西澤 晋 の 映画日記

ssm2438.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2009年 10月 11日

ミンボーの女(1992) ☆☆

f0009381_1802068.jpg監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本多俊之

出演:
宮本信子 (井上まひる)
宝田明 (総支配人)
大地康雄 (鈴木勇気)

       *        *        *

『マルサの女』につづく『○○の女』シリーズ、その第二弾。

『マルサの女』が日本映画界においてはスマッシュヒットとなった伊丹十三監督の、こんどはちょっとあぶなそうな次元につっこんだ映画。

「ミンボー」というの「民事介入暴力」、いわゆるヤクザの恐喝やいやがらせである。基本的に日本の警察は「民事不介入」の立場をとっており、こうした自体にはなかなか介入しづらかった警察庁が「民事介入暴力対策センター」を設置し、現実的な対応をし始めたのがこの頃。
ちなみにここに登場する主人公井上まひるは警察組織の者ではなく、ミンボーを専門に扱う弁護士さんである。

この映画の公開1週間後に、自宅の近くで刃物を持った5人組に襲撃され、顔や両腕などに全治三ヶ月の重傷を負う事件がおきた。警察は現場の車より山口組(稲川組)系後藤組の犯行で5年から6年の懲役刑となった。
それから5年後、伊丹プロダクションのある東京麻布のマンション下で遺体となって発見された。伊丹は当時後藤組と創価学会の関係を題材にした映画の企画を進めており実際1997年に公開された『マルタイの女』は創価学会を題材にしていた。創価学会関係者や後藤組組長の後藤忠政がそれを快く思わず、後藤配下の5人が伊丹の体をつかんで銃を突きつけ屋上から飛び降りさせたのが真相ともいわれている。

<あらすじ>
ヤクザにゆすられ続けるホテル・ヨーロッパはついに外部からプロを雇うことになる。それが民事介入暴力(民暴)を専門とする弁護士、井上まひる(宮本信子)であった。
まひるはヤクザ相手に経験と法律の知識を武器に堂々と立ち向かい、「ヤクザを怖がらない」ことを教えていく。なかなか脅迫に屈しないホテルに対してヤクザ側は街宣車を送り込む等の嫌がらせを行う。それに対してまひるは裁判所に不作為の申請をする等、一歩も引かず対処するが、ヤクザの「鉄砲玉」によって腹部を刺され重傷を負う。
まひる不在のなか、ヤクザは大挙してホテルに乗り込んでくる。まひるの教えを勇気をもって実行していくホテルマンたちは、決して脅しに屈することなく、逆に恐喝の言質を取ることに成功する。ヤクザたちは恐喝の現行犯で待機していた明智刑事率いる警官隊に一網打尽に逮捕された。


映画的にはきわめてスタンダードで、「弱きを助け、強きをくじく」、ドラマとしての基本ラインで構成されている。ヤクザの威圧にびびるホテルマンたち。浮気現場を隠し撮りされて弱みをにぎられるホテルの支配人。そんな人間的な弱みをもちながらも、ヤクザの嫌がらせに、法律をバックに戦う姿勢を描いた映画。
けっして悪いわけではないのだが、『マルサの女』の時ほど楽しさはなかった。もっとも、伊丹さんの映画、画面づくりにこだわったものであはなく、物語の語り口にで魅せる映画。この映画もそれほどシリアスにならないように物語を語っている。ただ、物語はある種のあんまり現実をみたくない要素をはらんでいる。

 それは、法律をバックに戦うことの有効性の問題なのだろう。
一つの解決方法としてアメリカの映画などでかたられるのは、ヤクザな連中に戦うにはクリント・イーストウッドを呼べ!みたいな解決方法がある。力には力を!というメソッドである。良くも悪くもこれは恒久的な対処方法なのだ。それに対して、今回この映画でとられ対処方は、法律をバックにして体力的に弱いものが、強いものに戦うというものである。夏名言い方をすれば、相手に理性が感じ取られるときにのみ有効な手段だということだ。
この物語なのかではあいては日本人のヤクザだった。そして日本に所属している以上、日本の法律を守らなければいけないという、ある種の潜在的な倫理をもっていそうな「悪役」だった。だから有効だったといえる。しかしこれが中国人マフィアだったら・・? あるいは、中東のイスラム圏のテロリストだったら??
そんなものが相手になったときに、このメソッドが本当に有効なのか?という疑問が捨てきれない。だからこの物語は、このように終わったからといってまるっきり気持ちよく楽しめないのだろう。

つまり・・・実力的に弱いものが、理屈の力を使って戦っても、あんまり嬉しくないのである。
そのことが我々の心のそこに絶対に存在する。それは実力のないものの劣等感であり、劣等感を感じながら理屈の力をつかっても、劣等感は払拭されない。
このことは、きちんと認識してみないといけない映画なのだろうなって思った。

by ssm2438 | 2009-10-11 18:00


<< ドア・イン・ザ・フロア(200...      恋愛依存症(2006) ☆☆ >>