西澤 晋 の 映画日記

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2012年 04月 04日

八つ墓村(1996) ☆☆

八つ墓村(1996) ☆☆_f0009381_21273016.jpg監督:市川崑
原作:横溝正史
脚本:市川崑/大薮郁子
音楽:谷川賢作

出演:
豊川悦司 (金田一耕助)
浅野ゆう子 (森美也子)
高橋和也 (寺田辰弥)
喜多嶋舞 (里村典子)
岸田今日子 (田治見小竹/小梅)
宅麻伸 (里村慎太郎)
岸部一徳 (田治見要蔵/久弥/庄左衛門)
萬田久子 (田治見春代)
加藤武 (等々力警部)

     ×   ×   ×

豊川悦司の金田一耕助はないだろう。まるでオカマだ。。。

個人的には『悪霊島』加賀武史が一番あってると思う。それを野村バージョンでやった渥美清の金田一耕助の押さえ加減でやってくれるのが一番いいと思うのだけど・・・。

『八つ墓村』は、77年に橋本忍脚本、野村芳太郎監督で映画化されているが、今回の作品は『犬神家の一族』いらい横溝正史映画の監督をやたらとつとめている市川昆によるもの。野村『八つ墓村』はリアリティで押しながら最後はオカルトでまとめ上げた異様な映画であるのに対して、こちらはいつもの市川昆映画でした。
正直なところ、市川昆にはまったく才能を感じないので、この作品も面白いとは思えない。市川昆というのは、どこか上品で、結局「突き抜けられない人」という印象が非常に強い。業の強い作品には向かない、というか撮れない人だ。しかしその凡人さがゆえに、凡人が人に見てもらうために少々の姑息で洒落た小手先のカッコイイ描写も時たま入れてくるのも確かだ。

ただ、「ぎゃあああああああ」とか、「しまったあああああ」とかいうシーンで、アップのカットを露骨に入れるのはやめてほしいなあ。あるいはカッティングでもうちょっと美味いことできないものか・・・。
本作でも最後は『犬神家の一族』の高峰秀子同様、主犯の浅野ゆう子が最後ドクを飲んでよたよたとなりバタンと倒れるのだが、そのあと豊川悦司の大写しで「しまったああああああ」と入れてくるわけだ。これがわざとらしくて・・・。たとえば、浅野ゆう子がよたよたっとしたあと「しまったあああああ」のアップをいれて、すぐカットをきりかえしばたんと倒れる浅野ゆう子なら分るのだけど、もうことが起きた、あらたまって驚かれてもうそくさい・・・。
これは金田一耕助のシリーズの映画の市川昆のやった映画のどれをみても感じるところだ。どれも死体をみたあとの仰々しいアップがうそ臭い。ふつう、そういうショックを受けたときは息を呑むだろう。
それはカッティングの問題だけじゃなくて、感情のコンセプトをどのようにとらえるか・・にもよると思う。市川昆の映画のなかでは、いかにも記号的に仰々しくも息を吐く驚き方をするのである。

世の中には、これが平気なひととそうでない人がいる。普通才能のない人は、画面は説明するための手段だとおもっているから、それで充分過ぎるくらい説明されているの「よし!」とするのだけど、才能のある人は、それが存在する空気を描こうとする。この自然な空気を描こうとする人にとっては、あのような画面はあまりにも不自然なのだ。それが不自然なだけで、映画が「つくりものの世界」になってしまう。映画ってのは作り物の世界であっても、作り物でないようにいかに感じさせるかが重要なファクターの一つなのに、それが気にならないというのはこまったものだ。
こればっかりは一事が万事なのだ。作り手が大事にしているものが「自然さ」ではなく「説明」になってしまうと、映画の大事な何かが失われてしまう。。。
感情が穏やかな映画なら市川昆は機能する。『ビルマの竪琴』は私も好きだ。

<あらすじ>
第二次世界大戦が終結して3~4年たっていたある日。
諏訪法律事務所で、寺田辰弥(高橋和也)はと合間見えた井川丑松は、辰弥が岡山と鳥取の県境にある八つ墓村の資産家・田治見要蔵の遺児であることを伝えると血を吐いて死んだ。やがて本家・田治見家の使いで森美也子(浅野ゆう子)がやってきて辰弥は八つ墓村に招かれる。彼が村を訪れると汚らしい巫女のかっこをした気狂いバーさんが「八つ墓明神の祟りがある」と予言する。田治見家を実質支配しているのは色白の双子のバーさん小竹と小梅(岸田今日子)。

前作を越えているのはこのキョンキョンの不気味さである。

やがて諏訪弁護士の依頼で金田一耕助(豊川悦司)も八つ墓村を訪れる。
翌朝第二の殺人がおきる。先に毒殺された井川丑松についで、辰弥の腹違いの兄・田治見久弥が毒を盛られ死ぬ。そして久弥の通夜の晩、気狂いバーさんが殺される。岡山県警の等々力警部(加藤武)は行方不明になっている要蔵の弟・九野医師を容疑者として捜査を開始するが、要蔵の叔母で双子の老婆の妹・小梅がさらに殺され、九野の毒殺死体も見つかったため、捜査はふりだしに戻った。
そして小梅の姉・小竹と久弥の妹・春代が新たな犠牲者となっていた。遺産相続の権利をもつものは辰弥と里村慎太郎(宅麻伸)だけになった・・・。

犯人は浅野ゆう子演じる森美也子なのですが、その動機は一番阻害されていた田治見親族の慎太郎(宅麻伸)を愛してしまったため、他の遺産相続の権利をもつ人々を殺していったという、愛に狂った話にしてあります。

by ssm2438 | 2012-04-04 21:27


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