西澤 晋 の 映画日記

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2012年 01月 28日

隠し剣 鬼の爪(2004) ☆☆☆

f0009381_1325668.jpg監督:山田洋次
原作:藤沢周平:『隠し剣鬼ノ爪』『雪明かり』
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:長沼六男
音楽:冨田勲

出演:
永瀬正敏 (片桐宗蔵)
松たか子 (きえ)
吉岡秀隆 (島田左門)
田畑智子 (島田志乃)
小澤征悦 (狭間弥市郎)
高島礼子 (狭間桂)
田中泯 (剣術の師・戸田寛斎)
小林稔侍 (大目付・甲田)
緒形拳 (家老・堀将監)

       *        *        *

松たか子が綺麗でがんす・・。
高島礼子も綺麗でがんす・・・。


舞台はとなるのは、藤沢周平が作り上げた架空の藩、海坂藩(うなさかはん)。
藤沢の出身地を治めた庄内藩とその城下町鶴岡がモチーフになっていると考えられている。
時代は江戸時代の後期。東北の海坂藩といえども、江戸から軍術の指導者がおくられてきてイギリス式の鉄砲取り扱いを足軽たちに教えているようは時代。

江戸時代のサラリーマンの哀愁を描く藤沢周平、その短編集秘剣シリーズのなかの『鬼の爪』を基本に、同作者の『雪明かり』をブレンドしてつくられた時代劇。同短編集の中の『必死剣・鳥刺し』もそうであったが、藤沢周平のドラマというのは、武家社会における上司からの命令と、己の正義の相克がテーマである。
不条理な命令なれど、主人からの命令とあっては逆らえない下級武士の悲しい定め。さんざん自分を殺して忠義をまっとうしてきたが「もう許せん」と思った時にプスってやってしまう。
<ストレス溜めるだけ溜めて最後に発散>型の話である。

そして、この物語に色づけしてあるのが、松たか子との恋愛模様。
きよは農家の娘で、主人公の片桐のうちに、子供の頃から奉公にきていたという彼女。武士と農民という身分の違いで、結婚は許されない間柄。しかし彼女も年ごろになると、ある商人の家に嫁いでいくことになる。3年ぶりにあったきよはやつれていた。しかしその商人の家では、ほとんど奴隷扱いでしかなく、きよは病に倒れてしまう。その話をききつけた主人公の片桐はその商人の家にのりこみ、強引にきよを連れ戻しに行く。
本人たちは健全な主人と奉公人の関係だが、周りから見ると、どこかの商い屋の嫁を奪い取った武士ということになる。世間の噂がたつなか、将来のあるきよを自分のもとに留まらせておくわけにもいかない片桐は、きよに、実家に帰るよう話すのだった・・・。

こちらのエピソードを平行させることで、主人公の誠実は人となりを描き込んでいけたのだろう。おそらく、『鬼の爪』だけのエピソードでは、主人公に感情移入をおこさせるまでの描きこみが乏しく、このエピソードが書き加えられたのではないかと思う。確かに松たか子からみの話がなければ、主人公の男は忠義にたけた寡黙な男ってだけになってしまう。そこに人間をつけたのがこちらのエピソードだったのだろう。
ただ・・・、本線のストーリーラインとはからんでないので、どこかで絡められなかったものか・・という若干の不満ものこったりする。そうはいっても、結果として松たか子の存在が、主人公が還る最後の場所になるので物語の後味は良いです。

・・・しかし、松たか子は良いです。ピュアな感じがとっても素敵です。彼女が嬉しそうにしろ、悲しそうにしろ涙をながすと、ついついもらい泣きしてしまう。この映画の松たか子の涙は、ま、科学的には塩水なんでしょうけど、なんだか・・・とっても澄んだ清水のようにみえます。美しいです。
世間では『たそがれ清兵衛』の焼き直しといわれているこの作品ですが、個人的には松たか子が美しいだけで充分もととれてます(笑)。

<あらすじ>
幕末の東北、庄内平野に位置する海坂藩では、江戸に送った狭間弥市郎(小澤征悦)が謀反を働いた罪で藩へ送還されてくる。彼の思い描いた理想主義は旧体制には謀反と映ったのである。薄暗い牢におしこめられ、1日一膳の食事しかあたえられない弥市郎は衰弱していった。一方、この狭間弥市郎と共に剣客・戸田寛斎のもとで剣をならった片桐宗蔵(永瀬正敏)は、家老・堀将監(緒形拳)に呼び出され、狭間との関係や、彼の交友関係を問いただされる。たとえ上からの明でも、友を売ることは出来ないと証言を拒否する片桐。
そのころ弥市郎は、藤沢周平伝家の宝刀「死んだ振り」奇襲をかけ、膳を運んできた男の腕を牢内に引き込み締め上げ、牢の鍵を奪う。脱獄に成功した弥市郎は百姓の家に立てこもる。大目付の甲田は片桐宗蔵に討手を命じた・・・。

もちろん、これだけでは、主人公が上司を殺すまでに展開にはならない。そこでもう一つ非道のエピソードを付け加えられる。

明日は嘗ての剣友・弥市郎との果し合い。その夜、弥市郎の妻・桂(高島礼子)が宗蔵の屋敷を訪れる。弥市郎と戦うことになった時は、彼を逃がしてくれというのだ。もし、願いがかなえられるなら、自分の身体は好きにしていい・・と。たとえ彼が勝ったとしても、彼は自害するだろうと答える宗蔵は、聞かなかったことにするという。桂はそのあと家老の家にも行くと言い残し出て行った。
果し合いは宗蔵が勝った。決闘のあと、桂は宗蔵に「なぜ斬ったのか。昨日ご家老が、弥市郎を許すことを約束してくれたのに」と問いただす。

結果がこうなることは解っていても、彼女にとって出来ることは、家老に身体を与えて、なんとか弥市郎の命をつなぎとめておく努力をし尽くすことだった。やがて桂は自害する。

桂の無念を晴らすために、戸田寛斎から受け継いだ秘剣・鬼の爪が家老・堀将監の心臓を貫く。

by ssm2438 | 2012-01-28 13:07


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