西澤 晋 の 映画日記

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2011年 07月 10日

櫻の園(1990) ☆☆☆☆

f0009381_15321158.jpg監督:中原俊
原作:吉田秋生
脚本:じんのひろあき
撮影:藤沢順一/竹内正樹

出演:
中島ひろ子 (演劇部部長・志水由布子)
宮澤美保 (2年生舞台監督・城丸香織)
白島靖代 (ヒロイン・倉田知世子)
つみきみほ (杉山紀子)
梶原阿貴 (久保田麻紀)

       *        *        *

女は1人だと不安になり、2人だと素直になり、
3人よると微妙になり、4人以上集まるとバカになる。


その描き分けが絶妙である。集団のなかでは、どうでもいい会話、本音を話さないための会話を連打しながら孤立感をさける女の会話がほとんどを占める中、ポイントポイントで、2人になったときに交わされる本音の会話がとても素晴らしい。

ドラマは女子高の演劇部のなかでの、「好き」な感情をみずみずしく描いているのだが、これ恋愛ドラマ/同性愛ドラマだと言うと間違いだろう。性的交渉があるわけではないのだが、それでも「好き」な人はいる。男子校なら在りえないことなのだが、女子高特有の宝塚に憧れる女子生徒間の恋愛、男に対して恋愛することに臆病な時代に、世間で言う恋愛というものを同性間でやってみる予行演習的恋愛、それを描いたドラマといっていいだろう。しかし、これがなかなかよいのである。

毎春、創立記念日にチェーホフの舞台劇『櫻の園』を上演することが伝統となってい私立櫻華学園高校演劇部の、その舞台開演までの2時間を描いた映画。物語は2年生で来年は部長候補の舞台監督・城丸香織(宮澤美保)が、演劇部の部室で彼氏と居ちゃいちゃしてるところから始まる。カメラがいきなりフカンからはいり、役者の顔もみえないまま延々長回しさせるのでなんじゃこりゃって印象わるかったのだが、カメラが水平ラインに降りてからは普通にみられた。
この城丸さんは男とすでに恋愛をし、キスなどしているので、通常恋愛に既に移行している人であり、このドラマの中ではニュートラルな位置のキャラクターとして描かれている。
このドラマの真の主役は中島ひろ子演じる3年生の部長の志水由布子。今回の『櫻の園』では小間使いの役をやることになっている。部活動の中心的人物だが、その日の朝は突然なにを思ったか、パーマをかけてきて他の部員達を驚かせる。

男目線であれば、パーマをかける=老けて見える、不細工に見える、キャバ嬢にみえるというネガティブな印象以外ないのだが、女性はそれを「大人びた行為」と理解するらしい。

そんなさりげない、しかし、校則違反を突然やってきた部長さんの小さな非日常から物語がころがりはじめる。そして主役を演じるはずの倉田さん(白鳥靖代)は時間なのにまだ姿を現さない。そして、さらに深刻さをます。部員の一人3年の杉山紀子(つみきみほ)が、昨晩補導されたことから、職員会議が開かれ、伝統の『櫻の園』んじょ上演も出来なくなるかもしれないという事態に発展していく。なんでも杉山は土曜の夜、別の学校の女友達と喫茶店でタバコを吸っていた所みつかり補導されたというのだ。

このつみきみほが登場してから物語りは俄然面白くなる。
中島ひろこがつみきみほに、どうしてそうなったのか?という状況を問いただす。この2人の時間がなかなか素敵なのである。
話をきいてみると、つみきみほが昔から仲の良かった女友達と喫茶店で話してると、彼女等がタバコを吸はじめ、そこを取り押さえられたため、彼女も一緒こたになって、「タバコをすってた」というくくりにされてしまったという。やがてその状況説明がおわったあと、なぜ、中島ひろ子がパーマをかけてきたのか?という謎解きがされていく。

「倉田さんにみてもらいたかったんでしょ?」

志水は部員で長身で花形部員の白鳥靖代が好きだったのだ。一瞬どきまぎする中島ひろ子だが、つみきみほの自然で誠実な態度に「そいう、倉田さんが好き」と告白してしまう。のちのち判明するのだが、つみきみほは実はこの中島ひろ子のことが好きでありいつも彼女をみていたので、彼女がいつも倉田さんのことをみつめていたことをしっていたのだ。

やがて『櫻の園』の上演は決定される。
おくれてきた白鳥靖代も舞台のまえのストレッチに余念がないが、実は彼女は、今回ヒロイン役をやるということになりナーバスになっている。出来るならこの舞台が中止になればいいとさえ思っていた。彼女はそれまでその長身のおかげで、ほとんど男性役ばかりやっていて、今回のように女性を演じることがなかったのだ。そんな自分が女を演じることへの屈辱感にもにた拒否反応が彼女の心のなかにあったのだろう。

そんな彼女のために中島ひろ子が用意した胸のかざり。これを白鳥靖代のドレスに縫い付けて、その糸を噛み切るときの中島ひろ子のしぐさがとても色っぽい。この映画のなかでは、こういったさりげないシーンの、色っぽさをクローズアップのスローで切り取った画面が非常に素敵なのだ。

中島ひろ子にこころをほぐされた白鳥靖代が、ふたりで記念写真を撮るシーンがある。
そして「私、倉田さんのことが好き」と告白してしまう中島ひろ子。「うん」としか応えない白鳥靖代だが、もう少し寄って撮ろうという中島ひろ子と一緒に、徐々によりながら一枚一枚、2人が一緒にうつった写真をとっていく。けっこううるうるきてしまう。さらにそのシーンをつみきみほがさりげなく見ているが、そっとみまもっているだけ。やがて2人を呼びに城丸さんがくるのだが、つみきみほがそこは制して、「舞台の時間だよ」と見えない位置から声だけかけるくだりが素敵。

そして忘れてならないのが、梶原阿貴演じる久保田麻紀の存在。感情にながされないクールな参謀、Mr.スポックみたいな役どころなのだ。他のキャラクターが理性と感情のハザマで揺れながら生きているのに対してこのキャラだけ冷静の人。常に正論を言う人。<その人自身>としてとしては存在してないので、誰からも非難されない人。一番卑怯な立ち居地なのだが、ドラマにはこういうキャラも必要だ。彼女の存在がいるからこそ、中島ひろ子、つみきみほ、白鳥靖代のドラマが際立ってきている。

実にみずみずしい映画であった。

by ssm2438 | 2011-07-10 15:32


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