西澤 晋 の 映画日記

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2012年 01月 19日

魔の刻(とき)(1985) ☆☆☆

f0009381_1358843.jpg監督:降旗康男
脚本:田中陽造
撮影:木村大作
音楽:甲斐正人

出演:
岩下志麻 (水尾涼子)
坂上忍 (水尾深)
岡田裕介 (花井)
岡本かおり (葉子)
伊武雅刀 (片貝刑事)

       *        *        *

母と子の距離感を感じさせない芝居づけが、この物語の成功の鍵だな・・・。

ルイ・マル『好奇心』も母とエッチにいたる話だけど、こちらはエッチをしてっしまったあとの話。実はこれは原作のエピソードではなく、降旗康男監督はあえて原作では描かれなかった二人の後日談を作り上げてしまったわけである。

私個人は、ホモ物とか母とエッチする近親相姦物ってのは嫌悪感を感じてしまうのだけど、これは思った以上に見られた。これをそれほど嫌悪感を感じさせないものにしてくれたのは、母と息子の距離感がそこはかとなる在るのである。
たとえば、これが別の物語で、幼い頃は親子が離れて過ごしていて、ある程度の年齢になってから再会し、最初は親子とも思わなかった・・みたいなシチュエーションならそれほど気持ち悪さは感じないのだろう。この映画の二人は、まさにそのような言葉のやりとりや、その芝居付けがされており、どこかさらりとしているのである。

ただ、不思議なのがこの距離感はどこからくるのか?という問題だ。なので原作をしらべてみた。
ところが、原作を調べてみると、そのような展開ではなかったようだ。
原作では父親の圧力から家庭内暴力に走る息子とそれを必死になって受け止めようとする母、そのあたりから結局母と息子が親密な関係になったという展開である。これはある種の必然的な展開だったのかもしれない。映画でも、一応それまで何があったかということは回想する言葉として語られている。社会的にも地位のある父親は、その家系お利巧さんが多くほとんどが東大にはいるという設定。そんな環境下で息子がプレッシャーにまけ、2度の受験失敗、てぐれて結果「もう二人で死のう」的な展開になりその結果、お母ちゃんとエッチするようになるというもの。意外とさらりと語られてしまった。

なので、一般的な人が考えるような息子と母がエッチにいたる映画ではなくなっている。たしかに原作で語られている話なら「よくある話」ということになってしまうのだろが、それを原点にして、その物語からしばし時間をおき、どこか距離感の離れた二人が再びであって求め合うというような映画になっている。
この距離感が、この映画ならでは人工的な要素であり、それが映画としてすこぶる見やすくしてくれている。技術論で観るならすこぶる面白い。

しかし・・・、なににつけても木村大作の望遠画面はいい。
港町と望遠レンズ。なによりすばらしいのが、その港の中に船がひとつ沈みかけてる船があって、そのマストが水面から斜めに突き出ているのがいい。普通に浮かんでいる港のなかで、あれがあるだけで意味もなくときめいてしまう。
海の色もいい。ネストール・アルメンドロスがいうマジックアワーちょっとまえの時間帯を使っており、まだ水平線のうえに太陽は見えるのだけど、光線はかなり弱まり、人間が建てた人工物は逆光で鈍い色におちている。でも水面はサーモンピンクと、オレンジ色の間のような色合いで渋いです。
最近糞画面ばっかりみてたので、時としてこういう映画的なしっかりした画面をみると、それだけできもちよくなってしまう。物語は私好みの話では決してないのだけど、それでも木村大作の画面をみているだけで、ついつい最後まで、気持ちよく見せられてしまった。

そして物語的には隠し味がぴりりと効いている。岡田裕介演じるインテリ崩れの薬局屋のやもめ亭主の哀愁が最後でガツン。この一発がいい感じでドラマ全体を引き締めてくれる。これはあとで語ろう。

<あらすじ>
一流企業に勤める夫・敬一郎に離婚を申し出、1年前に家を出た息子・深(「ふかし」と読む・坂上忍)を探してこの港町にたどり着いた水尾涼子(岩下志麻)は、その日のうちにアパートを探し落ち着くことにする。そんな彼女に声をかけたのが、アパートの向かいの花井薬局の主人・花井(岡田裕介)だった。花井は二年ほど前に妻を心臓マヒでなくし、その1ヵ月後、母親を脳出血で亡くしている。住民もこの相次ぐ死を不審に感じていた。それは警察も同じで、墓を掘りかえして骨壷の骨を鑑識にまわしたこという。
深は直吉丸の娘・葉子(岡本かおり)と一度、寝たことがあり、その事が直吉丸の従業員仲間に知れて、包丁で腹を刺された。涼子は深を花井薬局にかつぎこみ、表沙汰を嫌う深の頼みで、花井は知人の医者・西方に治療を依頼しことなきを得る。それをきっかけに花井薬局で3人の生活がはじまる。
息子の看病に充足感をかんじる涼子。3人の生活は穏やかだった。やがて傷もいえ、葉子が深をつれだし、自分のアパートにもどったことを知った葉子は抑えがたい衝動を覚えて息子を求めて追っていった。近づきすぎると離れたくなる二人。しかし離れるとまた求めてしまう。また二人はお互いをむさぼりあった。
しかし、花井を追っていたカ片貝刑事が、二人の情事をみてしまったことから、二人の話は港町中に知れわたった。

そのあと深はアパートを去るのだが、最後には今一度都合よく現れてくれる(苦笑)。ま、それはいいだろう。
この後の展開ですばらしいのは、あまり関係のなさそうだった花井の秘密が語られることだ。
実は、花井の積まば死んだ時、彼女は医者の西片を情事を重ねていた時だったという。ことが世間にばれるのをおそれて、西片の存在はこのイベントからは消されてしまった。しかし、妻が他の女とエッチしてるときに死んだと聞かされれば心中穏やかではないのだろうが、そこにはもうひとつ秘密があった。
花井は、妻の母と肉体関係があったという。

結局、男と女の関係というのは、理屈では説明のつかないテリトリーであり、なんでもありなのだな・・というエピソードをもうひとつ紹介することで、岩下志麻と坂上忍の親子のエッチ関係も、それほど違和感のあるものとしての印象は沈められ、もうすこし純粋な男女間の営みのように解釈されるようにおちつかせているのである。

by ssm2438 | 2012-01-19 13:58 | 木村大作(1939)


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