西澤 晋 の 映画日記

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2012年 07月 05日

氷点 (1966) ☆☆☆☆

f0009381_223806.jpg監督:山本薩夫
脚本:水木洋子
原作:三浦綾子
撮影:中川芳久
音楽:池野成

出演:
若尾文子 (辻口夏枝)
船越英二 (辻口啓造)
安田道代 (辻口陽子)
山本圭 (辻口徹)
津川雅彦 (北原)
森光子 (辰子)
鈴木瑞穂 (高木雄二郎)
成田三樹夫 (村井)

     ×   ×   ×

イエス・キリストは、人類全ての人の罪を背負って十字架に架けられました・・。

渋谷の町を歩いていると、宣伝カーのスピーカーからこのような言葉を耳にすることがある。しかし、正直なところ、キリスト教に疎い私はこの言葉の意味すら知らなかった。それを今日、教えていただいた(苦笑)。こういうことだったのですね・・・・。勉強にまりました。
きっとキリスト教信者の方ならすっごく酔えると思います。私はどっかに宗教に関して反感がある人間なので手放しには共感できない部分があるのですが、それをさておいても、物語はすっごいです。強烈です。こんな重厚な話が書けるっていうのはすごいですね・・・。そしてそれを大映パワーが見事に短時間の映画にまとめきってる。恐れ入りました。

<物語の発端>
北海道は旭川の病院長である辻口啓造(船越英二)の愛娘・るり子が暴漢に襲われ幼い命を落とす。川原で発見された自分の娘の遺体をみてショックで気をうしなう夏枝(若尾文子)。その倒れた夏枝をうけとめたのが眼科の医師・村井(成田三樹夫)。その姿をみて、自分の娘の死すら充分に悲しめない啓造。
じつは村井医師と夏枝は不倫関係にあり、辻口啓造はそのことを知っているのだが、憎しみを打ちに秘めていた。そして、自分を裏切った妻に対して恐ろしい復讐を思いつく。
それは、自分の娘を殺した男の子を引き取り、夏江に育てさせるというものだった。陽子は、自分の出生に秘密をしらないまま、辻口家の養女となった。

この設定もスゴイなあ。
どろどろですよ。

しかし陽子の素性をしらない夏枝は我が子のように陽子を溺愛した。それがあるとき一変する。夫の日記をみた夏枝は、陽子が、自分の娘・るり子を殺した男の子供だということを知ってしまう。その時から夏枝の憎しみは急に溢れ出し、止められなくなる。このあとの若尾文子のいじめっぷりが理性が効いてていいんだ。表面的なんじゃなくって、どこか理性の聞いた中でのつめたい仕打ち。周りの人はそのことを知らないので、陽子にやさしくする。特に兄の徹(山本圭)は誰よりも陽子を愛しているのが判る。周りの人に陽子が優しくされればされるほど憎らしくなってしまう夏枝。このあたりの描写がとっても素敵。

この夏枝という今回の敵役の母親は、もとは普通に愛をもった女性だったのです。それが、なんの因果かこんな憎まれる母になってしまった。「自分が普通である」と思っていた人でもこうなるのだよ・・という実例とされてるのでしょう。

やがて、陽子(安田道代)は恐ろしいほど健全に育ち、叔母さんにあたる辰子(森光子)は、自分のもとに引き取って大学にやりたいという。兄の徹は、健全な恋人候補としてひとつ年上の北原(津川雅彦)を紹介する。しかし、それも夏枝が反対、邪魔をする・・・。北原からの手紙を、陽子には渡さずに北原に返してしまったり、それだけでなく北原を誘惑したり・・・となかなかの悪女ぶり。

そんなこんなで引き離されてしまった陽子と北原。そしてそんな陽子を愛していけるのは自分しかいないと、自らの愛を告白する兄の徹。おおおおおおおおおおおおお、メロドラマの王道です。しかしそこは陽子の健気さで健全な兄妹という設定にもどるのだが、偶然旭川の雪祭りであった陽子と北原は誤解をといて幸せな気分になってしまう。

しかーし、陽子の幸せを絶対許せない夏枝は、ついに陽子の出生の秘密を暴露してしまう・・・・。

自分は健全に生きていこうと思ってきたが、自分の健全ささえも母・夏枝にとっては不愉快以外のなにものでもなかったのだろう。自分は殺人者の娘であり、母が私を憎むのは仕方のないことだ。辻口家の不幸は私のなかにある殺人者の血のせいだ・・って、陽子は、るり子が殺された川原で、睡眠薬を飲んで自殺を図る。

正直なところ・・・だからといってなんでそこで自殺になるの???という、ある種のいかがわしさが鼻につくも、やっぱり物語のどろどろ感が素敵なので、とりあえずそのテンションで見ていけてしまう。
妻の不倫から発生した恐るべき不幸のなすりあい。本来、憎むべきではないと判っていても幸せになってほしくないと願い続けた夏枝の心。しかし、さらにお約束のどんでん返しがもう一発用意されている。
陽子は、るり子を殺した殺人者の娘ではなかった。さすがに殺人者の娘を、夏枝に育てさせるのは不憫のおもった孤児院の高木医師(鈴木瑞穂)は、大学時代の同級生が不倫した結果生まれてしまった子を素性を隠して辻口家に養子として送ったのだった。

本来なんの関係もない女の子をただ、憎んで自殺にまで追いやってしまったことに、嘔吐する夏枝。それは夏枝だけではなく、父の啓造とて同じこと。これらはすべて普通の人がもつ普通の憎しみである。それを全部ひきうけて、死を選ぶ陽子。
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おおおおおおおおおおおおお、キリスト教ってそういうことだったのか・・・ってやっと判った。

もう恐ろしいほどドラマとしては素晴らしい出来栄えです。
見事!というしかありません。

ただ・・・・、それでもなおかつ、やっぱり気持ち悪いのが、「なんで陽子は自殺しなきゃいけなかったの?」ってこと。「ほらごらんなさい、我々の邪悪な心が、なんの罪もない子を自殺においやってしまったのよ」という罪悪感を植えつけるためにそうしてるようで、なんか・・・・、すっごく押し付けがましいものを感じる。
自分で罪悪感を感じている時は健全だと思うのだけど、それを他人から指摘されて、押し付けられると、おっきなお世話だ!!って思っちゃうじゃないですか。それが本当でも、そんなこと知るかああ、いや、知らないふうに意地張りつくしてやるううううううううって。

その、押し付けがましい部分が気にならない人にはいいんですけど、そこが気持ち悪いので☆一つ減らした。

by ssm2438 | 2012-07-05 22:29


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