西澤 晋 の 映画日記

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2011年 05月 26日

友達(1988) ☆☆

友達(1988) ☆☆_f0009381_2211217.jpg監督:シェル・オーケ・アンデション
原作:安部公房
脚本:シェル・オーケ・アンデション
撮影:ペーテル・モクロシンスキー

出演:
デニス・クリストファー (ジョン)
ヘレーナ・ベルイストレム (次女・ボニー)
レナ・オリン (長女・スウ)

       *        *        *

スウェーデン映画なれど、これも安部公房。でも英語だったような記憶があるが・・気のせい???

レナ・オリンが出てたのと、安部公房の原作がスウェーデンという他国のスタッフでどのように作られるのか脅威をもって、当時劇場に足を運んだ作品。日本の安部公房ファンのなかでも、この映画を見た人はあまりいないと思う。あ、だんだんと思い出してきた。そうだそうだ、これカナダで撮ったとか、パンフレットに書いてあったような・・・。

パンフレットに書いてあった事をを徐々に思い出した。
この映画、実は監督は別の人だったようだが、シナリオと合わなかったのか、その才能がなかったのか、撮影を始めてもマトモに仕事もせず、結局シナリオライターだったシェル・オーケ・アンデションが監督までやることになったというエピソードがかかれていた。
多分ライターの人は、天下の安部公房の原作、それなりに想い入れがあったのだろう。しかし、監督の人にはその作品感が分ってもらえず、最後はぐれられて結局自分でやるしかなくなった・・ということなのだと思った。『砂の女』は全世界に衝撃を与えた映画であり、その前後につくられた安部公房の映画を知っている人なら、特に海外でその映画を見た人なら、あの独特の理不尽さの世界観を再現してみたと思ったとしても不思議ではない。きっとこのシナリオを書いたシェル・オーケ・アンデションもそんな想いが強かったのだろう。

映画を一言で言うと、なんの生産性も持たないパラサイト一家が、ヤッピー青年に巣食う話。表面的には理性的な人々のように見えるのだが、やってることは理不尽そのもの。巣食われたほうにとっては腹立たしいかぎりだ。

物語の主人公ジョン(デニス・クリストファー)は弁護士助手。大都会(トロントだったかな?)の中にそびえるガラス張りのこ高層ビルに一室を借りていた。彼には婚約者もいて、何不自由のない生活を愉しんでいた。そんな彼の部屋に、ある日突然窓ガラスを突き破りラジコン飛行機が飛び込んでくるところから不幸が始まる。
そのラジコン飛行機の持ち主であるというボニー(ヘレーナ・ベリーストロム)という少女が彼の部屋を訪れ、陳謝する。しかし彼女はワケありな様子。ついつい優しくしてしまったジョンは彼女を一晩とめて、いかがわしい妄想を愉しむ。そんな彼女は翌日、実は友達がいるのだが連れてきても良いかという。ささやかなスケベ心に支配されたジョンにはその言葉を否定する力などなかった。そしてその部屋を訪れた友達というのは、彼女の家族だった。
その日から彼女の家族はその部屋にいついてしまう。礼儀正しい印象の彼らだったが、道徳心などを逆手にとり、次第にジョンを支配権を奪っていく。警察に連絡するも警察に冷静で礼儀正しい客人たちを犯罪者年はみとめずい帰っていってしまう。彼らを泊めたことから恋人との関係も悪化、自分の家なのに、自分の決定権がまるでない状態に陥ってしまう。それでもボニーはジョンのことを想っているようで、なんとか彼女を引き子ふたりでこの環境から逃げ出そうと画策するジョンだったが、不覚にも姉のスウ(レナ・オリン)っと関係をもってしまい、さらにそのことをボニーにも見られ、ジョンの脱出計画は暴露されてしまう。拘束具を着せられ室内に軟禁されるジョン。もはやその世界の支配権は彼にはまるでなく、彼の世界はその家族に乗っ取られてしまう。
ある日一家が出かけた後で、留守番として残ったボニーに戒を解かれたジョンは、彼女と屋上に登り、そして幻覚のうちに身を投げる。「またおまえはやってしまったな・・」と父親に戒められるボニー。収入源たる主を失った一家はその部屋を去っていく。
数日後、次の獲物を狙った再びラジコンの飛行機が高層ビルの窓ガラスに突っ込む。

by ssm2438 | 2011-05-26 22:13


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