西澤 晋 の 映画日記

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2012年 06月 17日

ザ・バンク 堕ちた巨像(2009) ☆☆☆☆

f0009381_17575980.jpg原題:THE INTERNATIONAL

監督:トム・ティクヴァ
脚本:エリック・ウォーレン・シンガー
撮影:フランク・グリーベ
音楽:トム・ティクヴァ
    ジョニー・クリメック
    ラインホルト・ハイル

出演:
クライヴ・オーウェン (ルイ・サリンジャー)
ナオミ・ワッツ (エレノア・ホイットマン)

     ×   ×   ×

おお、アラン・J・パクラのような見せ方!

いやあああああ、なかなか愉しませてもらいました。
お話は、よくありそうな話のなのですが、見せないで魅せる技のテイストがパクラっぽいのです。パクラファン(といってもそんなにいるとは思えないが)必見の映画です。
監督は『ラン・ローラ・ラン 』トム・ティクヴァ。いやああ、お恥ずかしい話ですが、この監督さん食わず嫌いでした。『ラン・ローラ・ラン 』が話題になってたころ、ちらっと映画の解説だけは読んだのですが、主人公の女の子のファッションが嫌いで、それにドイツ人映画監督でマトモなの見てない気がして、長い間さけていたのです。
だいたいドイツ映画って戦争に負けてからというもの、どこか自虐的というか、自己否定が多い映画ばかりで、物語作りの精神が健全でないなという気がしてたのです。それはドイツに限らず、日本もイタリア、ポーランドなども同様の傾向がみられるような気がします。戦ったら負ける。負けるから戦っちゃダメ。でも、自分を主張する時には戦わなければならないときもある。そんなジレンマの中で、自分がやってしまいたいことを、自分で否定しているような精神状態なのでしょう。
そんな印象が強かったドイツ映画ですが、この映画、アメリカ資本の映画なので、映画商売のポリシーはアメリカの思想、映画の技術的な部分は監督さんの才能ということなのかもしれません。

とにかく、アラン・J・パクラのように社会的圧力の描き方が素晴らしい。そして物語がもっている無機質なストイックさ。それを見せるのではなく感じさせるところがいい。今時の映画はただ情報提示だけで派手な画面でも興味を失う映画が多いなかで、こういう大人の見せ方をされると、うむむむむむ、心地良いいいいいい。カッコイイ。『パララックス・ビュー』『ペリカン文書』の頃の心地よさを感じさせてくれます。
渋いサスペンスの見せ方も素晴らしいのだけど、某美術館での銃撃戦は近年まれに見る渋さ。この美術館に限らず、舞台設定がやたらとおしゃれなのである。
撮影監督はフランク・グリーベ。このひとはずっとこの監督さんと一緒に仕事をしているひとらしい。渋い色使いは実にクール。

この映画のネタになっているのがBCCI(Bank of Credit and Commerce International)=国際商業信用銀行である。詳しい悪行はウィキペディア参照
実際にあった事件の背景を想像しながら見ると面白さも倍増!

ヒロインは『マルホランド・ドライブ』ナオミ・ワッツ。この人どんどんきれいになっていきますね。以前はきれいだけで消耗品的な役割が多かったのに、最近はきちんと存在して愛される役者さんになってきてる感じがします。なんだか好きな女優さんの一人になりかけてます。
クライヴ・オーウェンは、この人いい感じの役者さんになってますよね。ハードボイルドの主人公をやらせるにはうってつけのような役者さん。『ザ・プラクティス』ディラン・マクダーモット『ユージュアル・サスペクト』ガブリエル・バーンを足して2で割ったような雰囲気。実に良いです。

<あらすじ>
ルクセンブルクに本拠地をかまえる巨大銀行IBBC。長年その不正取引を追っていたインターポール捜査官のルイ・サリンジャー(クライヴ・オーウェン)は、ニューヨーク検事局のエレノア・ホイットマン(ナオミ・ワッツ)と共にベルリンを訪れる。その不正取引を内部告発をしようとした銀行幹部との接触のためだった。しかし彼は事故死に見せかけて殺されてしまう。証言を得るためミラノを訪れたサリンジャーとエレノアは、軍事メーカーの社長から銀行が武器取引に関与していることを聞きだす。彼等は途上国のあらゆる紛争に積極的に介入していき、アメリカCIAやイスラム原理主義者などにも手を廻し、必要なところにお金を貸して、その後の利権を勝ち取るという仕組みで成長をつづけていた。
サリンジャーとエレノアはイタリアの政治家と接触を試みるが、選挙演説のさなかに狙撃されてしまう。
既にイタリアの警察内部にも彼らに飼われているものがいて、捜査の妨害がなされているようだ。しかし2人は義足のスナイパーの存在を見出す。使い勝手の良い有能なスナイパーだったが、組織は彼すらも消そうとする。そのまえにそのスナイパーを捕獲しなければ・・!
グッゲンハイム美術館で組織の幹部と接触したところを取り押さえようとしたサリンジャーだが、既にそこには組織の別の殺し屋たちが入館者に混じって入り込んでおり、らせん状の美術館のなかで激しい銃撃戦が行われる・・・。


最後の空しさがまたいいんだ。
IトルコでBBCの頭取とどっかのあやしげなやからが怪しげな取引をしている会話を盗聴しようと試みるが、地下に入られ録音不可能。表にでてみると、協力者も殺されている。かくなる上は自分で天誅を下すしかないと判断、頭取を追いつめて銃を突きつけるのだが、

「オレを殺しても何も変わらない。次の誰かが私の替りをするだけだ。お前の自己満足が得られるだけだ」

と語られ撃てなくなってしまう主人公。
自己満足でいいじゃんと思うのだが、不思議なものでああ言われると、それだけだと満足できなくなってしまうというか、その価値の低さを知ることになる・・というか、
結局、自己満足だけじゃ幸せにはなれない。シェアが必要なのです。

誰もいなグランドで100メートルの世界記録を出しても、それが公式に認められたとしても、オリンピックの会場で、それが世界新記録じゃなくても、勝って完成を浴びないと人間の心は満足できないように出来ているのです・・・・。

ところが、とんびに油揚げをかっさらわれるように、どこかの取引先のヒットマンがあっさりその頭取を殺してそのまま帰っていってしまう。

・・・・・おれは一体何なんだ・・・、はあ・・・・???

みたいな終わりでした。。。

by ssm2438 | 2012-06-17 17:58


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