西澤 晋 の 映画日記

ssm2438.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2011年 06月 07日

Wの悲劇(1984) ☆☆☆

f0009381_917446.jpg監督:澤井信一郎
原作:夏樹静子
脚本:荒井晴彦/澤井信一郎
音楽:久石譲

出演:
薬師丸ひろ子 (三田静香)
世良公則(森口昭夫)
高木美保 (菊地かおり)

       *        *        *

「顔はぶたないで! 私女優なんだから!」

薬師丸ひろ子の写真をグラビアでみたときは、ドキッとした。ビュジュアル・インパクトは非常に強かった。まん丸顔にきりりとした眉。目もぱっちちして、丸だけで構成されてるのだけど、可愛くて図太そう。ただ、彼女が映画に出ると・・・・・・・いつも残念なことになっていた。ビジュアルのインパクトが強すぎるせいか、何故かドラマになじまない、そんな印象を覚えた。当時その対角にいたのが原田知世で、こちらは、ビジュアルインパクトはかなり弱い、どこにでもいそうな普通の子なのだが、ドラマのなかでみるとこれが不思議となじむのである。深津絵里的立ち居地だったのだろう。

インパクトありすぎるビジュアルのために、映画では今ひとつは馴染まなかった印象がある薬師丸ひろ子が、不思議とこの映画のなかでは、ドラマに溶け込んでいた。まず、薬師丸ひろ子の演じる主人公の立ち居地が普通っぽいのである。劇団員の一人という設定で、オーディションで落ちるということを普通に経験するのだが、そこからスキャンダルなどに巻き込まれながらものし上がっていくキャラクター。それまでの薬師丸ひろ子の印象とはまるっきり違う設定であり、このあたりから彼女が女優さんとしてほんとに機能しはじめたのだろう。

物語のなかでも、彼女の特別性がかなり排除された設定である。物語も「女優としての幅を広げるため、先輩の五代淳(三田村邦彦)と一晩過ごす」というところから始まる。アイドル=ファンの夢人であり、“H”をしてないイメージを構築しておかなければならない・・という前提をここでも壊している。それまで特別だった薬師丸ひろ子が、この映画の中では一女優として存在しているのである。
言うのは簡単だが、それを完成度の高いものとして残すことはかなりの指南の技である。しかし澤井信一郎はそれやっている。1985年の日本アカデミー賞では、『早春物語』『Wの悲劇』監督賞を受賞している。権威のない賞だが、澤井信一郎を選んだことは正しい。薬師丸ひろ子と原田知世というのは当時の角川が推していた二人のアイドルだったか、この2本の映画のなかでは、特別な存在年ではなく普通の役者として、物語にきちんと馴染ませていた。

原作は夏木静子。火曜サスペンス劇場などでもちょくちょく見かけるサスペンス系の作家さんである。脚本は 『遠雷』(1981年)や>『キャバレー日記』(1982年)の荒井晴彦。実は時々間違えるのだが、『天城越え』などの監督さんは三村晴彦、一緒ではない(苦笑)。

<あらすじ>
劇団「海」の次回作は『Wの悲劇』と決定した。キャストには劇団の二枚看板・羽鳥翔(三田佳子)、五代淳(三田村邦彦)と揃え、演出は鬼才で知られる安部幸雄(蜷川幸雄)に決まった。物語全体の鍵を握る女子大生・和辻摩子役は、劇団の研究生の中からオーディションによって選ぶことになった。三田静香(薬師丸ひろ子)もオーディションをうけるが、摩子役は、菊地かおり(高木美保)に決定した。
意気消沈して帰宅した静香は、とりあえず自分をかまってくれる森口昭夫(世良公則)と飲みに行き、その晩は彼の部屋に泊まった。静香の役は、台詞一つしかない端役だったが、全員の台詞を頭に入れ積極的に動いた。一方、昭夫は静香に結婚を申し込むが、静香は女優への夢を捨てる気になれなかった。大阪公演の初日の幕があがった。
そのあと静香はショッキングな事態にまきこまれる。羽鳥翔パトロンが、彼女の部屋で突然死んでしまったというのである。翔は、静香に自分の身代りになってくれたら摩子の役をあげると言い出す。最初は首を横に振っていた静香だったが、結局引き受けてしまった。マスコミの追求にも、静香はパトロンを失った劇団研究生という役を演じて乗り切っっていた。羽鳥翔は、かおりとの芝居の呼吸が合わない、と強引に彼女を降ろしてしまい、東京公演から静香が摩子を演じることになる。
東京公演は、大成功をおさめた。幕が降りた後も鳴りやまぬ拍手と、何度も繰り返されるカーテン・コールが女優誕生を祝していた。劇場を出た静香は、レポーターに囲まれているところに事件の真相を知ったかおりがナイフを手に静香めがけて飛びこんできた。静香をかばい刺される昭夫。傷が癒えた昭夫は「もう一度二人でやり直そう」というが、静香は、自分の人生を生きていくために一人でやり直すからと、涙をこぼしながら微笑んで去って行くのだった。

by ssm2438 | 2011-06-07 09:18


<< 麻雀放浪記(1984) ☆☆☆☆      早春物語(1985) ☆☆☆ >>