西澤 晋 の 映画日記

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2011年 04月 25日

仕立て屋の恋(1989) ☆☆☆

f0009381_20594429.jpg監督:パトリス・ルコント
脚本:パトリス・ルコント/パトリック・ドゥヴォルフ
撮影:ドニ・ルノワール
音楽:マイケル・ナイマン

出演:
ミシェル・ブラン (イール氏)
サンドリーヌ・ボネール (アリス)

       *        *        *

一人の女に恋をしている自分に酔ってる主人公の映画。

前半はヒッチコックの『裏窓』を思わせるサスペンスタッチ、でも、根本は男の独りよがりの恋愛悲劇。実に男らしい(苦笑)。

思えばパトリス・ルコントが登場するまでのフランス映画はドツボだった。60年代の栄光はどこえやら。80年代のハリウッドが良質のエンタメ映画を提供してくれるのにたいして、フランス映画は冬の時代をむかえていた。やたらと哲学をしてる振りのくっだらない会話劇、見るものといえばソフィー・マルソーヴァレリー・カプリスキーのオッパイくらいだ。
そんなドツボの時代の末期に現れたフランス映画の救世主、それがパトリス・ルコント。それまでかっこつけただけでひたすらつまらないフランス映画のなかで、心のにしみる映画を提供してくれた。それも、みていて気持ちがいい。お話は悲劇になるケースがおおかもしれないが、主人公が実に自分の酔って、幸せというか、充実しているので、結果的に悲劇に終わってもさほどの暗さを感じない。自分の酔いきった、自己完結の幸せがそこにあるのだ。
この自己完結&自己陶酔こそがパトリス・ルコントのすばらしさ。彼の描く恋愛映画の主人公はほとんどヒロインの女の子に惚れない。彼女に惚れている自分の惚れているのだ。女にしてみれば失礼な話かもしれないが、結局のところ男の恋愛というのはそういうものである。男は女のために恋愛しない。男はひたすら自分のために恋愛をするのである。

多分女からみれば、これは根暗な男の想い込み映画でしかなく、ほとんど燃える要素はないと思う。きっとこんな男には惚れないだろうし、もし惚れたとしても、精神的に安定をあたえてくれるといういあれです「いい人」君で終わってしまう。そんな映画をロマンチックにもりあげてくれるのが、マイケル・ナイマン。この人の音楽はでしゃばりすぎず、なおかつ官能的でいいですな・・。

そしてもうひとつ、この映画けっこう望遠で撮っている。もっとも、アパートの窓から隣の1階下のフロアのお姉ーちゃんの部屋をのぞいているのだがら望遠で撮るしかないのだけど、そうでないところもきわめて望遠レンズの力が如実にでてます。というか、小さい絵を嫌っている。ボーリング場なのどの描写でもよれるところまでズームで寄って撮っている。望遠好きの私でも、もうちょっとはなれろよって思うろころが数々あるくらい、望遠レンズ映画。
その方面で勉強するにはいい題材です。

<あらすじ>
中庭をはさんだ向かいに住む美しいアリス(サンドリーヌ・ボネール)の生活を、夜毎、電気もつけずにただ眺めることに幸せを感じる仕立て屋イール(ミシェル・ブラン)。そんな彼を刑事が尋ねてくる。イールは以前強制わいせつ罪で捕まったことがあり、近所でおきた殺人事件の容疑者の一人として考えられていたからだ。
しかし真犯人はアリスだった。
アリスの部屋に時々婚約者のエミール(リュック・テュイリエ) がその男をころし、アリスが処分を手伝った。そんなアリスが在る時、自分をみているイールの存在に気づいてしまう。最初ショックを受けるアリスだが、その男は死体を処理する現場をみているかどうか確かめなければならない。
そう、イールはそれも見ていた。知っていたが警察には黙っていた。初めはエミールを守るためにイールに接近したアリスだったが、徐々に彼の愛に心が揺れていく。
イールはアリスに一緒にスイスに逃げようと持ちかけるが、逆に裏切られ、濡れ衣を着せられる。しかし、イールがアリスと国外脱出する旨を語った手紙を前もって刑事に送っていたため、真相は暴かれることになる。

まったく・・・、こんな女になぜ惚れる。惚れる価値があるのか?っと思うかもしれないが、男はそういう生き物なのである。デイジーに惚れるギャッツビーのようなものだ。

by ssm2438 | 2011-04-25 21:00 | パトリス・ルコント(1947)


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