西澤 晋 の 映画日記

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2009年 01月 23日

ハドソン河のモスコー(1984) ☆☆☆☆

f0009381_1273543.jpg監督:ポール・マザースキー
脚本:ポール・マザースキー
    レオン・カペタノス
撮影:ドナルド・マカルパイン
音楽:デヴィッド・マクヒュー

出演:ロビン・ウィリアムズ
    マリア・コンチータ・アロンゾ
    クリーヴァント・デリックス
    アレハンドロ・レイ

     ×     ×     ×

主演のロビン・ウィリアムスは、スタンダップ・コメディアンとしてはホントに天才的だとおもうですが、 映画でそれやられちゃうとちょっとサービス過剰ぎみで、あの親近感があまり好きになれない人もいるんじゃないかとおもうんですけど、このころはけっこう自然にみられます。たぶん、ロビン・ウィリアムスのなかではこの作品が一番いいんじゃないかなあ。

物語は、ロビン・ウィリアムス扮するソ連のサーカス団に所属するトランペット吹きのウラジミールが、 アメリカ講演中に亡命、そのごアメリカ社会にとまどいながらも順応していく話なんですが、とってもハートフルでいいんだ。 でも実は彼自身は亡命したいわけではなくって、彼の友達が以前から亡命をほのめかしており、随行する共産党員がそいつのお目付役にウラジミールをつけて感じ。
講演がおわって最後のお土産を買うデパートのなか、彼の友達は全てを捨て切れないで亡命を断念、無念の表情でバスにむかうのをみて、衝動的にウラジミールが亡命をくちばしってしまうわけです。 そこから随行していた共産党員とデパートの中をおいかけって、化粧品売り場のブースに逃げ込むと、そこはイタリア人移民のルチア(マリア・コンチータ・アロンゾ)のスカートのなかだったり、「そこの移民にこれを渡してくれ」とキューバ人弁護士オルランドにビジネスカードをわたされたり、結局そのフロアの黒人警備員のライオネル(クレバント・デリックス)に保護され、追って来た共産党員ともみあいに。「かれは薬をうたれたんだ。彼の不等な拘束をソ連は講議する」と共産党員。「あそこのフロアからそこのフロアまでは私の担当だ。ここでのトラブルや許さない。警察がくるまで待て!」と毅然として対応するライオネル。「私の事も考えてくれ、国かえれば子供も家族もあるんだぞ。君だってもう家族とあえなくなる、それでもいいのかウラジミール。私のためにも考え直してくれ‥‥」と懇願する共産党員にたいして冷たく「私は亡命する」と言うと、まわりの取り巻きから「おお~~~~~~~」と歓声が沸き上がる。
FBIの人もきてさしあたっての亡命の手続き、「アメリカに誰か知り合いはいるのか?」との質問に、 「化粧品売り場の女の子と、彼(黒人警備員)だけだ」というとさすがに困った顔のFBI、 「家に来い」っていってやるそのライオネル(黒人警備員)。おれもアラバマを飛び出した亡命者だ。気持ちはわかる」 彼の家にいてみると狭いなかに失業中の父と、もう年老いた祖父、母と妹。 お世辞にも余裕があるとは言えない。 それでも、寝る為のソファをあたえられる。そこがアメリカにきて始めてのおちつける場所だった。。。

もし、自分より弱い人間がいたら、それだけで自分の居場所はできたりするものなのだけど、 アメリカでの彼の立場はそれを許さないんですね。その中で自分を確保していくにはどうしたらいいのか‥‥。そして誰も自分を必要としない社会のなかで、自分を確立していくために「必要とされる人間」になっていくんです。 はじめはその家のお使い。でもデパートにいってコーヒーを買おうとすると‥‥ん?? で、店員さんに聞く「あの‥‥、コーヒーの列はどこですか?」(笑)。「そんなものはないよ、あの棚のむこうだよ」って教えられていってみると「コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー、コーヒー‥‥!!!!」、みたこともないコーヒーの種類があまたと並べられてて、興奮して過呼吸になり病院に運ばれるしまつ。いってみるとそこはベトナム人らしき医師と看護婦さん。アメリカってのはみんなが移民なんですね。 移民局でその後の移民の手続きをしてると、待ちきれない人が「いつまで待たせるんだ」どなりこんでくる。「待たされてるのはあなただけじゃ無い!」とカウンセリングの黒人おねーちゃん。 「じゃあ、ボスを呼べ!」と怒鳴ると「私のボスはロナルド・レーガンよ!! もう少し待ちなさい」と毅然として怒鳴り返す彼女。 ‥‥「私のボスは小泉純一郎よ」とプライドをもって言い切れる日本人が何人いるだろうってふと思ってしまう。
自分達が自分達の指導者を選び、それに従っていくメカニズム。そこに発生する責任感というもの。 それが実に輝かしいんだ。そしてレストランの皿洗い、マクドナルドの店員、路上でのフランクフルトの屋台、ハイヤーの運転手…etcそんな仕事をこなしつつ、すこしづつ個人としての力をつけていくウラジミール。 ルチアともなかよくなりアメリカの歴史の権利の盛典とかのお勉強なんかもしてたりする。
そして、ルチアがアメリカ市民になる日。 しかしこのころになると心のすれ違いができてきて別 れる事に‥‥。お金に余裕がでてきてサックスを買って店のステージで演奏する機会ができたが、いざあってみるとアメリカのジャズ演奏者とは力の差があり愕然、アパートで練習してると、上の階からは「うるさい!」と怒鳴られるしまつ。心のよりどころだったラオイネルは昇級が見送られたことを不服として仕事をやめてアラバマに帰ることを決意。自分の仕事で使ってるハイヤーで彼を空港までおくってやる。「キミはここでの一番の友達だった」っていうと「アメリカ市民として当然のことをしたまでだ」ってクールに言うんだ。 “I'm just a citizen....” かっこいい!!
まわりに誰もいなくなっていき、孤独をひたひたと感じてると、さらに追い討ち、 ソ連の祖父が死んだとの頼りがとどく。ロシアコミュニティからの帰り、アパートの入口のドアをあけると中には子供の暴漢がいて、銃をつきつけ「金をだせ」財布をまさぐられていたが、悲しさと孤独さとどうにもならない怒りが込み上げて来て 「I'm a Russian ! I'm a Russiaaaaaaaaaaaaaaaan ! 」って反対につかみかかってしまう。 “ロシア人なのに‥‥、国を捨ててここに来たロシア人なのに、  それなのに、この仕打ちはなんだ!!! こんなんがアメリカか!!???” 暴漢たちも怖くなってもみあってるなか、ウラジミールを殴り倒して逃げて行く。
警察から出て来てくることには夜もふけ、弁護士のオルランドと一緒に夜間営業のレストランにはいりアメリカにたしてさんざん悪態をつくウラジミール。 カウンターの向こうでそんな二人をにらんでるでっかい色白の男、オルランドが制するのもきかず因縁つけるウラジミール。 相手のでっかい男はロシア語で「ロシア人のアホが」と罵られ、 オルランドが「何いってるんだ?」というと、その言葉を英語に訳すウラジミール。

「ロシアを知っているのか? あそこでは、みんながほんの僅かな自由を求めて戦っている。おまえらは自由にクソをかけてるだけだ」と ウラジミール。
オルランドに、「店内で喧嘩したらこまりますよ」とキューバ語(?)で話してる男性店員さん。 その男が何か言う。オルランドに通 訳するウラジミール。 「そんなにロシアが恋しけりゃ、国に帰ってパンの行列にならべと言っている」 男が付け足す。 「カビのはえたパンのだ!、と言っている」 自分でいってて悲しくなるウラジミール。 外でなにかのおと。
「なんだあれは?」とウラジミール。
「独立記念日の花火だ」とその男。 神妙になるふたり‥‥。
「悪かったと、ウラジミール・イワノフ」「セルゲイ・ゴードン」とお互いの名前をなのり仲直りするふたり‥‥、 やさしい音楽がながれてきて‥‥ オルランド「独立記念日か‥‥、暗唱できるか? 人類は、歴史上のこの時点において‥‥忘れた」
ウラジミール「‥‥以下のことは自明の理である」
オルランド「‥‥万人は平等であり、侵せぬ 権利を‥‥」 ウラジミール「神の手から与えられている‥‥」
キューバ人の男性店員「生命と‥‥」
イワノフ「自由と‥‥」
中国人の客「幸せを追求する権利‥‥」
イワノフ「イヤーー、ハピネス!!」 客数人「ハピネス!!」 女性店員「ハピネス‥‥」(といってコーヒーをさしだす) オルランド「ハピネス(キューバ語で)」と男性店員に呟くと、 かれも返す。 おくのほうでは中国人の客が中国語で「ハピネス‥‥」としずかにつぶやく‥‥。
外には盲目の老人が花火を手に歩いてる‥‥。 うむむむ~~~~~、もうこのくだりは沁みますね~~~。

私がこれを見たのは20代の終わりの頃で、英会話の勉強に燃えてた時。 そんな時期とかさなったこともあって、とってもインパクトのあった作品になってしまいました。 アメリカ社会にみる<責任>の概念。 実はその<責任>こそが<自由>への片道切符であること。 それを担う誇り‥‥。 我々が次の世代に与えたいとおもう<自由>というのは、 実は<責任>を全うできる力があってはじめて得られるもので、 その力を育ててやる事しか、<自由>は与えられないという事実。
もし、日本という国がなくなったら‥‥、日本という習慣がなくなったとき、 そのとき自分はきちんと生きていけるんだろうか‥‥? たとえそういう時が来たとしても、きちんと自分を生きていける人間でなければならない、 “<日本人>という保護のない環境でも、自分を生きられる自意識をもてるようになるんだぞ!!”って。 『日本沈没』とこの『ハドソン河のモスコ-』は、そのことを無理矢理考えさせられた映画ですね。

by ssm2438 | 2009-01-23 22:27


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