2012年 01月 13日
監督:山田洋次 原作:ピート・ハミル 脚本:山田洋次/朝間義隆 撮影:高羽哲夫 音楽:佐藤勝 出演: 高倉健 (島勇作) 倍賞千恵子 (島光枝) 武田鉄矢 (花田欽也) 桃井かおり (小川朱実) * * * 柱のき~ず~はキリギリス~ 5月5日のキリギリス~ 1977年の日本アカデミー賞をほとんどとってしまったこの映画、世間ではけっこう褒め称えられているのですが・・・、どうも、私はいまひとつ空振ってしまったようでした。。。 山田洋次といえば誰もが『男はつらいよ』を思い浮かべるものです。そういう私も山田洋次ものは嫌いではなく、なんだかんだといいながらコンプリートしてしまいました(苦笑)。 寅さん映画は1969年封切られたのを最初に、当初は年に3本が制作されています。さすがにマンネリ化を感じたのか、1973から年に2本づつ製作されるようになり、3本目は山田洋次も別の作品に時間をさいていたようです。1977年には3本の映画を監督し、そのうち2本は『男はつらいよ』で、もうひとつがこの『幸福の黄色いハンカチ』でした。ちなみにこの年公開されて2本の寅さん映画は、『男はつらいよ、寅次郎と殿様』と『男はつらいよ、寅次郎頑張れ!』でした。 残念ながらこの2本はどちらもパンチにかける作品でした。特に『男はつらいよ、寅次郎頑張れ!』は当時人気の中村雅俊と大竹しのぶという、若手人気の俳優人を要したにもかかわらず、今ひとつありきたいの出来になってました。意外と山田洋次にしてみればスランプの年だったのかもしれません。 ・・・というか、絶対そうなのだと思います。 最後にはたしかにウルウル来るのはいつものことなのだけど、どうもいまひとつハマらなかったのです。 そのおおいなる原因は、やっぱり高倉健が演じた島勇作という男のキャラクターにあるのでしょう。 そもそも男というのは、女を愛する時に、その女自身を愛しているわけではありません。男が愛しているのは、自分のなかの理想の女性像であり、それだけです。男というのは、それをオーバーラップできる対象に、「ああ、この人こそそういう人なんだ」って思い込むとき、それを愛してると勘違いする生き物なのです。なので、その点においてこの島勇作というキャラクターはかなり男の本性を露呈しているキャラクターだといえるでしょう。しかし、現実ではそんな人はいるはずもなく、現実と妥協してはじめて恋愛というのが成立します。 本作では、島勇作にとって光枝が理想の女性だと思えていた間は、それが機能します。あたかも幸せな恋愛のようにもみえます。しかし、流産を境に、光枝の過去があるていど見えてきて「自分が好きになるはずの女にはこんなことが起きるはずがない」と絶望します。 そんなエピソードをみていると、高倉健が演じるこの男は、終始自分の理想の幻影しか愛していないように思えるのです。 この映画をみて、島勇作は光枝を真っ正直なまでに不器用なまでに愛しているのだ・・と思えたなら、この映画をみて感動できるとは思うのですが、どうも、私にはそう思えなかったのです。。。結局最初から最後まで、光枝自身が確かに愛されてるとはまったく感じられなかったので、この物語にのめりこめなかったのです。 ただ、ある程度ドラマの見方は心得ているので、「一応これでそういう<一途な想い>ということになっているんだな」と理性的に考えて、なんとか物語りについて行ったというのが正直な私の感想でした。ま、それを化膿してくれる山田洋次の上手さもあるのですが・・・。 あとひとつ、やっぱりこの映画は好きになれないのはキャスティングにあるのでしょう。 私はどうも、画面のなかに武田鉄也が出てくるのが生理的にきらいみたいです。さらに桃井かもりもキライみたい。どうも、あのだらしのないしゃべり方がキライで、なおかつ、あの結局は自分に都合のいいことしかよしとしない傲慢なさがキライ。さらに言えば、本音を語っているように聞こえるが、自分の優位性を勝ち取るために相手の弱さを攻撃しているような態度がキライ。 <あらすじ> 失恋してヤケになった花田欽也(武田鉄矢)は、有り金ははたいて真っ赤なファミリアを購入、フェリーに乗り釧路をに上陸する。網走の駅で、一人旅らしい女の子に声をかけ、なんだかんだと誘い文句をならべ、同行してもらうことに成功する。彼女は朱美(桃井かおり)といい、やはり職場で嫌なことがあり、衝動的に北海道に飛び出してきた一人だった。海岸にやってきた2人は、そこで海を眺めていた島勇作(高倉健)に写真を撮ってもらった縁で一緒に旅を始めることになる。 ことのなりゆきで勇作がハンドルを握っていたとき、一斉検問に引っかかり、勇作が無免許運転であったことが判明、無免許の理由を問われ刑務所に入っていたことを話す。最寄の警察署に連行されるが、昔勇作の事件を担当した渡辺係長(渥美清)の温情で事無きを得る。刑務所帰りがばれた勇作は汽車で行くと言うが、結局は3人旅は続いていく。 車の中で勇作は自分の過去を語り出す。スーパーのレジ係だった光枝(倍賞千恵子)との出会い、結婚、そして幸せな新婚生活。しかし光枝は流産をきっかけに光枝の過去を知る。絶望した勇作はヤケになり夜の繁華街に繰り出し、絡んできたチンピラとの喧嘩で相手を死なせてしまう。 それから6年、刑務所から出来てたのが、今の勇作だった。 勇作は網走で葉書きを出したことを告白する。「もし、まだ1人暮らしで待っててくれるなら…黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ、もしそれがなかったら俺はそのまま引き返して、二度と夕張には現れない」・・・と。 それを聞いた欽也達は一緒に夕張に行くことを決心する。 ・・・・・しかし、最後の再会のシーンはやっぱりよかった。 アップで撮ることなく、横からのアオリ気味のロングで捉え、なにを語ったのかもわからない。 ハンカチを見上げる高倉健。しばしして、うちのほうに向かう。 そのままの状態で顔をおさえる倍賞千恵子。 やがてもどってきて、そっとかたをだいてやる高倉健・・・。 この賠償千恵子の、高倉健の移動下方向をフォローすることなく、そのままの状態でうなだれるところが実に素敵だ。。。。
by ssm2438
| 2012-01-13 14:42
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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