西澤 晋 の 映画日記

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2012年 01月 17日

サンキュー・スモーキング(2006) ☆☆☆☆

f0009381_12181964.jpg原題:THANK YOU FOR SMOKING

監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ジェイソン・ライトマン
撮影:ジェームズ・ウィテカー
音楽:ロルフ・ケント

出演:
アーロン・エッカート (ニック・ネイラー)
キャメロン・ブライト (ニックの息子・ジョーイ)
マリア・ベロ (ポリー・ベイリー)
ロブ・ロウ (ジェフ・マゴール)
ケイティ・ホームズ (ヘザー・ホロウェイ)
ウィリアム・H・メイシー (フィニスター上院議員)
J・K・シモンズ (BR)
ロバート・デュヴァル (ザ・キャプテン)

       *        *        *

そうだ! 多数の意見に属してて何が楽しいんだ!?

タバコ天国の日本ではかなりうといことだが、海外でのタバコ事情は、かなり厳しいものでだ。公共の場でタバコを一本なんてのはかなり顰蹙な行為だし、F1だってタバコの広告をだせないのでマルボロのロゴをバーコードにしないと走らせてもらえない国がある。タバコの健康被害を危惧する国際世論の高まり、バッシングの対象となる。クリーンが心情の政府は馬鹿高い税金をかけ、タバコ1箱(20本)の値段は日本と比べ物にならないくらいべらぼうに高い。イギリスでは一箱1000円近いといわれていた。もっともこれは今みたいに超円高になるまえの相場なのだけど。ドイツ、フランスあたりで600~700円。アメリカでは800円ちかかったはず。
そんなタバコ業界のロビーイストがこの映画の主人公。アーロン・エッカートが扮するこの男は口は達者で、ディベート力はきわめて高く、全国からバッシングされるタバコ業界の宣伝マンとしてマスコミに登場し、相手のコメンテイターたちをなぎ倒していく。アメリカ映画でよくあるコミュニケーションの達人である。
シナリオライターとしてみれば、うふぁうふぁな題材だろう。
かっこいい説得力のある言葉がいっぱい書ける!

そんな主人公に、「なんでそんな仕事をしてるんだ?」という問いがなされる。彼は、「モルゲージのためだ」と答える。「モルゲージ: Mortgage」とは「不動産を担保にした貸付」・・くらいの意味だろう。平たく言えば、マンションや家を購入した時の「住宅ローン」である。

「活きる為に稼がないといけないから自分の得意なことをやっているのであって、ポリシーではない。・・・だから、正義やら道徳心やらをかかげて俺をバッシングしないでくれよ」の意味だろう。

・・・・でも、それってホントなのだろうか?
映画の議論とはまったく別のところに踏み込むのだが、たぶん彼は、それが面白いからやってるのだと思う。大多数を相手に、彼らがベースにしている理性の奥にある、本音を刺激するのが楽しいのだと思う。何かしらの力がある人にとっては少数派に属するほうが何かと楽しいでのある。

ビジュアルリーダーやドラマづくりをしている人は、多数の意見に属することは致命的である。自分の意見が多数派だなって思ったときはもう時代に遅れであり致命的だ。それよりも、純粋に面白くない。最近のドラマがどれも面白くないのは、多数の意見に属した馬鹿プロデューサーがドラマの方向性をきめているからだろう。

だからといって、少数派のアイデアがすべて面白いかといわれればそんなことはない。そのほとんどはトラディショナルな法則にさからって一時のパフォーマンスをしているだけである。大切なのは、今は少数派でも、50年後には多数派になるであろう価値観を今のうちから提示することなのだ。すぐ古くなる新しいものではなく、<古くならない新しいもの>を目指すこと、それが大切なのだ。

では古くならない新しいものとは何か? そもそもそれはどこにあるのか?
それは、実はすでに存在している。ただ、より深いところに存在しているので、まだほとんどの人は気づかないだけだ。
「新しいものを作る」ということは、「珍しいものを作る」ということではなく、「まだ発見されてない真実に基づくものを作る」ということなのだ。

「真実」を発見すれば、新しいものは出来る!
たとえば、車のフォルムにしてそうだ。まだ発見されてない、完全なる空力を具現化するものを作れば新しい車のデザインが生まれる。珍しいだけではすぐ滅んでしまう。
これは物理的なことだけではない。精神世界にもいえることだろう。「世間ではこういわれているけど、なにかへんだ」っていうものに出会うときがある。でもその理由はわからない。だから、世間でそういわれているように解釈しておく・・という結果になる。そんなとき、しばし足をとめてその理由を真剣に考えてみる。その時なにか見えてくるかもしれない。

この映画が素敵なのは、世間ではタバコはけしからんって言われてますけど、それに従うことがどこかうさんくさくないですか???っていう問いかけなのだと思う。

「真実」は多数の意見の中にはない。
多数の意見というのは所詮、「真実がわからないから、とりえずこういうことにしておこう」という、世間と個人が折衝したその妥協案にすぎない。ましてや多数の意見というのは、弱者の都合でしかない。それは一時的な人気取りにはなっても、継続的につづくものではない。なぜなら弱者は滅びるようにできているのだから。
自分を弱者とみなすのは、だれでもそうだ。私もそうだ。しかし、弱者にとって都合のいいことを正当化することが正しいことにはならない。


ものづくり業界に居る人は、多数に属さないスピリットをいつも持っていてほしいものだ。
この映画をみて、そのことを言葉にして言いたくなった。
そういう意味で、とてもいい映画だった!

ほんとは☆3つくらいでいいかと思ったのだが、勢いがついたのでもう1つおまけ(笑)。

<あらすじ>
ニック・テイラー(アーロン・エッカート)はタバコ業界を代表する凄腕のロビーイスト。同じ悪評高いロビーイスト仲間であるアルコール業界のポリー・ベイリー(マリア・ベロ)と、銃製造業界のボビー・ジェイ・ブリス(デヴィッド・コークナー)とはいつも3人で飲んでは日ごろの鬱憤を解放している。
そんな彼をうっとおしいと思っているのが、フィニスター上院議員(ウィリアム・H・メイシー)。彼はアメリカ国民の健康を守るために、タバコのパッケージにドクロ・マークを付けようともくろんでいる。しかし、なかなかテイラーを倒すことは出来ない。しかしそんなテイラーも過激派の嫌煙団体に拉致され、体中にニコチンパッドをhられて中毒死寸前までおちいったりする。さらにスクープを狙う女性新聞記者、ヘザー・ホロウェイ(ケイト・ホームズ)の罠にハマってしまい、ベッドであらいざらいしゃべって慕ったことを記事にされ仕事を失う。順風漫歩だった人生はドトボに陥ってしまった。
そんな彼だが、別れた妻との間の息子ジョーイ(キャメロン・ブライト)だけはそれでもニックを尊敬していた。やる気を取り戻したニックは、タバコにドクロマークを張ろうキャンペーンの是非を問う公聴会に出席、上院議員との最後の対決に挑んでいく・・・。


・・・・しかし、輪が麗しのマリア・ベロ嬢、しばらくみない間に、かなり老け込んじゃいました。うううう。

by ssm2438 | 2012-01-17 12:19


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