西澤 晋 の 映画日記

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2011年 12月 12日

必死剣 鳥刺し(2010) ☆☆☆☆

f0009381_0455177.jpg監督:平山秀幸
原作:藤沢周平『必死剣 鳥刺し』
脚本:伊藤秀裕/江良至
撮影:石井浩一
音楽:EDISON

出演:
豊川悦司 (兼見三左エ門)
池脇千鶴 (里尾)
岸部一徳 (津田民部)
吉川晃司 (帯屋隼人正)
戸田菜穂 (睦江)

       *        *        *

サラリーマンの哀愁ここにあり!

正直なところ、今の時代に時代劇を作っても、面白いものが出来るわけがないと食わず嫌いを決め込んでいたのですが、それでも、なんとなくぴくぴく来る何ががあり、遅ればせながら本日見るに至りました。

いやああああ、久しぶりに映画らしい映画を見せてもらいました。
こういう映画がつくれるなら、まだ日本映画も捨てたものではない。

原作は『たそがれ清兵衛』藤沢周平、8篇の短編からなる『隠し剣孤影抄』のなかの一つ、『必死剣鳥刺し』。サラリーマンの哀愁をヒシヒシと書いておられる。そしてその短編をここまで完成度の高い映画にしてくれたスタッフの皆さんに感謝。

時代は江戸時代、舞台は、東北の小藩・海坂藩。
サクラの花も散る春のある日、城内では能の宴が終わろうとしていた。終劇のさいにも誰も反応しないなか、藩主・右京太夫の愛妾・連子が手を叩き始めると、右京太夫も手を叩き始める。そして遅ればせながら家臣たちも手を叩き始める。
何かが変なのである。あれ・・?これって、奥さんはみんなに嫌われているのかな・・?とか思っていると、退場のときにいきなり豊川悦司演じる兼見三左エ門にブスっと胸をさされて絶命する。

唐突に始まり、物語の背景がみえないまま、つかみのイベントとしてはかなりパンチの効いた始まりであった。その後あたふたする周りに家臣たちと対照的に、既に覚悟をきめている様子の兼見三左エ門。潔さの描写もすばらしい。
切腹もゆるされず、打ち首が相当という判断が体制をしめるなか、津田民部(岸部一徳)の計らいもあり1年の閉門と給料半分という、在り得ないほど軽い刑で処分が決定される。
屋敷内の蔵に幽閉される兼見。
そして、回想シーンが始まり、これまでのいきさつが語られていく。


どうやら、この藩は天災などもあり、財政破綻寸前に追い込まれているらしい。
江戸からも緊縮財政の御達しがあるも、藩主妾の連子(関めぐみ)には、不憫な生活は出来ないらしく、浪費思考を変えることが出来ない。親族優遇のために、寺院の改築工事を強行するためにさらに年貢を上げるという。これに反対して騒ぎ始めた農民たちの首謀者たちは打ち首。これに意見できるのは御別家の帯屋隼人正(吉川晃司)のみ。しかし、殿様は結局は連子の言いなりになり、財政難を理由に藩の会計主任が春の宴の席を取りやめにすること聞くと、これに切腹申し付けるしまつ。
誠実に生きているものたちが連子のわがままのためにどんどん死んでいく。
愛妻・睦江(戸田菜穂)を病で亡くし、死に場所をもとめていた兼見は、春の宴の席で連子の胸を刺し、殺してしまう。

屋敷の納屋に幽閉されることになった兼見の世話をするのは亡妻の姪・里尾(池脇千鶴)。毎日毎日食事をつくり、幽閉されている兼見にそれを届ける。減俸処分になった家計をやりくりするために、家のまえの藪を開拓し畑にする。
言葉にせずとも、愛にあふれているこの一年間の描写には心を打たれる。
古き良き日本映画の慈しみがここにある。

1年の幽閉期間が過ぎた兼見は、なぜか経理主任に抜擢される。上司の津田は、なんとか間を取り持ってくれているようだが、殿さまには嫌われている様子。自ら辞職を申し出るが却下。・・・・・なぜ?
ここからは社会派サスペンスの時間。
民衆のことを考え、藩の財政のことを考えると、このまま兄を藩主の職にとどめておくのはまかりならんと考えた、右京太夫の弟・帯屋隼人正は、必要とあらば兄を殺害し、江戸の子供を呼び寄せ藩主にしようと考えていた。必死剣・鳥刺しを体得している兼見は、殿を帯屋隼人正から護るための雇われているボディーガードだったのだ。

正義の味方・帯屋隼人正と、悪代官の手下として戦わなければならない兼見三左エ門。自分の行為が正義に背くとわかっていても、サラリーマンには唱えるべき異議はない。
里尾と一夜を過ごした兼見には、生きることへの執着心も出てきている。生き残らなければならない!

そしてある雨の日、帯屋隼人正は殿を斬るために城内に上ってくる。
そのまえに立ちふさがる兼見三左エ門。
死闘の末、帯屋隼人正を殺した兼見三左エ門。
しかし、そこに津田が現れ、兼見三左エ門は乱心して隼人正様を殺害した。兼見を斬れと命令する・・・。

愛する女への想いを胸に、それでもサラリーマン人生を生きるしかなかった兼見三左エ門。
最後の必死剣・鳥刺しは・・・・・ちょっとイマイチでしたが、それでも充分堪能できる日本映画でした。

でも、最後のエンディングの歌だけはなんとかしてほしい。
せめて、音楽だけに出来なかったものか・・・。

by ssm2438 | 2011-12-12 00:48


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