西澤 晋 の 映画日記

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2012年 01月 12日

暖流(1957) ☆☆☆

f0009381_12345926.jpg監督:増村保造
原作:岸田國士
脚本:白坂依志夫
撮影:村井博
音楽:塚原哲夫

出演:
根上淳 (日匹祐三)
野添ひとみ (志摩啓子)
左幸子 (石渡ぎん)

       *        *        *

愛ってすべっからしになることなの・・・。

原作は岸田國士の同名小説で、とある私立病院における人間のどろどろを描いた作品の、何度目かの映画。世界観的には『白い巨塔』山本薩夫で撮ってほしいところだ。

増村保造は、私の大好きな監督で、ヘビーな作品としては『清作の妻』『赤い天使』<がある。その一方で、それまでドロドロで陰湿になりがちだった日本映画を、からっとあっけらっかあーーーんと描いてしまうような作品もある。野添ひとみ川口ひろしで撮った『くちづけ』などは大成功作品だろう。ほかにも『巨人と玩具』『青空娘』のように、早口・棒読み・あっけらかん路線の映画はある。増村保造はこの映画をこの路線でとってしまった。もしかしたらこの映画以前に、吉村公三郎が撮っているものとの差別化を意識したのかもしれない。ただ・・・、やっぱりこれはダークなグログロ路線撮ってほしい素材である。
今回の映画の増村保造起用はちょっと残念だったが、原作そのものの魅力で☆ひとつおまけ。
後に野村芳太郎岩下志摩で撮られた1966年のほうが見たいところだ。

それでも、志摩啓子・・・いいなああ。『明日のジョー2』白木葉子を重ねて観てしまう・・・。
志摩啓子というのは野添ひとみ演じるこのものがたりのお嬢様ヒロイン。大病院の娘で、何不自由なく暮らしていた。インテリな傲慢なキャラではあるのだが、これが極めて清楚で清らかで、たくましい。しかし感情の表現が苦手で、いつも自分の感情を抑えて生きている。この清らかさとたくましさと、不具合さがきわめて私の好きなタイプである(笑)。
その対角におかれているのが、左幸子演じる石渡ぎん。志摩啓子とは高校の時の同級生らしい。しかし、こちらは、感情をどあああああああっと出すタイプで、幸せな時は「私幸せええええええ」、不幸なときは「私不幸うううううう」、主人公の日匹(ひびき)にかまってほしいときには「かまってえええええええ」とうざいくらいに感情を放出していく。
このふたりの間に根上淳扮する主人公の日匹が存在し、志摩啓子にあこがれながらも、最後は石渡ぎんとひっつくという話。この物語が抜群に面白いのは、この<人並み以上に感情を押し殺す女>と<人並みに感情を制御する男>と<人並み以上に感情を表現する女>の絡み合いが面白いのだ。

日匹祐三に一目ぼれした志摩啓子だが、日匹祐三のあまりに自身のある態度が鼻につき、彼を直接求めることが出来ない。そんな啓子は、志摩病院の若手で有望な医師・笹島と接近、する。しかし、これら全ての行為はどこか日匹祐三への“かまってかまって信号”だったのだろう。笹島から結婚を申し込まれても、どこかうけいれられない啓子。
志摩病院の業務改革を任されいる日匹祐三は、啓子の高潔さに惹かれながらも、内部情報に詳しい看護婦の石渡ぎんとの接点をもつようになる。ぎんは日匹祐三に頼まれて、彼のために働くことに幸せを感じている。

憧れの女性に心奪われながら、一緒にいて居心地のいい女性と行動をともにする。

恋愛ドラマの王道である。
日匹祐三はぎんの存在がうざくなり、さらに笹島に愛人があることが発覚、啓子が彼との婚約を解消すると、自分の心をおさえられなくなり、啓子に結婚を申し込む。しかし啓子はこれを拒否。日匹祐三のあたかも保護者のようにふるまうその態度がどうにも鼻につくのだ。
それからひともんちゃくあり、結局日匹祐三と石渡ぎんがおさまるところにおさまる。物語の最後で、啓子が祐三に自分の心を伝えたときには、すでに祐三の心はそこにはなかった・・・。


しかーし!
このドラマのカッコいいのは、このあとの啓子なのである。
祐三にぶつけた自分の愛情を拒否されてからの去っていく彼女の後姿、そしてそのあと母とかわす一連のやりとり。この啓子をみせるためにいままでの全てがあったといっても過言ではない。それはまさに『風と共に去りぬ』ヴィヴィアン・リーのような気高さである。このシークエンスだけで、この映画は私のなかではとても大事に映画になってしまった!!!!
おおおおおおお、美しい。潔い。志摩啓子、まさに私の大好きなヒロイン像である。

この高潔さを選ばずに左幸子にいってしまう主人公ってアホとしか思えん。
野添さん好きです~~~~~。


<あらすじ>
志摩病院は都内でも屈指の私立病院であるが、莫大な借金を抱えていた。病院を手放せばその借金は返せるのだが、創立者の志摩泰英には耐え難い選択だった。そんな病院の建て直しを任されたのが日疋祐三(根上淳)だった。祐三は孤児であり、志摩家の援助を受けて大学を卒業し、事業家として頭角をあらわしていたのである。
さらに泰英は自分の余命がいくばくもないことを知っていた。そんな彼が気にかけているのが娘の啓子(野添ひとみ)のことである。せめて命のあるうちに啓子に結婚相手がみつかることを願っていた。そしてまもなく院内でも秀才で通る青年医師・笹島と付き合うようになり笹島からプロポーズを受ける。
しかし、啓子にはきになる男がいた。父の泰英から志摩病院と志摩家の資産の正常化と管理を任された日疋祐三である。祐三の強引なまでの経済管理は、院内だけでなく志摩家の生活にも容赦はなかった。しかし、与えられた仕事を無慈悲に成し遂げていく祐三に啓子もすくなからず魅了されていった。
やがて志摩泰英は急逝した。っそれでも病院は祐三によって経営の一新がすすめられいく。泰英の一人息子だが、無能な医師・志摩泰彦(船越英二)も病院から追放され、彼をかついでひそかに病院ののっとりを狙っていた派閥も解体されていく。
周りは敵ばかりの祐三に協力的だったのは看護婦の石渡ぎん(左幸子)だった。しかし祐三は彼女の好意を押し付けがましく感じ始めていた。
一方祐三は、志摩家の財産を守るための一環として、啓子の婚約者・笹島の素行調査を行うが、笹島には女性関係があった。祐三はそれを啓子にありのまま伝えたが、かえって軽蔑されてしまう。笹島の愛人宅をたずねる啓子。そこにはおくすることもない愛人が啓子を迎え入れ、笹島もそこに現れる。しかし、彼もまた、おくすることなく、「自分には愛人がいるが、それでも啓子と結婚したい」と言う。
啓子は笹島との婚約を解消した。
祐三は関西の資本家を動かすことに成功、新院長も決定し、彼の仕事もそろそろ終局に近づいていた。
そしてそれぞれの恋愛事情も結末に向かっていた・・・。

by ssm2438 | 2012-01-12 12:42 | 増村保造(1924)


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