は祭りの主催者が用意するもので、寅次郎のような的屋/香具師が売人として雇われる・・という仕組みらしい。

「お控えなすって! 私、生まれも育ちも葛飾柴又・・」から続くいつもの言葉は、江戸時代から続く無宿者が宿をとるときの言葉で、自分が何者なのかを示す言葉であリ、彼らをサポートするコミュニティに自分を示す唯一のIDだった。一言一句つまることなく最後まで話しきらないといけなかったらしい。その風習を今風にアレンジしたのが寅さんの自己紹介の言葉である。

この物語で思うところは、ほかのところでも書いたが、とにかく泣かせまでの構成が綿密に練られているところ。そのシーンにくると一気に涙が溢れ出すのだ。たぶん、そこだけ見た人だとそこでは泣けないだろう。一見「なんでこんなところでこんなに涙がでてくるのだ」とおもうくらい、観ている私も不思議なくらいである。今回は博とさくらの結婚式。そして博の父親が語ってからの寅さんのリアクションからどおどどどどどどどどどどど。
山田洋次演出の泣かせの美学は、それまでひたすら気づかれないように下準備して、あるポイントで風穴をひとつ開けるとそこからから堰を切ったように涙を誘導する。

16歳の時に家を出た寅次郎は、それから20年ばかり家にも帰っていない。でこの映画の冒頭でやっとこさ故郷へ帰ってくる。既に父は死に、残された妹のさくらは叔父夫婦の《とらや》という団子屋で育てられていた(ちなみに母は寅次郎が子供の頃家出している。『続・男はつらいよ』で母親との再会がなされる)。
今回さくらと結婚する博(前田吟)は親とけんかして家をとびだしたきり8年間音信普通だったという状態。そんな博の父親(志村喬)が結婚指式披露宴にあらわれる。言葉もない不穏なムード博。他の人が盛り上げている広縁でも、博の両親は無言のまま。寅次郎も敵意むき出し状態。そんな博の父が最後の親族からの挨拶ということで語る場に登場する。8年間親としてなにもしれやれなかったという無念の想いを言葉少なげに、いつものようにぼそぼろ語る志村喬。最後に「さくらさん、博をよろしく、お兄さん、ふたりをよろしく」とふかぶかと頭をさげると、それまでぶすっとして聞いていた寅次郎が、「ありがとうな、おとっつぁん、おっかさんも」というところから一気に涙。塗りこんだ下準備のたまものである。

ちなみにマドンナ役は御前様の娘坪内冬子(光本幸子)。きれいである。本編においてはほとんど妹さくら(倍賞千恵子)のほうがマドンナみたいなものなので、冬子とのエピソードは軽めに処理されている。

のちのちよくつかわれる「ばたああああああ」はここで既に登場している。しかもあれは寅次郎がオリジナルではなく、御前様(笠智衆 )がオリジナル。写真を撮るときに御前様が「チーズ」と勘違いして「ばたああああああ」と言うのだが、のちのち寅次郎もそれをコピーして写真にうつるときはやたらと「ばたあああああああ」と言ってしまうようになる。

<あらすじ>
20年前に親父と結果して家をでた車寅次郎(渥美清)がふるさとの葛飾柴又に帰ってくる。妹さくら(倍賞千恵子)と再会をはたした寅次郎は、翌日さくらの見合の席へと出かけていく。しかし相手会社社長の息子、慣れぬ作法に大失敗、さんざんビールを飲みまくり、柄のわるさを露呈し縁談をこわしてしまう。いたたまれずに、また旅にでた寅次郎は、奈良でお寺巡りをしている柴又帝釈天の御前様と娘の冬子(光本幸子)に会い一緒に帰ってきてしまう。
やがて隣の工場で働く職人・博(前田吟)が「さくらさんが好きです」という。博の真剣さにうたれ寅次郎が何とかしてやろうとしたものまたまた失敗。博が工場を辞めて出て行こうとするところをさくらが呼び止め一気に結婚の流れになってしまう。

山田洋次演出で涙をさそったと、ささやかながら冬子とのからみ。さくらの結婚の後の寂しさを、冬子の優しさに慰められていた寅次郎ではあるが、冬子が結婚することになっているのを知り、ふたたび旅立つのだった。

結婚式の泣かせのポイントは実に上手いのだが、それまでの寅次郎に関してはかなりうざい。正直なところ途中で何度となく観るのをやめたくなったのも事実。結婚式演出で涙をさそったが、前半部の寅次郎の不愉快さはかなり根深く、トータルでなんとかチャラになった感じだった。

by ssm2438 | 2011-03-31 15:20 | 男はつらいよ(1969)


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