西澤 晋 の 映画日記

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2011年 12月 26日

ヒックとドラゴン(2010) ☆☆☆

f0009381_1395714.jpg原題:HOW TO TRAIN YOUR DRAGON

監督:クリス・サンダース/ディーン・デュボア
脚本:クリス・サンダース
    ディーン・デュボア
    ウィル・デイヴィス
音楽:ジョン・パウエル

声の出演:
ヒック (ジェイ・バルチェル/田谷 隼)
ストイック (ジェラルド・バトラー/田中 正彦)

       *        *        *

・・・そうか、共存というのは調教ということか。

原題にもあるように、この映画のタイトルは『君のドラゴンの調教の仕方』というタイトル。

<あらすじ>
遠い昔、とある島のバイキング達は、日夜自分たちの家畜を襲うドラゴンと戦いをつづけていた。子供たちは幼い頃からドラゴンを倒すための訓練に励み、ドラゴンを倒して初めて一人前のバイキングと認められる。族長の息子のヒックも、いつか自分も認められたいと思いながらも、心が優しすぎる余りフィジカルな戦いにはむいていない。そんな彼が、傷ついて飛べないスーパードラゴンと出会い、徐々に心を通わせていく。

子供にみせるにはちょうどいい物語ではあるが、なんだか大人になるといろいろ想うところがあった。

一つは、「嘘を描く」ことに私が興味をもっていないこと。語るべきは「真実」だと思ってしまう。その昔、確か私が20代の後半だったと思うが、私のところにエホバの証人がきて、さんざん彼らのコンセプトを説いて帰っていった。彼らが配布しているにパンフレットの表紙には草原のなかで、人間とライオンが争うことなどなさそうに仲良く描かれていた。私はちょっと意地悪な質問をしてみたくなった。
「このライオンは何を食っていきてるんですか?」
「この世界ではライオンも草を食べます」

・・・・・残念ながらネコかの動物は確かに草も食べる時はあるが、彼らの身体は草を消化できない。ウンコにまじってそのまま出てしまうらしい。私が育った実家ではネコを飼っていて、ためしにその猫にホウレンソウを食べさせたことがあったのだが・・、不思議なことにおいしそうに食べるのである。・・でも、そういうことなのだ。食べるけど、それを栄養として体内に吸収できない体質になっているらしい。

魚をたべるシーンしかないドラゴンをみてると、ふとそんなことを思い出した。


もうひとつ、この映画をみて思い出したのが『桃太郎・海の神兵』
大日本帝国時代、日本が南方進出をくわだてていたころ、国民にみせる戦意高揚映画としてつくられたフルアニメ。桃太郎が落下傘部隊の訓練をして、特殊任務につき、南方の鬼が島に鬼退治に行く話。颯爽と航空機から飛び降りるスカイダイビングの作画は見事なもの。そして鬼をやっつけたのちは、その島のウサギさんやカメさんや森の熊さんに日本語教育を施すという健全な物語。

少なくとも、戦前の日本にはこの手の映画はあったのである。実は私は、戦意高揚映画というのはキライではなく、高みを目指すための努力、強くなるための努力、支配していくための努力というものを肯定的に描いているので、観ていて気持ちいいのである。お国のために、立派な軍馬を育てていく話で、黒澤明が脚本を書いた『馬』なんてけっこう好きだ。

『桃太郎・海の神兵』は明らかに戦意高揚映画だったのだけど、この『ヒックとドラゴン』は、そんな思想は無いだろう。ただ、作り手のなかに、無意識のうちに摺り込まれてるキリスト教的な概念、もっとも増殖力のつよい思想教育なのかなと感じた。
しかも、そこでもうひとつの摺り込まれているコンセプトが「自分が決して調教される側ではない」という基本コンセプト。大日本帝国を打ち負かし、民主主義を植えつけたアメリカ、フセインを成敗しイラクに民主主義をうけつけようとしているアメリカ。これらを無意識のうちに植えつけることがアメリカ社会ではずっとなされていたのだろうな・・って思った。良いとか悪いといってるのではなく、おそらく思想の広がりというのはこうして広がっていくのが自然の法則なのだろう。


ただ、どこか好かんのが、コミュニケーション・能力で支配していこうとするところなのだろうな。どうもこれを私の魂が嫌っているあたりが理系脳だ。私はあんまり相手に対して働きかけたくない人間なのだ。どうしろ、こうしろとも言いたくないし、言われたくもない。ドラゴンが襲ってくるなら、それを撃つ負かすだけの力をつけとけばいい。襲ってこないなら、ほっとけばいい。
なんでそんなものに対して共存というなの調教をせにゃいかんのだ? 
ああ、わずらわしい。
もっと無機質なもと、たとえば原子力だとかを、自分の知性と努力とで制御できるように努力と勉強したほうがいい。

へん!
どうせ私はやっぱりコミュニケーション能力に乏しい理系脳な人間さ! 


ま、そんなふうに、なにか私には好かん部分のある映画ではあるのですが、物語の演出論としてはとってもスタンダードで効果的な組み方されてます。
自分の擁護したい思想を被害者側にすえて、徐々に、相手思想を侵食してく。
これは、本音主義を被害者おいて物語を展開したカミュの『異邦人』みたいなものだ。上手い!


PS,きっとこの原作者は猫が好きだ。
私も好きだ。共通項がひとつくらいないとね・・・。

by ssm2438 | 2011-12-26 13:16


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