2012年 05月 27日
原題:PICCOLE LABBRA/LITTLE LIPS 監督:ミモ・カタリニチ 脚本:ダニエル・サンチェス 撮影:サンドロ・マンコーリ 音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ 出演: ピエール・クレマンティ (ポール) カティア・バーガー (エヴァ) × × × よくあるロリータものなのだけど、けっこう格調高く描いているほうかもしれない。面白いとはいえないけど、映画作りの方向性としては決して悪くないし、きちんとドラマのツボもついている。 この映画の主人公は、第一次世界大戦での恐怖の中で、瀕死の重傷をおったがなんとか生きて生還した。しかし、男性機能が損傷を受け不能になっていたという設定。この男は、小説家でマッチョなタイプではない。戦争があろうとなかろうと、力というものに対しては常に劣等感を感じて生きてたであろう人物。そしてさらに、戦争で負傷し、びっこをひいて歩くようになり、性的な不能者になってしまった。なんとか生きて戻ってきたが、いつも自殺を考えているような男。 ポイントは「弱き男の劣等感」。 このテーマは男なら誰でも持っている潜在的な劣等感であり、男にとってはかなり自虐的なテーマなので気持ちよくかたられるべきカテゴリーではないのだけど、正面きって描いているところがなかなか良いのです。 男性の競争社会のなかで、アタリを見渡すとどうしても自分が勝ち残っていけるとは思えないようなシチュエーション。それでもなんとかもがいていかないといけないのが男の人生なのだけど、それ以上に自分の無能ぶりしか認識できず日々劣等感の中で生きている。切実です。 ただ、そんな劣等感地獄で今にも溺れそうな男が、夢見るネタを見つけたぞ・・という話。男というのは夢さえ見られれば生きていけるものです。 しかし、物語が幸せに終わりそうにないのは当然のこと。最初のうちは自分だけは彼女との接点をもっていた男だったのだけど、だんだんと他の男の存在があらわれ、そうするうちに自分の劣等感が膨張していく。さりげなくさそってはいるのだけど、“H”をしてくれない男を傷付けるように、他の男と“H”をしてしまう女の子、それを目撃してしまい、自殺・・・・。 『シベールの日曜日』とダブるようなシチュエーションですが、こっちのほうがエッチな妄想をしつつも出来ないふがいなさという健康な苦悶にみちてます。『シベールの・・・』の場合は、健全なプラトニックラブ的なものなのだけど、他の大人たちはそう見ないことからの不幸な流れですが、私個人はああいうのはあんまり健全だとは思わないので、それにくらべると、こちらの主人公のほうがはるかに健全に思えるかな。 <あらすじ> 第一次世界大戦前、作家として活躍していたポール(ピエール・クレマンティ)は皆の羨望の的であった。戦争から帰ったポールは、足の付け根を負傷し、びっこを引いて歩くにようになっていた。さらに男性機能も失ってしまっていた。 ウィーンの田舎の自宅に戻ったポールは、自分の部屋に閉じこもり自殺を考えている。そんな彼を見つめる視線に気づく。それは執事フランツ(ホセ・ルイス)の姪エヴァ(カティア・バーガー)だった。彼女も戦争で親を失い、フランツが引き取って面倒をみていたのだ。 エヴァは、ポールの「想像する人」になった。そしてポールはそのことに生きていることを見出すようになれた。 エヴァは無口で無邪気ではないが、自分に興味をもっているらしいポールに警戒心はいだかない。というよりも女性としてみてもらうことを望んでいるようでもあった。 ポールは、彼女との交遊を題材に一篇の小説を書きあげようとする。ポールにとってエヴァは生へのモチベーションなのだが、その状況になっても“H”を行動できないでいた。ある日ウィーンの出版社のパーティから戻ってきたポールは、エヴァがジプシーの少年と愛を交わしている姿を目撃し、銃で自分の頭を撃ち抜くのだった。
by ssm2438
| 2012-05-27 22:23
|
アバウト
主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
ファン
検索
以前の記事
2016年 05月 2013年 12月 2013年 10月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 タグ
☆☆☆(365)
☆☆☆☆(199) 一見の価値あり!(84) ☆☆☆☆☆(84) 貴重なヌードあり!(82) シナリオ勝負映画(82) 撮影的に高品質な映画(81) この女優必見!(80) 楽しいぞ!この映画(80) ダメだこりゃ映画(79) 女優が色っぽい映画(78) 女優が愛らしい映画(76) 自然描写が美しい映画(53) 一見の価値もなし!(53) ダイナミック望遠映画(37) ディープメンタル映画(22) 言葉が素敵な映画(22) リアリズムの映画(20) ぼろ泣き映画(16) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(13) カテゴリ
ジョン・フォード(1894) フランク・キャプラ(1897) A・ヒッチコック(1899) V・デ・シーカ(1901) ウィリアム・ワイラー(1902) ビリー・ワイルダー(1906) フレッド・ジンネマン(1907) 松本清張(1909) 黒澤 明(1910) M・アントニオーニ(1912) ルネ・クレマン(1913) I ・ベルイマン(1918) F・フェリーニ(1920) G・チュフライ(1921) W・A・フレイカー(1923) シドニー・ルメット(1924) 増村保造(1924) H・ウェクスラー(1926) S・キューブリック(1928) J・フランケンハイマー(1930) N・アルメンドロス(1930) ロベール・アンリコ(1931) ゴードン・ウィリス(1931) マイク・ニコルズ(1931) F・トリュフォー(1932) A・タルコフスキー(1932) D・マカヴェイエフ(1932) テオ・アンゲロプロス(1935) ウディ・アレン(1935) R・レッドフォード(1936) リドリー・スコット(1937) 木村大作(1939) ジョン・バダム(1939) W・フリードキン(1939) J・L・ブルックス(1940) エイドリアン・ライン(1941) ノーラ・エフロン(1941) K・キェシロフスキー(1941) ペニー・マーシャル(1943) ピーター・ウィアー(1944) C・デシャネル(1944) ラッセ・ハルストレム(1946) S・スタローン(1946) アイバン・ライトマン(1946) S・スピルバーグ(1946) パトリス・ルコント(1947) E・ズウィック(1952) ゴジラ(1954) G・トルナトーレ(1956) ブラッド・バード(1957) 男はつらいよ(1969) ライフログ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||