西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 13日

男はつらいよ35/寅次郎恋愛塾/樋口可南子(1985) ☆

f0009381_1919790.jpg監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純

出演:
渥美清 (車寅次郎)
樋口可南子 (江上若菜)
平田満 (酒田民夫)
美保純 (桂あけみ)
ポンシュウ (関敬六)

       *        *        *

ネタ切れ深刻。シリーズ制作崩壊状態。

『寅次郎夢枕』(シリーズ第10作)と『花も嵐も寅次郎』(シリーズ第30作)を足して2で割って、あたまに小数点をつけたような出来である。

ストーリーは『花も嵐も寅次郎』に似ているのだが、根本的な違いは寅次郎の想いだろう。田中裕子にとって居心地のいい男という立場をキープしながら、彼女がトラブルと自分を求めてきてくれる充実感。永遠の2番目なら永遠の付き合いが出来る。その充足感と、心の奥にひめたそれでも燃えてる想い。その微妙なバランスがとてもいいのだが、この『寅次郎恋愛塾』においては記号的な配置と形式的なストーリー展開だけであり、寅次郎の想いの浅さがいただけない。さらに、さえない平田満と最終的にひっつくことになる樋口可南子のメンタリティもまったく不可解。
後半はポヨォ~~~~~ン連発、はちゃめちゃナンセンスコメディになりやっつけ仕事っぽくなってしまった。どんなに段取りがよくても、終わりがダメなら総てダメという見本のようが映画である。

しかし、前半部はしっぽりと作ってあり後半の展開次第では良い作品になる可能性はあった。
寅次郎の的屋仲間・ポンシュウがおばあちゃん相手にやたらと頑張っていた。高感度アップである。
就職のための面接の樋口可南子と面接官のやりとりは、短いながらもとても素敵だった。
それと、いつもながらちょっとしか出ないのだが、あけみ(美保純)が出るとやっぱりみていて楽しい。この人の健康的な色っぽさは『男はつらいよ』の中において、実は超貴重な存在だったのだ。もうすこしストーリーの本質にかかわる話をふやせれば、このシリーズもここまで崩壊することはなかったのに・・・。

平田満さえこの物語からはずせば良いものが出来たとおもう。
一度も登場させずに、ずっと若菜を想っている男がいた。でもある日を境にいなくなってしまった。なぜ? 気にし始めると、いつもさりげなく自分のことを大切に想ってくれた間接証拠がぽつぽつ出てくる・・・みたいな。

<あらすじ>
長崎の五島列島にやってきた寅次郎(渥美清)とポンシュウ(関敬六)は、防波堤に座って昼飯を食べていると、腰のまがったおばあちゃんがよたよたと歩いているのをみとめる。するとその老婆がころんでなかなか起き上がれない。あわれてかけより、ポンシュウが老婆をおんぶして彼女のうちまでつれていってやる。ちょっとあがっていけと焼酎なんぞをいただいた二人は上機嫌。珍しい来客とポンシュウのやさしさにおばあちゃんもいつになく楽しそうだった。しかしその夜、そのおばあちゃんが息を引き取る。そして孫娘の江上若菜(樋口可南子)が東京から飛んで来た。
後日柴又にもどった寅次郎のもとに、おばあちゃんの最期はどうだったのかききたいという江上若菜から手紙がきていた。宛名をたよりに若菜をアパートをたずねる寅次郎。寅次郎の話から、おばあちゃんの最期の夜はとっても楽しい夜だったことを知り、涙する若菜。
そんな若菜は有名な印刷会社で働いていたのだが、今回の葬式のことで有給休暇をとうろとしたらそれが会社の上司と対立のもとになり、勢いで会社を辞めてしまったという。《とらや》に帰った寅次郎はさくらや、博、タコ社長らに就職の当てはないかと探してもらう。
そんな若菜に恋をする酒田民夫(平田満)。彼は若菜と同じアパートの1階にすんでいて、司法試験をめざして勉強しているのだが、若菜のことを想うと勉強も手がつかない。そのことを知った寅次郎が、若菜にそのことを放すと彼女は「知ってるわ」と言う。その口調から実は若菜もまんざらではないらいしと感じた寅次郎は、アレンジメントデートを画策。3人で映画にでもでかける予定をたてるが、当日寅次郎は腹痛で来れないというシチュエーションを設定する。若菜もそのことはうすうす気づいているのだが、その流れにのってあげる。

・・・ここまではまあ良いのである。ここから最悪。
デートのあとアパートに帰ると、「おちゃでも入れるわ」と部屋によんでくれる若菜。さらに「いつかはこんな日が来るんじゃないかなって思ってた。今晩泊まっていってもいいのよ」という。「私初めてじゃないし・・」と言って過去の体験もさらりと公表、おそらく女性体験はほとんどないだろう民夫を落ち着かせようとする台詞もなかなか良いです。問題はそこにいたるまでの根拠がまるで伝わってこないこと。なのでいい台詞も突拍子もない台詞にきこえる。
しかし・・・・民夫は寝ている。最低男。
以下、絶望した民夫は故郷に帰り、睡眠薬をもって野山をさまよう。心配して寅次郎と大学の先生、そして若菜が追ってくる。みんなで山にはいり民夫を探し無事みつける。

この流れをはちゃめちゃコメディでやるからげんなり。はあ~~~~~ん??である。
ここで若菜が、それでも民夫でもいいなと思うようになったきっかけなどが、描かれれば物語としては成立するのに、そんなこともないまま、シャローなコメディ展開。さえない男が理由もなく美人の惚れられるというありえないファンタジー話に成り下がってしまった。

by ssm2438 | 2011-03-13 09:24 | 男はつらいよ(1969)


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