西澤 晋 の 映画日記

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2011年 03月 31日

『男はつらいよ』というシリーズ

f0009381_2325833.jpg<作品の概念>
この映画は、何かを成し遂げるというようなヒロイックな主人公が出てくるわけではありません。常に現実と妥協して生きている人たちの話です。ほとんどの人はやりたいことがあっても、「やりたいなあ」どまりで、「やるんだぞ!」っていう強い意思のもとに何かを完結することなどありません。そういう人たちが劣等感を抱かないように作ってある映画といっていいでしょう。
また、監督である山田洋次がA型であることから、登場人物総てがA型にみえるドラマといっても過言ではなありません。昭和前期の価値観をもとに、A型さん独特の<気の使い方>を面白可笑しく、時には切なく悲しく、そしてクライマックスでは秘めたる感情を解放するように描かれています。

<車寅次郎という人物>
性格はA型特性の極大値を具現化したキャラクターである。風来坊ではあるが、自分の所属している社会への従属感と感謝の気持ちを非常に大事にしている。忍耐の限界値が非常に低く設定してあり、A型さんが心の底にもっているささやかな夢=「出来れば我慢したくない!」を実行してくれる。

寅次郎の職業は「テキ屋」である。「香具師」、または「三寸」とよばれる。
全国を旅し、祭りや縁日などが催される境内や参道、門前町において屋台や露天で食品や玩具などを売る大道商人である。調べてみるとこれらの露店やそこで売る品々は、祭りの主催者が用意するもので、寅次郎のようなテキ屋と呼ばれる人々は、祭りを盛り上げるための「華やかさ」「にぎやかさ」「威勢の良さ」を提供・演出するのが仕事であり、祭りの主催者に日割りで雇われていて、露店の売上でもうけているわけではないらしい。

<物語のはじまり>
父親、車平造が芸者・菊との間に作った子供。16歳の時に父親と大ゲンカをして家を飛び出し、20年ぶりに異母妹さくらと叔父夫婦が住む、生まれ故郷の東京都葛飾区柴又・柴又帝釈天の門前にある草団子屋に戻ってくる。

1作目では父とのわだかまりの解消、2作目では実母との関係再構築がテーマになっている。
しかし既に父は死んでおり、本来わだかまりの解消などできるわけもないのだが、同じ境遇の人物・諏訪博(妹さくらと結婚し、義弟となる)とその父との確執を解消することで、自分の父へ抱く憎しみを浄化している。
シリーズ通して、この鏡面並列構成の作りが多用されており、その人の想いが成しし遂げられなくても、似たような別の境遇・シチュエーションを用意し、そこで昇華させるという手法を取っている。なので、表面的にはなんでもないのだが、なぜか心の奥底で感動させられている。山田洋次のあからさまでない感動誘導術に感心させられることが多い。

作品が安定するのは、5作目『男はつらいよ 望郷篇』(1970)から。これをシリーズ第1作と考えて、それまでは試作段階と考えても良いだろう(笑)。1~4作目まではまだ手探りの状態であったようで、寅次郎の描写も、行き過ぎて不愉快になることもはなはだ多い。また、登場するマドンナへの想いも浅いところで推移している。

以下、「全部見るのは大変」という人のためにポイントになる話を整理してみた。

<総合的にみた私のお勧め話>
シリーズ第8作  男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971)
シリーズ第11作 男はつらいよ 寅次郎忘れな草(1973)
シリーズ第15作 男はつらいよ 寅次郎相合い傘(1975)
シリーズ第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976)
シリーズ第21作 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(1978)
シリーズ第25作 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980)
シリーズ第30作 男はつらいよ 花も嵐も寅次郎(1982)
シリーズ第32作 男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎(1983)
シリーズ第39作 男はつらいよ 寅次郎物語(1987)

<若干の不具合はあるが、男と女の味のある捨てがたい話>
シリーズ第6作  男はつらいよ 純情篇(1971)
シリーズ第16作 男はつらいよ 葛飾立志篇(1975)
シリーズ第26作 男はつらいよ 寅次郎かもめ歌(1980)
シリーズ第28作 男はつらいよ 寅次郎紙風船(1981)
シリーズ第29作 男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(1982)
シリーズ第33作 男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎(1984)
シリーズ第38作 男はつらいよ 知床慕情(1987)
シリーズ第40作 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日(1988)

<出来は良くないが、観ておかないといけない話>
シリーズ第10作 男はつらいよ 寅次郎夢枕(1972)

       *        *        *

複数回登場するマドンナをまとめてみた。

<松岡リリー>
浅丘ルリ子演じるドサ回りのキャバレー歌手リリーは、マドンナとして4度登場。
シリーズを通して人気の高い話である。
シリーズ第11作 男はつらいよ 寅次郎忘れな草(1973)
シリーズ第15作 男はつらいよ 寅次郎相合い傘(1975)
シリーズ第25作 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980)
シリーズ第48作 男はつらいよ 寅次郎紅の花(1995)

<吉永小百合>
シリーズ第8作 男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971)
シリーズ第13作 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ(1974)

<大原麗子>
シリーズ第22作 男はつらいよ 噂の寅次郎(1978)
シリーズ第34作 男はつらいよ 寅次郎真実一路(1984)

<松坂慶子>
シリーズ第27作 男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎(1981)
シリーズ第46作 男はつらいよ 寅次郎の縁談(1993)

<竹下景子>
シリーズ第32作 男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎(1983)
シリーズ第38作 男はつらいよ 知床慕情(1987)
シリーズ第41作 男はつらいよ 寅次郎心の旅路(1989)

<後藤久美子>
シリーズ第42作 男はつらいよ ぼくの伯父さん(1989)
シリーズ第43作 男はつらいよ 寅次郎の休日(1990)
シリーズ第44作 男はつらいよ 寅次郎の告白(1991)
シリーズ第45作 男はつらいよ 寅次郎の青春(1992)
シリーズ第48作 男はつらいよ 寅次郎紅の花(1995)

<美保純>
タコ社長の娘・あけみとして登場、マドンナではないが貴重な存在。
シリーズ第33作 男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎(1984)
シリーズ第34作 男はつらいよ 寅次郎真実一路(1984)
シリーズ第35作 男はつらいよ 寅次郎恋愛塾(1985)
シリーズ第36作 男はつらいよ 柴又より愛をこめて(1985)
シリーズ第37作 男はつらいよ 幸福の青い鳥(1986)
シリーズ第38作 男はつらいよ 知床慕情(1987)
シリーズ第39作 男はつらいよ 寅次郎物語(1987)

<大空小百合>
坂東鶴八郎一座の女優、ちょい役だが忘れられないキャラ。
シリーズ第8作  男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971)
シリーズ第18作 男はつらいよ 寅次郎純情詩集(1976)
シリーズ第20作 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!(1977)
シリーズ第24作 男はつらいよ 寅次郎春の夢(1979)
シリーズ第37作 男はつらいよ 幸福の青い鳥(1986)

<マドンナではないが、志村喬編>
さくらの夫、諏訪博の父(志村喬)がからむと、ドラマがある種の重さをもってくる。
シリーズ第1作 男はつらいよ(1969)
シリーズ第8作 男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971)
シリーズ第22作 男はつらいよ 噂の寅次郎(1978)
シリーズ第32作 男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎(1983)

by ssm2438 | 2011-03-31 23:55 | 男はつらいよ(1969)


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