2011年 03月 11日
監督:山田洋次 脚本:山田洋次/朝間義隆 撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純 出演: 渥美清 (車寅次郎) 志穂美悦子 (島崎美保) 長渕剛 (倉田健吾) * * * 大空小百合に、寅次郎を「寅さん」と呼ばせるな! そこは「先生!」だろう。 思い起こせばシリーズ第8作目、『寅次郎恋歌』の冒頭で登場した坂東鶴八郎一座。雨の降る日。客足もなくその日は公演中止となり劇団員稽古に励んでいる。そんな雨の中その劇場を訪れたのが寅次郎。その寅次郎を駅(宿だったかも?)まで傘をさして送っていってくれたのが当時15~16才くらいの座長の娘・大空小百合(岡本茉利)。本名・島崎美保。 その後この坂東鶴八郎一座は第18作、第20作、第24作、に登場し、映画の終盤、旅先を行くおわった寅次郎を車に乗せて去っていくのである。 で、このシリーズ31作目『幸せの青い鳥』ではその大空小百合こと島崎美保がマドンナとして登場する。なので今回は寅次郎の恋愛というのとはちょっとちがう。どちらかというと自分の娘をおくりだしてやる父親のようなモチベーションなのだ。 しかし・・・、それまでの小百合がアンパンマンのような岡本茉利だったが、今回は志穂美悦子。松坂慶子顔なので、どうにもそれがそのキャラだとは気づかなかった(苦笑)。おわりまでみて、あれ、もしかして・・???ってネットでしらべてみたら、ああああああああ、あのときのって分かった。これはかなりの寅さん映画しか分からないところだろう。 わからなくてもいいのだけど。。。 その娘が東京に出てきて恋をするのが、絵描きを目指しつつ映画の看板を描く仕事についている倉田健吾(長淵剛)である。 正直はところ、この映画自体はそれほど底が深いドラマではなく、シリーズをとおしてみても、それほどどうという映画ではない。しかし、絵描きがドラマの中にあると、やっぱりついついこだわってしまう。勝手にそのキャラクターのバックボーンを想像できてしまうので、映画のなかで説明がなくても自分の想像だけでドラマが出来あがってしまうのである。 絵描きは常に、自分の描きたいものを描くが、世間で受けるもの描くか、その二つのベクトルの狭間で苦悩する。絵描きである以上、自分を主張したいが、それを主張すると世間からは受け入れられない。だいたい「自分とは何か?」というシンプルな問題の答えは、「その他大勢ではないもの」になってしまうのだから。 世間にうけいらられる画家には、「迎合力」というものが生まれつきあるように思う。印象派のなかでもっとも世間にあいされたのはルノワールだっただろう。私としてはそれほど彼の絵が面白とは思わないが、自分が描きたいモノと、世間が見たいものとが近い位置にあったのが当時のルノワールだった。本人はそれに迎合したわけではないのだろうが、生まれつきもった感性がそれを受け入れやすい気質だったのだろう。でも、自己を主張したい人はそうはいかない。つねにそうでないものをついつい求めてしまうのである。これが絵描きにかぎらず、小説かも、作曲家も、映画監督も、大衆を相手にする人はみんなそうだ。 この長渕剛演じる看板屋もそこで苦しんでいる。 絵を描く人の逃れられない宿命だ。 <あらすじ> 九州の筑豊を旅する寅次郎(渥美清)が、坂東鶴八郎一座の座長の家をたずねると、すでに座長は亡くなっており、清張した一人娘の美保(志穂美悦子)と出会う。最初は誰か分からなかった美保だが、それが「先生」だと分かると懐かしさがあふれ出てくる。 「東京に出て来るようなことがあったら葛飾柴又帝釈天参道のとらやを訪ねな」と告げ別れる寅次郎。それから数ヶ月して寅次郎が故郷の柴又に帰ると、何回か女のひとから電話があったことを知らされる。美保が東京に出てきているのだ。《とらや》に下宿し、柴又のラーメン屋ではたらくことになる美保。彼女のおかげで店は大繁盛。そんな美保の生活を安定させてやるには誰かいい人をみつけてやらないと、美保の婿候補をさがす寅次郎。しかし美保にはきになる男がいた。 看板屋で働いている倉田健吾(長淵剛)という青年だった。《とらや》をたずねる前の晩、ちんぴらに絡まれていたところを健吾に助けられた美保は、一晩彼の部屋にとまることになる。健吾は徹夜で映画の看板を描いているのでベットをつかっていいと言われた。ぶっきらぼうだが誠実で、同じ九州出身だということもわかりひそかに好意をもった美保は、再び健吾を訪ねる。しかし健吾は、自分の描いた絵がまた落選し、しょぼくれていた。やさしくしてくれた美保をベッドに押し倒してキスをしてしまう。しかし美保に拒まれあえなく玉砕。 それから数日後、《とらや》を訪れる健吾。団子とビールを飲む健吾をみて「どうした青年、失恋したのか?」と声をかける寅次郎。失恋話を聞いているうちにその男の誠実さを感じる寅次郎。やがてその青年の失恋したあいてが美保だと分かる。そこに美保が《とらや》に昼飯の出前を届けにきて鉢合わせ。さらにこじれて喧嘩わかれのようになるのだが、「あの青年も美保ちゃんのことが好きだし、美保ちゃんも彼が好きだ。追え」といって美保を店から送り出す寅次郎。
by SSM2438
| 2011-03-11 05:21
| 男はつらいよ(1969)
|
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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