西澤 晋 の 映画日記

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2012年 01月 16日

危険な斜面(2000) ☆☆

f0009381_10204876.jpg演出:大岡進
プロデューサー:中川善晴
原作:松本清張
脚本:金子成人

出演:
田中美佐子 (野崎利江)
風間杜夫 (秋場文作)
大滝秀治 (西島卓平)
袴田吉彦 (沼田仁一)
粟田麗 (木島京子)

    *      *      *

1982年の土曜ワイド劇場で放映された『危険な斜面』が見たかった・・・。

今回私がみたのは、2000年に制作されたTBSが制作した松本清張傑作選のなかのひとつ。過去にも何回か制作されていて、82年に土曜ワイド劇場(テレビ朝日)で、90年に火曜サスペンス劇場(日テレ)で制作されている。80年代の土曜ワイド劇場のレベルは恐ろしく高く、絵作りの基本がしっかり出来ていた。
あの頃の2時間ドラマにくらべると、さすがに2000年に制作されたこのドラマは画面的に完全にテレビ仕様。このころになると、テレビの現場の人ばかりなので、まともに映画として画面が作れる人がいなくなっているのだろう。というよりも、その違い(カメラ位置がもたらす画面の違い、レンズの違いがもたらす画面の意味‥など)すら彼らは理解していないのだろう。絵作りの劣化が急速にすすんでいる現状は嘆かわしいばかりだ・・・。
しかし、撮影は最低でもドラマはしっかりしている。
松本清張の精神的な追いつめ方は素晴らしいの一言に尽きる。


物語はこのようにはじまる。
ある夏の日、山口県の山中で白骨死体が見つかった。歯形の調査や所持品から、遺体は半年前に失踪した野崎利江(田中美佐子)と判明。彼女は西島グループの会長・西島卓平(大滝秀治)の愛人であり、捜索願はその西島が出したものだった。数年前から利江は西島の愛人になり、西麻布に豪邸を与えられ、週に一度情事をかさねていた。山口県警からきた2人の刑事は、そのあたりの事情を詳しくしらべていった。

見ている人は、この西島卓平が犯人ではないか・・?と最初に思うところだ。一応私もかんぐってみた。しかしどうやらこの男ではないことが最初の10分くらいのところで判って来る。
刑事と西島の会話のなかで、西麻布の一軒家を用意し彼女を招いたころの話をしていたときに西島がこのような台詞をはく。

「彼女はここが気にいっとった。
 旧い家なんだがね・・・、
 隣を気にしなくていいから落ち着くわ・・と言っとったよ」

この一言で、一気に物語の終着点を予感させてしまった。
そこには昔に、誰かと性交渉があったことがにおわされており、おそらくその人物が愛憎の果てに彼女を殺すしかなかったのではないか・・という想像がうまれる。物語は見事にその流れにそって展開されていく。

物語を構築する時に重要なのは、そうなるにせよ、ならないにせよ、漠然とした方向性を見ている人に提示しておくことが重要になってくる。見ている人は方向性が見えないまま、ドラマを見せられると飽きてきてしまう。「もしかしたら、こうなるのかな?」という感じるか感じないかくらいのヒントを提示しておけば、とりあえずそを求心力として見てもらえるのである。
その昔TBSで人気を博した鎌田敏夫脚本の『男女7人夏物語』の1話を見ると、誰が誰とひっつくのかな・・というヒントは、そこで既に提示されているのである。

犯人と思しき人物は、西島機械に勤める秋場文作(風間杜夫)という男だった。彼は10年前、池袋でホステスをしていた利江と知り合い交際していた。しかし、秋場には既に結婚する相手がきまっており、利江もその時は静かに身を引いた。その2人が再開したのは西島グループの創立60周年を起点するパーティーの会場だった。2人の関係は再び始まった。それからというもの、ほとんどリストラ寸前の立場だった秋場は、会社に残されることが決定され、西島グループの中核である西島電気に転属となった。利江が会長の愛人であることから、秋場への便宜をはたらいてくれたのだった。
秋場は利江を愛しいと思う反面、不安でならなかった。利江は自分を純粋に求めてくれているが、会長と自分以外にもまだ男の影を感じることがあったのだ。

この後の展開は、松本清張ものではよくある展開で、妻と離婚し自分と再婚することをもとめてくるようになる利江が、重たくなり、追いつめられた秋場は利江を殺ししかなくなる・・というもの。

その殺人にいたる謎解き部分は、刑事が担当するのではなく、利江のもう一人の愛人、沼田仁一(袴田吉彦)が調べていくという展開。
警察は、利江の愛人がおそらく犯人だろうと捜査をはじめている。このままでは自分が犯人になってしまうと危機感を覚えた沼田は友人に相談、もう一人いるはずの愛人の男を捜し始める。ある夜ベッドで彼女を抱いていると、彼女は「吉野さん」と間違えて口にしてしまったという。
やがてその吉野というのは秋場の旧姓であることが判明、西村京太郎的な殺人事件当日のアリバイくずしの推理がはじまる。

by ssm2438 | 2012-01-16 10:22 | 松本清張(1909)


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