2016年 05月 06日
監督:池広一夫 原作:横溝正史 脚本:廣澤榮 出演: 古谷一行 (金田一耕助) 荻島真一 (寺田辰弥) 鰐淵晴子 (森美也子) 中村敦夫 (多治見要蔵 / 久弥) 松尾嘉代 (春代) 毛利菊枝 (小竹) 新海なつ (小梅) 永井智雄 (久野医師) 草薙幸二郎 (里村慎太郎) 神崎愛 (井川鶴子) 長門勇 (日和警部) × × × 長尺だから、てっきり原作をフォローしてると思いきや・・・ たまたまつけた夜中のケーブルテレビで、このシリーズやってたので、ついつい朝までかけてみてしまいました(笑)。で、ついにで原作もこのさい読んでしまえ!とばかりにKindleFireで購入、読み終えました。 本来この原作はあまりに長尺で、登場人物も、殺される人数も多いのでまとめるのが大変。なので二時間ドラマや映画の尺に納めるにはかなりあっちこっち省いて、のこりのパートでなんとか組み上げるしかないしろものです。その結果、過去にいろんな八つ墓村が出来てますが今ひとつどれもしっくり来ない。なぜでしょう??ってのが長年の謎でしたが、原作全部読んでなんとなく分かりました。 この話は「たたりじゃあああああ、八つ墓明神のたたりやじゃああああああああああ」の最初の八つ墓村のキャッチコピーがみなさんのイメージの中に深く浸透しすぎてて、世間が『八つ墓村』=怨念系ドロドロ話だとすでに認識してしまい、それでなくては許さなくなってしまった。しかし、原作はそれほど怨念どろどろのはなしではなく、殺人事件のモチベーションも女の恋愛事情であしかない。 なので、原作においては殺す手段はほとんど毒殺とクビをロープで絞めるパターンのみ。 さらに殺しにいたるトリック・謎解きもかなり軽いものなのです。原作においてはですが(この部分はほとんどの映像化された『八つ墓村』では採用されていない)、殺しの計画書が存在します。この殺人計画書は久野医師によって書かれたものですが、この計画書自体ただの妄想的でそれをちゃらちゃらとメモに書いてたら、そのメモが濃茶の尼に盗まれ、最終的に犯人の手に渡ってしまい、それを実行にうつされていく・・・というもの。 これもモチベーションがきわめて幼稚なところにあるのです。 久野医師は八つ墓村に昔から居る内科医。そこに都会から疎開してき別の医者が登場。この疎開医師が人気者になってしまい、久野医師はこれをやっかみ、妄想のなかで殺人計画を描いて自分の憤懣をおさめていた。その計画とは、二人の医師のうちひとりが殺される、二人の尼さんのうち一人が殺される、多治見家の双子のばあさんのうち一人が殺される。二人の出戻り女のうち一人が殺される・・・というふうに対になっているもののうち一人が殺されていくといういうシナリオを思い描いたのである。これは、多治見家の上にあるやつ墓明神の二本ある大杉のうち一本が雷をうけて倒されたことにかこつけて、八つ墓明神は同様の生贄をもとめている・・・という社会的意識誘導を生み出し、本人にその疑いがかからないように・・・と考えたもの。しかしこれは所詮妄想であって、本気でそんなことしようとは久野医師も思っていなかった。 しかし、その殺人妄想メモを記した手帳が盗まれ、その通りに殺人が起きていく・・・、久野さんびっくり!って話です。 なので、殺人連鎖の法則というのもきわめて軽いものなのです。 この軽さが、世間の人が観たいと思っている『八つ墓村』ではないのです。なので製作者一同はいろいろ悩んで、世間様の欲求にこたえるにはどうしたらいいかって迷いつついろいろ試みた結果がそれぞれの作品になってるわけです。 さらに犯人の殺人の動機は、男と女の恋愛感情のもつれから発生してます。これも、これも死せる尼子の落ち武者たちの怨念とはまったく関係ないものです。 渥美清/野村芳太郎の『八つ墓村』ではその辺りが完全に省かれてしまってます。なのでむりやりそれを怨念とリンクさせようとして、美也子の出生を尼子の武士達がいた出雲の国あたりに設定して悪あがきをしてたりしてます(苦笑)。 トヨエツ/市川昆の『八つ墓村』では殺人の基点である恋愛事情は汲んであります。・・が、どこか幼稚なもの、可愛らしげなものになってしまってるのでちょっと、さらに軽さがましてる感があります。 原作における犯人視点の<あらすじ> 八つ墓村の資産の7割は「東屋」とよばれる多治見家が有しているが、第二の資産家といえば「西屋」といわれる野村家である。その野村家に嫁いだのが美也子。美也子は結婚した当時は東京にいた。 時を同じくして、海軍の軍人として東京にいたのが里村慎太郎。彼は、多治見要蔵の弟の息子である。ゆえに多治見家の財産がその家のもので想像されない場合、彼のところに相続権がうつることになる人物でもある。 慎太郎は、美也子の夫が病気で亡くなった後も彼女と彼女の事業を支え、資産管理などのアドバイスをしていた。その結果戦争という状況下でも資産を失うことなく生き延びた。 一方慎太郎は戦争で地位も名誉も財産も総てを失い、八つ墓村に帰えり、小さな家を与えられそこで妹と一緒に野良仕事をしていた。 そんな時多治見家で遺産相続の問題がおきあがる。 要蔵の息子で長男の久弥は肺病で長くない。長女の春代も腎臓を病んでおり、その結果心臓に負担をおっていきている。多治見家の実権をにぎっている双子のバーちゃん小梅・小竹は要蔵が妾に産ませた息子・寺田辰弥を呼び寄せ、多治見家を告がせようとしていた。 多治見家のものは不遇者ばかりなのだ。ふたりのバーちゃんは猿のように小さく、白く、不気味な容姿である。要蔵は傲慢にして気が触れ村人32人を殺した狂人。その子供二人は二人とも身体にどこか不具合をもている。しかし里村家に養子にでた要蔵の弟、そしてその息子の慎太郎はリンとして養子も人格もしっかりしていた。慎太郎だけには財産をつがせたくない。それは多治見家の不遇者のふかいねたみから発生していた。 慎太郎は美也子を愛していた。しかし、総てを失った今、美也子に求婚はできない。なので、今かに帰って野良仕事をしながら、夜になると尼子の落ち武者が隠したといわれる埋蔵金をさがしていた。 美也子も慎太郎を愛していた。美也子は慎太郎に嘗ての凛々しさを取り戻して欲しかった。そうすれば自分に求婚してくれる。そうして美也子は多治見家の遺産相続の権利者を久野医師の殺人妄想計画書に基づいてころしていった。 実は美也子の夫が病死したのも美也子が毒をもったからであった。息子の死に不信感をもった美也子の義父が、その調査を金田一耕助に依頼した・・・というのが、じつは原作における金田一耕助の本作への絡みの出発点である。 原作では、この慎太郎の妹・典子が、本来のヒロインとなり主人公・寺田辰弥がピンチになればこれをサポートし恋におち、“H”までしてしまう。・・・が、渥美・野村芳太郎バージョンといい、この古谷一行テレビシリーズといい里村典子というキャラが削除され、かわりに美也子がその役目をになってしまっている。とすると当然慎太郎の存在はひつようなくなり削除されてしまう。いちどコアな部分を製作者の都合で変更するとあとはもうぐちゃぐちゃになり、最後はどういうわけか辰弥を殺そうとまでする。しかし、その動機づけがかなり強引でどれも理不尽なものになってしまっているが現状だ。そこを「じつは美也子の出身は出雲、出雲といえば尼子の落ち武者のいた・・・」みたいに強引に怨念ネタでしめくくるという暴挙にでてる。 この古谷一行テレビシリーズ『八つ墓村』では、「あなたを殺そうとおもったけど、あなたを愛してしまったの、だから一緒に死んで」てな展開で辰弥を追まわし、最後は辰弥危機一髪ってところで、実は仮面をかぶって村に潜伏していた辰弥の父亀井洋一が辰弥を救う!という展開に。えええええええええええ!! そこでほんものの父ちゃん登場!? 実は原作でも辰弥の父は生きているのだけど、そこまでアクティブには行動しない。ま、これはエンタメのための改稿箇所でもある。 というわけで、原作を知ればしるほど、どの作品も「派ああああああ~~~~~~~~」ってため息がでる。 もうちょっとなんとか出来なかったものか? なので、自分でもどうすればいいのか、考えてみた。 映像化されたどの『八つ墓村』も最後、洞窟のなかでうだうだするからなんかつまらないのである。 原作では最後、狂信的な村人(さきの32人殺し事件の時に親族をころされている)が辰弥を鍾乳洞なかで辰弥を追い回す。そこを映像化された作品では美也子におきかえたりしてるのでなんか訳が分からない事に成っているのだと思う。 で、私は考えた。 やっぱり殺人の動機は、森美也子の恋愛話で行くべきだ。 で、それによって扇動された村人達は嘗ての復讐心を爆発させた。 達也を釜やクワをもって追い回す。 「おまえがきたからじゃ、お前を殺さにゃあ八墓明神のお怒りはおさまらんんんん」 結局鍾乳洞から辰弥と典子をあぶりだす村人たち。それを守ろうとするモノ、それが春代だったり、典子だったり、警官の数人、多治見家の使用人、郵便局のおじちゃんとおばちゃん、そのへんをばったばったと切り裂き殺して収集がつかなくなる。 「ぎゃあああああ」 「うわあああああ」 「助けてくれえええええ。どおおおおおお」 ブシュウ! バッシュ! グシャ!! 君は・・・、君はなんてことをしたんだ」と慎太郎。 呆然の美也子。 「私は・・・私は・・・、アナタに愛されたかっただけなの・・・。アナタに愛されたかったの・・・・」 村人達に追い詰められる辰弥、われを忘れた村人達のまえに飛び出して達也をかばう慎太郎だがぶすぶすぶすと竹やりで刺される。最後はカマでクビを跳ねられ、宙をまった慎太郎の首が美也子の足元にころがる。 理性をうしなった村人たちは辰弥と美也子を取り迫ってくる。 「よそ者はこの村にはいらん。災いのもとじゃ、お前も・・・、お前も・・・。よそ者はみんな死ねばええんじゃ」 とそのとき、落雷とどろき、もう一本の大杉におちる。さらに大地震。 以下、特撮よろしく。陥没する村の田畑。多治見家の家屋も崩壊していく。辰弥の母が監禁されていた部屋がくずれる。壁のお面がおちる。屏風がおしつぶされる。隣の納屋の天井がくずれる。鍾乳洞への階段もくずれる。地下のよろいミイラの上にも岩盤がおちてくる。崩壊していく鍾乳洞。 地上では田畑に地割れがおきいたるところで陥没がおきる。八墓明神の墓石もくずれる。崩壊しているくカルスト台地。 天災がおさまったあと、八墓明神の墓石のあたりに虫にたかられたしゃれこうべが笑ったように地上に顔をだしている。 ・・・・以下、新聞報道か何かで適当におわらせてください。 もちろんこの事件、災害の死者は64人でしょう。 ・・・ってのはどうでしょう? 次回の『八つ墓村』はこれでよろしく。
by ssm2438
| 2016-05-06 21:44
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主観重視で映画の感想を書いてます。ネタバレまったく考慮してません。☆の数はあくまで私個人の好みでかなり偏ってます。エンタメ系はポイント低いです。☆☆=普通の出来だと思ってください。 by ssm2438 リンク
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